サステナブルバトン2

留学で気づいた「ファッションを通した社会貢献」。徳島県上勝町でゼロ・ウェイストに取り組む、大塚桃奈さんの新たな挑戦とは

サステナブル・エシカル業界で活躍する人にバトンをつなぎインタビューする「サステナブルバトン」の2シーズンが始まります。第1回に登場するのは、徳島県上勝町で「上勝町ゼロ・ウェイストセンター WHY」を運営し、ごみ問題に取り組む若きリーダー、大塚桃奈さん。留学を通じて、自分の将来やこれからの服づくりと向き合い、服を楽しみ続けるには「サステナブルなマインド」が必要だと考えるようになったのだといいます。サステナビリティとの出会いから上勝町での取り組みまでお話をうかがいました。

●サステナブルバトン2-01

――まず、大塚さんの肩書やお仕事について教えていただけますか?

大塚桃奈さん(以下、大塚): 私がChief Environmental OfficerCEO)を務めるBIG EYE COMPANEYは、徳島県の山間の町、上勝町にある環境型複合施設「上勝町ゼロ・ウェイストセンター WHY(以下、WHY)」を運営しています。この施設は、2020530日(ごみゼロの日)にオープンしたので、もうすぐ1周年を迎えます。

WHY」には4部屋、16名様まで宿泊できるホテルも併設しているので、宿泊者のチェックイン・チェックアウト対応をはじめとするホテル業務全般はもちろん、企業との打ち合わせや視察の案内、大学や高校での講演、そしてメディアの対応など、多岐にわたります。私は、主に上勝町のゼロ・ウェイストの取り組みを町外に発信し、ともに循環型社会を目指す仲間を増やすことを担っています。

「サステナブルバトン」の1回目に登場されたエシカル協会の末吉里花さんが主宰していた「フェアトレード・コンシェルジュ講座(現在のエシカル・コンシェルジュ講座)」を、高校生のときに受講していたので、今回、私がお話できるのは不思議なご縁を感じます。

研究機関などに月ベースで貸し出すラボラトリー。Transit General Office Inc. SATOSHI MATSUO

――重責を任された施設は、コロナ禍での門出となりました。怒涛の1年間だったと思いますが、ご自身はどう感じていますか?

大塚: コロナ禍のスタートではありましたが、前年比がないことを前向きにとらえました。とはいえ、通年で稼働率が落ち込むこともなく、これまでに1200名ほどの方々にご利用いただいています。上勝町の人口は約1500名なので、それを上回るのが密かな目標です(笑)。

そもそも「WHY」のある上勝町は、2003年に自治体で初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」をした町。2020年は、焼却ごみをゼロにする目標の年で、それにむけて町のみなさんは、ごみを45種類に分別し、80パーセント以上を資源化、生ごみをほぼ100パーセントたい肥化してきました。

WHY」では、施設を巡りながら、ごみに対しての気づきが生まれたり、上勝町民と同じ目線になれるよう「ごみの45分別体験」をしていただいています。ホテルの使い捨てアメニティはできるだけ置かないようにして、お家で使用している歯ブラシをご持参いただいたり、チェックイン時には滞在中に必要な分の無添加せっけんを量り分けし、提供しています。これからは、「WHY」を通して地域を知り、地域の方々とのつながりを持つための重要な場所にしていけたらと思っています。

WHYのユニフォーム。Transit General Office Inc. SATOSHI MATSUO

――2020年に大学を卒業されたばかりでCEO就任と、新社会人として戸惑うこともあったのでは?

大塚: 右も左も分からない状態。実務をこなしながら、オペレーションを構築する難しさは正直ありましたが、大学1年生の時にアメリカ大使館とメットライフ生命が主催する「Women's Leadership Program」に参加し、働くうえで必要な対外交渉などのスキルを、メンター制度やアメリカ研修を通じて得た経験が少しずつ生きていると感じます。走り始めたばかりのベンチャーなので、実質、常勤の社員は私を含めた2名のみ(笑)。2020年を駆け抜けた、という感覚です。

「ゼロ・ウェイスト」を掲げる宿泊施設はめずらしく、この1年はさまざまなメディアに取り上げていただきました。私自身がHPSpectreシリーズの広告に出演したり、講演の依頼が増えるなど、活動の手ごたえも感じています。日々私自身も「WHY?」と疑問に向き合う中で、「わからないことを楽しもう」と思い、最近ではSFCのパブリックリレーションズ戦略という講義にゲストスピーカーとして上勝の取り組みを共有しつつ、学生といっしょに職場のPRを考えるプロジェクトに取り組み始めました!

