Presented by ルミネ
サステナブルバトン

「消えゆく氷河を前に、未来のために今日の私にできることを考えた」エシカル協会代表・末吉里花さん

サステナブル・エシカル業界で活躍する人にバトンをつなぐ「サステナブルバトン」が始まります。第1回は、一般社団法人エシカル協会代表理事の末吉里花さん。末吉さんがエシカルに目覚めたきっかけは、 キリマンジャロの消えゆく氷河を訪ねたことだったと言います。エシカルを広める活動を続ける末吉さんに、今すぐできるエシカルについてうかがいました。

●サステナブルバトン01

「エシカル」(ethical)とは、英語で「倫理的」を意味する言葉。人と自然と動物がちょうど良いあんばいで共存していける世界を目指す「エシカル」なライフスタイルに、近年あらためて注目が集まっています。

「サステナブルバトン」では、サステナブル・エシカル業界で活躍する人にバトンをつなぎインタビューしていきます。第1回は「一般社団法人エシカル協会」の代表理事の末吉里花さんです。過去にTBS系『世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターを務めた末吉さんは、世界各地を巡る中で何を感じたのでしょうか。エシカルへの思いを聞きました。

子どもたちに「エシカル」について教える末吉さん/一般社団法人エシカル協会

「エシカル」は思いやりから始まる

――「エシカル」とはどのようなものか教えてください。

末吉里花さん(以下、末吉):  そもそも「エシカル」とは、法的なしばりはないけれど多くの人が「正しい」と感じること。そこから派生して、「人や社会、地球環境、地域に配慮した考え方や行動」を指すようになりました。

エシカルの定義は広く、さまざまな言葉とかけ合わせて使われます。「エシカル消費」「エシカルな生産」「エシカル金融」「エシカルファッション」など。とりわけ、貧困や人権、気候変動など近年の社会問題を解決する糸口になると強く期待されるのが「エシカル消費」です。

――「エシカル消費」とは何でしょうか?

末吉: ひと言で表すと、「他者への思いやりを持った消費行動」です。たとえば食べ物や洋服を買おうとするとき、その品物が誰の手でどうやって作られたものなのか、あまり意識したりしないですよね。

でもそれがもし、劣悪な環境で長時間労働を強いられる生産者や、自然環境の破壊など、何かの犠牲の上で生まれた品物であったとしたら……。消費者として、果たしてそこに加担したいと思うでしょうか。

エシカル消費とは、自分が商品やサービスに対してお金を払う行為が、周りにどんな影響を与えるのか、しっかりと考えてみるということです。

キリマンジャロの頂上で/一般社団法人エシカル協会

キリマンジャロの氷河で痛感した途上国の現状

――末吉さんがエシカルに関する活動を始められたきっかけは何ですか。

末吉: 『世界ふしぎ発見!』という番組で、秘境をリポートするミステリーハンターを10年ほど勤めていました。仕事や旅行で80カ国以上をまわる中で、ひとつの共通点に気がついたんです。 「この世界は一握りの権力や利益のために、美しい自然や弱い立場の人たちが犠牲になっている構造だ」、ということです。

2004年、アフリカ大陸最高峰の山であるキリマンジャロを訪ねました。山頂部にある氷河は、ここ数十年のあいだで8割程度が溶けてしまったといいます。原因のひとつと考えられるのが地球温暖化です。

ふもとの村で、子どもたちが小学校で植林活動をしているところに遭遇しました。山の雪解け水の一部が彼らにとって生活用水となっていたので、氷河が消えることは死活問題です。「木の苗をたくさん植えて氷河を守る」と笑顔で話す子どもたちと過ごした後、私たちは山頂に向かいました。そこで目にしたのは、今にもなくなってしまいそうな氷河でした。

それは、今までテレビや本などで見ていたのとはまったく違う衝撃でした。

あの村の子どもたちの暮らしや、地球温暖化で氷河が溶けていくことは、決して遠い世界の関係ない話ではありません。私たちの世界はつながっていて、何かしらの形で影響を与え合っています。今、私にできることは何なのかと考えるようになりました。

