Presented by ルミネ

サステナブルバトン4

コムアイさん、アマゾンでの出産で生命力を体感。「サステナブルとは生き延びるための闘い」

音楽ユニット「水曜日のカンパネラ」の元ボーカルで、アーティストのコムアイさん。気候変動やSDGs(持続可能な開発目標)について発信しており、昨夏には南米ペルーのアマゾンで第一子を出産しました。熱帯雨林の村で先住民の生き方に直に触れ、また新しい命を迎え、変化した自身と未来へ向ける思いについて語っていただきました。
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自然の摂理に従って産みたい

――アマゾンで出産されたことが話題になりました。その過程をドキュメンタリーに収めています。なぜ思い立ったのでしょう?

コムアイさん(以下、コムアイ): 日本では、病院で出産できるシステムが成り立っていると思うんですが、以前から「なるべく自然に産める助産院、もしくは自宅で産みたいな」と考えていました。生き物であるヒトとしてもっと動物的に、自然の摂理に従い、ヒトに元から備わっている力を使って最低限の手助けだけで出産したいなと思ったのです。

アマゾンで産むことが絶対条件というより、パートナー(人類学者の太田光海さん)が以前、アマゾンの先住民と共に暮らしながら撮影したドキュメンタリー映画を制作しており、その縁に導かれたところもあります。もし、彼が現地の方と深いつながりを持っていなかったら、今回お世話になったワンピス族のコミュニティに受け入れてもらえなかったと思います。彼らはかつて首狩りをしていた民族で、パートナーも前回はスパイと疑われたことがありました。すんなり住まわせてもらうことは難しいのです。

――異国の小さな無医村での出産に、不安はありませんでしたか?

コムアイ: 事前にお話しして、パートナーの友人のワンピス族のリーダー格の人を信頼できたので、不思議と怖さは感じませんでした。ワンピス族は、一度コミュニティに受け入れてもらえれば安全でした、壁のない家に自分の荷物を置きっぱなしにできるくらい。これまで旅してきたどんな土地よりも、治安がいいとすら思いました。ワンピス族の皆さんが、自宅出産に慣れているのも安心材料でしたし、村には薬草の知識を豊富に持つ産婆さんもいると聞いていたので、何とかなりそうだなと。でも、水が合わなかったのか、私は滞在中お腹の調子がずっとよくなくて。最初は気温の変化や虫の音にも慣れなかったです。子どもの方が野外暮らしの環境にすんなり適応していたのを見て、自分の軟弱さや生まれたての命の逞しさを感じましたね。

実は、私にとっては明るい病室の分娩台の上で知らない人にいきなり囲まれて出産する方が、なんとなく怖かったんです。自然出産をした人から「5人とも四つん這いで産んだ」とか、「陣痛が来た時、部屋を猿みたいに歩き回ってた」「暗い場所のほうが安心して産めるし、産後そのまま休めるから自宅がよかったよ」と聞いていたせいかもしれません。

ただ、陣痛が来たときはどうしても用事があって町に出ていた時で、慌てて村に帰ろうとしたのですが、何しろ8時間もかかります。舟の上で痛みをこらえながら家にたどり着き、そこから産まれるまでに丸2日かかりました。村の女性たちから事前に「初産だから3日はかかるかもしれないよ」と聞いていなかったら心が折れていたかもしれません。

出産直前期の様子=本人提供

分け合って成り立つ暮らし

――現地でどんな生活をされていたのですか?

コムアイ: 出産の前後に1カ月ずつ、約2カ月滞在しました。1000人ほどが暮らす比較的大きな集落でしたが、街と陸路でつながっておらず、最寄りの病院まで舟で8時間もかかります。自給自足の生活が基本で、電気もガスも水道も通っていなくて、煮炊きは全部薪でした。女性たちが炊事用の丸太を軽々と抱えて川を渡っている姿はすごくかっこよかったです。

彼らの畑で育ったバナナをよくいただきました。イモのように蒸したり焼いたりスープにしたり、いろんな食べ方を教えてもらいました。さっきまで元気に走り回っていた野生の動物とか、川で泳ぐ魚とか、獲れると分けてくれるんです。ときには、妊婦に良いということで芋虫をいっぱいいただいたことも(笑)。森の中の貴重なたんぱく源らしく、リッチな味がしました。

食料のシェアは、やさしさと同時にとても合理的な考え方だと思いました。冷蔵庫がないので、たくさん食料があってもすぐに悪くなってしまうので、分け合ってみんなでおいしく食べたほうがよいと考えるのかもしれません。物々交換ではなく、ギフトし合って成り立っている感じでした。私たちはいただいてばかりでしたが、たまにピーナッツや豆を買えたら分けたりしていました。

アマゾンの村で=本人提供

――電気や水道がない生活は、不便ではなかったですか?