最近では、岡山でジーンズの活動をしている株式会社itonamiと連携し、使用済みデニムから新たにデニム素材を再生する「FUKKOKU」というプロジェクトにいっしょに取り組んでいます。ここにいながらにして、さまざまなステークホルダーの方々と対話する機会が持てることはすごく学びになっています。

――目標へと邁進している印象ですが、小さいころから環境問題に関心が高かったのですか?

大塚: 幼いころは、ファッションが大好きで、デザイナーに憧れていました。高校3年生の時に文部科学省が民間企業と協働で展開する「トビタテ!留学JAPAN」というプログラムで奨学金を得て、ロンドンに6週間の短期留学したのですが、それが転機になりました。

現地では、ヨーロッパの学生たちに混じりながらデザインや縫製など、ファッションについて幅広く学びました。なかでも、とくに心に響いたのが「ファッションを通じて、どう社会に貢献していけるか」でした。私自身、中学生のころから服を作りファッションコンテストに応募していて、「服を作るとごみが生まれる」ことを体感していましたから。いま身につけている服は、着るとわくわくするけれど、自然環境や労働者、動物など、さまざまにネガティブなインパクトがある。

学校でも環境問題を学んでいたはずでしたが、そこで初めて「自分ごと」としてその課題を生活のなかで意識するようになりました。あの時間がなかったら、いま私は上勝町にいなかったと思います。

ラボラトリーの本棚は、ごみだったコンテナを積み上げたもの。Transit General Office Inc. SATOSHI MATSUO

――そして、大学は環境学の分野に進学したのですか?

大塚: ロンドン留学で芽生えた、「この先も服を作り続けていくにはどうしたらいいか」「ファッションで社会貢献できないだろうか」という課題に取り組みたいと思いました。

学生時代は、ファションブランド「ミナ・ペルポネン」でアルバイトも経験しましたが、「日本のテキスタイルのクオリティの高さを実感するとともに、輸入服の増加や高齢化にともなう」地域の工場の衰退などもみえてきて。入学当初は「フェアトレード」や「オーガニック」などが自分の中のキーワードにあり、日本の外に目が向いていたので開発学など興味があったのですが、次第に服づくりから好況で何ができるかに意識が移っていきました。

大学時代にも先ほどの留学プログラム等の奨学金を利用して、コスタリカとスウェーデンに留学したことも大きかったですね。

――コスタリカとスウェーデンで、どんな気付きがありましたか?

大塚: スウェーデンでは、大学の学びとは別に独自でアポを取ってフィールドリサーチをする中で、サステナブルファッションがテーマの「コペンハーゲンファッションサミット」に、学生ボランティアとして参加しました。服を新しく作ると、どうしても環境にインパクトを与えてしまう。どうムダのない作業にしていくのかを考えると、「サーキュラーエコノミー」や「リジェネラティブ」「ゼロ・ウェイスト」という発想が大切になってくるんだろうなと感じました。

私が滞在した地方都市・ベクショーは、BBCが「欧州1クリーンな都市」と紹介するほど環境にやさしい街。林業から出た木質チップでバイオマス発電をしたり、家庭の生ごみなどから生じたガスで市内のバスを走らせていました。余暇を自然のなかで過ごす暮らし方にも影響を受けましたね。

コスタリカは、大学2年の時に再生可能エネルギーなど環境工学を学ぶため、モンテベルデに4週間滞在しました。エコツーリズムの盛んな街で、山間で人々が環境に配慮する取り組みを行いながら暮らしているんです。いま思うと、あの風景が上勝町とどこかオーバーラップしたのかもしれません。

さまざまなことが積み重なるなかで、2015年に「Kamikatsu Public House」を設計し、「WHY」も手がけた建築家の中村拓志さんを知っていたこともあり、WHYのプロジェクトメンバーである「Kamikatsu Public House」の田中社長から留学中に「上勝町のプロジェクトに参加しないか」とお声がけいただきました。最終的に心がすっと行く方向が、上勝町だったんです。

町民が利用しているゴミステーション。45分別することでごみの資源化に取り組んでいる。Transit General Office Inc. SATOSHI MATSUO

――導かれるようにして上勝町「WHY」に来たと。とても順調に見えますが、課題はありませんでしたか?