――日本に帰って、まずどんな行動を起こされたのでしょうか。

末吉:  環境問題に関わることをしようと思って、私が住んでいる鎌倉の海でゴミ拾いなどをする活動に積極的に参加しました。でも、そういう活動をしばらく続けるうちに、「私がやっていることに意味はあるのか」と疑問を感じるように。

そんな時に偶然知り合ったのが、フェアトレードブランド「ピープルツリー」の創業者であるイギリス出身の女性、サフィア・ミニーさんです。ブランドを知ったきっかけは、雑誌に載っていたピープルツリーの白いワンピースがとても素敵で、気になったことでした。

ピープルツリーの創業者、サフィア・ミニーさんとネパールを訪ねた時の1枚/一般社団法人エシカル協会

消費を通じて、今日から起こせる小さな変化

――サフィアさんとの出会いで「エシカル」を知るように?

末吉: ピープルツリーの製品はすべて自然素材を手仕事によって仕上げたものです。フェアトレードとは、経済的にも社会的にも弱い立場に置かれている人たちが、それぞれの能力を活かせる仕事を通じて、収入を得られること。フェアトレードの製品を購入することが、彼らの自立を支援することにつながります。実際にサフィアさんの案内で、バングラディッシュなどの生産者を訪ねることもできました。

フェアトレードはエシカル消費の代表格とも言えます。日本にいながらにして、消費を通じて弱い立番の人たちの笑顔を生むことができる。消費という身近な行為だからこそ、普段の暮らしの中で、みんなが実践できることだと感じました。

ピープルツリーのセーターを編む、ネパールの女性たちと/一般社団法人エシカル協会

――値段やデザイン、品質など、ものを買う際の基準は人それぞれで、なかにはフェアトレード製品を選びにくい人もいると思います。誰にでもできる身近なエシカル消費はありますか。

末吉: エシカルには、こうでなければならないという絶対のルールはありません。だから自分が楽しんで続けられる「マイ・エシカル」を見つけてください。

ほんの小さなことでいいんです。たとえば、使い捨ての食器や容器をやめてみるとか、友人と洋服を交換したり、おばあちゃんから譲り受けたものを長く使い続けたりするのも、エシカル消費につながると言えます。

エシカル協会主催のエシカル・コンシェルジュ講座の様子。今までで約1,300人のコンシェルジュを輩出している/一般社団法人エシカル協会

――「消費しない」ことが、エシカル消費になる。どういうことでしょうか。

末吉: これまで私たちは、安いものを買ってすぐに捨てるのが普通になっていました。でも、本当にそんなにたくさんのものが必要だったのでしょうか。今は家で過ごす時間が長いからこそ、自分の暮らしを見つめ直せるいい機会だと思っています。

毎日当たり前に消費していたものを整理して、その中の一部だけでも、エシカルな視点を取り入れてみる。フェアトレードだけでなく、農業や食の業界でよく使われる「オーガニック」「地産地消」、また環境維持に配慮した「サステナブル」などのキーワードも、エシカルな考え方に基づいています。

大切なのは、一人ひとりが行動の主体であること。明日の世界をより良くするのは「大きな変化」ではなく、私たちの「小さな一歩」です。

一般社団法人エシカル協会

●末吉里花さんのプロフィール
慶應義塾大学総合政策学部卒業。TBS系『世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターとして世界各地を旅した経験を持つ。日本全国の自治体や企業、教育機関で、エシカル消費の普及を目指し講演を重ねている。著書に『はじめてのエシカル』(山川出版社)、新刊絵本『じゅんびはいいかい?〜名もなきこざるとエシカルな冒険〜』(山川出版社)ほか。日本ユネスコ国内委員会広報大使。

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ことりと暮らすフリーランスライター。米シアトルの新聞社を経て、現在は東京を拠点に活動中。お坊さんやお茶人をよく追いかけています。1984年生まれ、栃木出身
わたしと未来のつなぎ方