コムアイ: ソーラー発電のパネルと小さな蓄電バッテリーで、村の人たちは少しですが電気を発電して使っていました。私が持って行ったパネルを借りて、お隣さんが音楽を流すためのスピーカーを充電していたので、帰国時にさしあげました。村では、自前の電気を使ってワンピス族のローカルラジオ放送も行っていて、そこで「出産するために、わざわざ日本からやってきた人たちがいる」とみんなに知らせてくれました。歓迎されているんだなと感じて、嬉しかったですね。

私たちも逆に、借りたソーラーパネルで発電して夜の数時間だけ小さな電球を1つ点けて過ごしました。その電球の明かりや蝋燭の灯りを頼りに、ワンピス族の皆さんが教えてくださったことや、その日の出来事をできるだけ日記に書き留めていました。今、それを本にまとめるべく執筆中です。

水は数軒で一つ、共同の水道のようなものを遠くの川から引いていましたが、私は近くの小川の水を汲んで使うことが多かったです。そうそう、私たちの家は、屋根はあるものの三方の壁がなく、雨が降ると家の中まで湿ってしまうんです。ですから、晴れた日に洗濯して干せるだけですごく嬉しくて。何をするにも手間ですが、それが幸せというか。「今日のミッションは洗濯だ」とか「ああ、今日もサバイブできた」みたいに、すごく充実していましたね。

――現地の暮らしはコムアイさんと相性が良かったようですね。

コムアイ: ええ。これまでいろんな選択をしてきましたが、アマゾンでの出産は最高の選択だったなと。それくらい素晴らしい体験でした。火を起こして水を沸かすだけで感動があるんです。トイレも野にしていたので、都会に戻ってきた時に、「部屋の中にトイレがあるの、汚いな」という感覚になっていました。とはいえ、雨の日に外で用をたしていると全身が濡れてしまい……、あれはちょっと気が重くなりましたね(笑)。排泄物も含め、自然由来のものはすべて土に還りますが、石油由来のプラスチックは生分解しませんよね。全ての村民がサステナブルにと考えて生活しているわけではないと思いますが、ゴミ処理場に持っていくこともできないので、少量のプラスチックごみや紙も全て家の近くで燃やしていました。ビニール袋は紙より燃えやすいので焚き付けに使ったりしていました。ごみの処理も自分たちの責任においてするので、ごみが増えづらいのではないかと思います。

実は、近隣に暮らす他の民族のテリトリーでは金の違法採掘が進んでいるところもありました。今回の滞在で初めて知ったのですが、金の採掘には水銀が使われてしまうことが多く、周囲の川に広がって深刻な汚染問題になっていました。一方で、ワンピス族はテリトリー内から採掘者を追い出したり、森林破壊から守ったり、COP(国連気候変動枠組条約締約国会議)に代表を送り出すなど、新しい環境保護への動きにも積極的でした。

子どもを持って、未来が想像の範囲内に

――そもそも、コムアイさんが環境や気候変動などの社会問題に関心を持ったきっかけは何だったのですか?

コムアイ: 気候変動に関しては、4年ほど前に国際環境NGO 350 Japanの「気候変動基礎クラス」を受講したことがきっかけです。それまでも何となく気になっていましたが、受講したことでどれだけ後戻りできないか可視化できて、危機感を覚えるようになりました。

もともとは、今回この「サステナブルバトン」のバトンを繋いでくださったDEPTのeriさんが受講していて、興味を持ったんです。eriさんとはステージや撮影の際の衣装をお願いするなどして知り合って以来、親しくさせていただいています。先日は、パレスチナの人たちの解放を呼びかけるデモの会場でばったり会い、とても励まされました。

社会問題に対して、最初にアクションを起こしたのは中学3年のころだったと思います。地雷除去の募金活動に参加したり、反原発のデモに加わったりするようになりました。調べれば調べるほど合理性のない原発をなぜ止められないんだろうって、すごく理不尽さを感じていたんですよね。一見当たり前に見えることに対し、疑問や違和感を持つ私の性格が今回のアマゾンでの出産を決意させたのかもしれません。

――妊娠や出産を経験して、それ以前のご自身との違いや変化を感じますか?

コムアイ: 価値観が根底からひっくり返ったような感覚があります。自分の世界の中心は自分ですが、その自分の中で命が育ち産まれたことで、一番大事な自分が身体の外にもう1つあるような感覚というか。また、一人一人が「生命のつなぎ目なんだな」と実感できるようになりました。

――生命のつなぎ目とは、どういう意味ですか?