大塚: 上勝町は2003年に「ゼロ・ウェイスト宣言」から17年以上取り組んできて、約8割のリサイクル化に成功していますが、2割が焼却ごみとして残っていることが課題です。高齢化が進む地域なので、45分別が負担になっているのかなとも感じます。また、上勝町だけでは限界があるとも感じていて……。「ゼロ・ウェイスト」実現にむけ、そこに対する答えは見つかっていませんが、みんなが取り組めるユニバーサルなソリューションのヒントを耕したいですね。

いまの社会は、見えない関係性のなかで回っているのかなと思うんです。自分が身にまとうものや食べ物、日用品など、お金を払えば手に入れられ、使い終わったらごみ箱に捨てて、それをどこかに誰かが持って行ってくれる。それが当たり前になっています。

でも、そろそろ見えないなにかに委ねてきた生活を、自分の手のなかに取り戻すころかなと。リデュース(Reduce)、リユース(Reuse)、リサイクル(Recycle)の「3R」は知られていますが、そこにレスポンシビィリティ(Responsibility)=責任も加わるといいなと思っています。知らないではなく、自分が選んだものに責任を持つことで、少しずつ地域や自然との関係性が育まれていけるのではないかと。

上勝町に住んでみて、この町の方々は17年以上もごみを自分たちの責任において暮らしてきたと感じます。それは一種の自治。ごみだけでなく、自分たちの街、暮らしに通じる部分だと思います。

上勝町民と同じ感覚で「ゼロ・ウェイスト」を体験できる「HOTEL WHY」。メゾネットタイプの客室が4部屋ある。建築を担当したのは中村拓志&NAP建築設計事務所。Transit General Office Inc. SATOSHI MATSUO

――では最後に、今後の目標や夢を教えてください。

大塚: この1年間は「WHY」の認知に注力してきましたが、今後は、根を張り始める時期だと思っていいます。具体的には、いままで1200人を超える方々に宿泊に来ていただいているので、その横のつながりを作る仕組みを生み出せたらいいなと“企んで”いて(笑)。また、「WHY」にもっと若い人が来る流れを作りたいですね。町内にレジデンスを併設できないかなど、役場の方々と一緒に話を進めています。

先日、講演をしたときに「活動を続けるには、2つのキーワードがある」と思ったんです。ひとつは、“手触り感”。自分が携わっている実感があると、コミュニケーションが生まれたり、自分の中で何かが変わると思うので。もうひとつは、“わくわくする”ということ。ごみはネガティブなインパクトを持ちやすいですが、「WHY」は廃材を使っているけれどかっこよく(2021年日本建築学会賞を受賞)、体験を通してわくわくした気持ちになれる工夫をしています。

先ほど、若い人にもっと関わってほしいと言いましたが、私も神奈川県出身の移住組。ここに来る若い人たちの繋がりの架け橋になりたいと思っています。そして、ここに来た若い世代の人たちが活躍し、それがさらに世界に広がって貢献していけるような流れを作っていけたらいいですね。

施設を上からみると「?」マークの形になっている。上部にはごみ分別回収施設、町民が不要になったものを持ち込める「くるくるショップ」、ラボ、交流ホールがあり、下部はホテル。Transit General Office Inc. SATOSHI MATSUO

上勝町で大事だと思うのは、関係性を持つ人を増やすこと。ごみステーションと一緒に、交流ホールやホテルがある施設はめずらしいと思うので、そこからクリエイションが生まれるような場として育んでいきたい。「WHY」や上勝町に携わることで生まれる、暮らしのなかの気づきをもっと発信していきたいです。

 

■大塚桃奈(おおつか・ももな)さんのプロフィール
1997年生まれ、湘南育ち。「トビタテ!留学JAPAN」のファッション留学で渡英したことをきっかけに、服を取り巻く社会問題に課題意識を持ち、長く続く服作りとは何か見つめ直すようになる。国際基督教大学卒業後、徳島県・上勝町へ移住し、20205月にオープンした「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」に就職。現在、山あいにある人口1,500人ほどの小さな町で暮らし、ごみ問題を通じて循環型社会の実現を目指して同施設の運営に携わる。併設するHOTEL WHYでは、宿泊を通じて上勝での暮らしを体験でき、チェックイン時にはスタディツアーを開催している。

ライター×エシカルコンシェルジュ×ヨガ伝播人。出版社やラジオ局勤務などを経てフリーランスに。アーティストをはじめ、“いま輝く人”の魅力を深掘るインタビュー記事を中心に、新譜紹介の連載などエンタメ~ライフスタイル全般で執筆中。取材や文章を通して、エシカルな表現者と社会をつなぐ役に立てたらハッピー♪ ゆるベジ、旅と自然Love
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