コムアイ: 自分が生まれた時のことって、きっと皆さんも覚えてないと思うんです。私も、3、4歳ころからの記憶しかありませんが、自分が子を産んで、そこから人生が始まることを目の当たりにしました。私もそうやって産まれ、過去から脈々と続いてきた命をつないでいるんだなって、すごく想像できるし、感じられるようになったんです。私の周りにいる人たちもみな同じように、それを繰り返してきて、ここにいるんですよね。

それに、生まれた子どもがおそらく2100年くらいまで生きると思うと、それまではまるで関係のなかった2100年が、自分にとってどうでもよい未来ではなくなります。さらに、自分の子が子どもを持ったら、もっと先の未来も自分の想像の範囲内になるんですよ。そうやって、未来と過去に対して、自分の意識がすごく伸びるような感覚が生まれました。

子どもがいるこの世界を少しでもサステナブルにしていけるよう、もっといろんなことを考えなきゃいけないし、考えなければ困るのは私自身なんだと強く思うようになりました。だからこそ、未来に向けて仲間を増やしたいという気持ちもあります。こうした自分の問題意識は子どもとも共有したいし、多分、私たちの行動を見ていたら自然と共有されていくのだろうとも思っています。

エコファーのコートをまとって

――女性にとって、妊娠・出産は大きな決断だと思います。

コムアイ: そうですよね。いま、世界を見渡すと人口爆発が起きていて、子どもを産むことが果たしていいことなのかどうか、私には正直分かりません。自分自身、少し前までは出産に対してあまり積極的な考えではなく、いずれ養子や里親制度を利用してもいいのかなと思っていました。でも、パートナーと出会い、考えががらりと変わり「今、産みたい」と直感したんです。

これまでも、戦争や虐殺など、生きることすらままならない状況であっても、子を産み育ててきた人たちは確かにいました。そうした人たちがいたから、私たちはここにいるのだと思うし、今がどんなにひどい状況であっても、「子を持ちたい」という気持ちはあるものなのではないかなと。同時に、親やパートナーなどから妊娠や出産を求められたとしても、自分の気持ちが固まってなければ産まない方がいいと思います。心から望まないと、もしうまくいかなくなったときにつらい思いをするのは自分だから。自分の直感や気持ちを、大事にして欲しいなと思います。

――今後、取り組んでみたいことを教えてください。

コムアイ: お世話になったワンピス族の皆さんのことをまずは本にして、日本の皆さんに自分の生活や地球の未来について考えてもらえるきっかけにしていただけたらいいなと思っています。あとは現地の森林と文化の保全に何ができるか、ですね。ワンピス族以外の部族のテリトリーでは、木の伐採や鉱物の採掘で環境を壊し、多くの収入を得ている人もいるため、ワンピス族の人々もとても揺れています。私たちは、外から出入りさせていただいたからこそ、ワンピス族の暮らしや環境がどれだけ大切かが分かります。アマゾンは、「地球の肺」と呼ばれるほど地球環境にとって重要でかけがえのない場所であることを、改めて彼らに伝えていくことは大事だなと思っています。

――最後に、コムアイさんにとってサステナブルとは?

コムアイ: 人類の、生き延びるための“闘い”なのかなと思います。持続可能かどうかって、結局は地球のためというよりは、人類がこの先も続くかどうかという話ですよね。たとえば、生物多様性を見ても、すでにおびただしい数の種が地球上からなくなってしまっています。そんなふうに人類が壊してしまって、持続できなくなったものが既にいっぱいあるんです。いままさに、絶望的なくらいの状況に置かれていることに目を背けて、人類がこのままわがままに生きていくと、いずれ人類は滅亡するしかなくなっていくと思うんです。存続するために、もう少しましな生き方を選択しなければならないという、命の闘いなのかなって私は思うんです。

●コムアイ(こむあい)さんのプロフィール
1992年、神奈川県生まれ。慶応義塾大学卒業。2012年に音楽ユニット「水曜日のカンパネラ」を結成し、16年にメジャーデビュー。21年に脱退し、ソロアーティストや俳優として活動中。生命観や死生観を主なテーマに、声と身体を用いた表現活動を展開。水をテーマにしたアート作品で水問題を訴える「HYPE FREE WATER」を立ち上げるなど、気候危機をはじめとした社会問題に取り組む。近年の作品は、奈良県明日香村の石舞台古墳でのパフォーマンス『石室古墳に巣ごもる夢』(2021年)、東京都現代美術館でのクリスチャン・マークレーのグラフィック・スコア『No!』を演奏するソロパフォーマンス(2022年)など。ドラマ『雨の日』(2021年、NHK)で主演、映画『福田村事件』(2023年)にも出演。パートナーは映画監督で文化人類学者の太田光海氏。

古着で表現する自分らしさ。「DEPT」オーナー・eriさん、使い捨て生活からの脱却に挑む トラウデン直美さん「環境にも自分にも嬉しい選択を」。サステナブルも気負わずに
ライター×エシカルコンシェルジュ×ヨガ伝播人。出版社やラジオ局勤務などを経てフリーランスに。アーティストをはじめ、“いま輝く人”の魅力を深掘るインタビュー記事を中心に、新譜紹介の連載などエンタメ~ライフスタイル全般で執筆中。取材や文章を通して、エシカルな表現者と社会をつなぐ役に立てたらハッピー♪ ゆるベジ、旅と自然Love
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。
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