仲間由紀恵

仲間由紀恵さん「見守ることで寄り添う」母の思いに共感 映画「STEP OUT にーにーのニライカナイ」

俳優・仲間由紀恵さんの最新主演作となる映画「STEP OUT にーにーのニライカナイ」が、3月14日(沖縄県は3月7日先行)から公開されます。ご自身の故郷・沖縄を舞台に、ダンサーを目指す少年の成長と家族の絆を描いた本作で、シングルマザーの朱音を演じた仲間さんに、役を通して考えたこと、子どもの自立や家族への思いなどをお聞きました。
仲間由紀恵さん「帰ったら家族がいる。それが私にとっての幸せな場所」 【画像】仲間由紀恵さんの撮り下ろし写真

自分のことは横に置いて目の前のことをやる大変さ

――本作は仲間さんにとって約10年ぶりの主演映画であり、「TRICK」シリーズで監督を務めた堤幸彦さんと約10年ぶり再タッグでもあります。オファーを聞いたときの心境を教えてください。

仲間由紀恵さん(以下、仲間): 堤監督から「沖縄の家族をテーマにした話で、母親の役を演じてほしい」というお話をいただき、私にとってご縁しか感じなかったので、「ぜひ」とお受けしました。映画に出演するのも久しぶりでしたが、堤監督は昔から沖縄のことが好きで思いのある方でしたので、嬉しい気持ちと全幅の信頼を寄せて撮影に臨みました。

仲間由紀恵

――朱音は、二人の子どもを育てるためにホテルの清掃とスナックの仕事を掛け持ちするシングルマザーという役どころでした。

仲間: 朱音は一人で二人の子どもを育てているので、生活するためにもお金が必要なんです。つつましく暮らしながら時間の許す限り働いて、できることをやっていかなければいけない。そんな忙しない日々の中で、なかなか子どもたちとのコミュニケーションも取れないのですが、朱音はどこか吹っ切れていて、「もうやるしかない!」といった強さを持っている人だなと感じました。

それに、決して辛そうに仕事をしているわけではないんです。頑張って働いて、ボロボロになって帰ってきて、「あとはお願い」と子どもたちにお任せするので、「母親としてどうなの?」と思うところも少しありますが、それで今の生活が成り立っている。「なんとかやっていこう!」というサバサバしたところがある人だなと思いました。

――2児を育てる同じ母親として、朱音のどんなところに共感しましたか?

仲間: 私自身はシングルマザーではないけれど、自分のことは一旦横に置いて目の前のことをやっていかなければいけない大変さや、我が子のためにという思いはとても共感できる部分でしたので、そこを軸にしながら朱音像をつくっていきました。

――ご自身は、仕事と家事のバランスはどのようにとられていますか?

仲間: 気づいたときに少しずつやるのが私のやり方です。毎日すべての場所を掃除することはできないけど、「今日はちょっとだけ時間があるから、洗面所周りとキッチンはやる」とか、次の日は「昨日できなかった部分をやる」という風に、小分けにしています。本当は一気にやりたいのですが、それだけに時間を取ってしまうとほかのことが進まなくなってしまうし、その方が集中度もアップします。

家にいると何かしら動いているし、やらなければいけないことが止まらなくなったりして、気づいたらどっと疲れていることが多くて。なので、現場に出ている方が確実に体は休まっています(笑)。

©「STEP OUT」製作委員会
©「STEP OUT」製作委員会

不器用ながらも、自分にできる最大限のことで

――ダンサーを夢見る息子の踊(よう)を見守る母親としての朱音の姿はどう映りましたか?

仲間: 朱音ってすごく不器用な人なんですよね。息子にお金をあげることで会話しているようなところがあって。しかも5000円という絶妙な金額で(笑)、1000円でもなければ1万円でもないところが堤監督らしいなと思いました。

そういう不器用なコミュニケーションしかできていなかったけど、踊の真剣な気持ちに打たれ、夢に向かってまっすぐ進んでいく姿を見て、「応援したい、見守ってあげたい」という強い思いが芽生え、朱音も母親として一歩成長したと感じました。不器用ながらも自分にできる最大のことをして、朱音らしく見守ることで寄り添っていたのかなと思います。

――踊と本音を言い合い、ぶつかるシーンも印象的でした。

仲間: 朱音は自分が子どものことを理解できていないことに未熟さを強く感じて、反省もします。本当は誰よりも息子のことを理解してあげたいし、支えてあげたい。そういう狭間で苦しみながらも、「あなたのことを理解したいんだよ」という強い思いをなんとか言葉で伝えていくという大事なシーンだったので、心をこめて気持ちを伝えました。

そういう大事なシーンの日に限って、堤監督が天才的に雨を降らせるんですよ(笑)。昔から監督とご一緒する初日に雨が降らなかった日はないくらい強力なパワーを持っていらっしゃって。その日も雨で、スタッフさんと「そうなるよね」と思いながら空を見ていましたが、こちらも気持ちが入る大事なシーンですから「雨なんかに負けられない!」と思っていたら、段々小雨になってきたので、みんなで雨が止むのを待って撮影することができました。

仲間由紀恵

子どもの自立を受け入れて見守る母親でいたい

――今作では「子離れ・親離れ」「子どもの独り立ち」もテーマの一つでしたが、ご自身にも近い将来訪れる「子離れ」をどのように考えていらっしゃいますか?

仲間: 踊のように意思疎通ができる年齢になって、自分の人生を生き始めるといった過程を今回の映画で体験すると、さみしいような嬉しいような気持ちになりました。

うちの子たちはまだ小さいので実感はないのですが、想像すると怖いですし、きっととてつもなくさみしい気持ちに襲われるのだろうなと思います。そこでどれだけさみしさをこらえて、彼らが踏み出すことを応援してあげられる親になれるのかと思うと心配ではありますが、その成長をちゃんと受け入れて見守ることができる母親でいたいなと思います。

――映画を通して、様々な「家族」の在り方があると思いましたが、ご家族に対する今の思いを教えてください。

仲間: 毎日忙しくて自分の時間はないけれど、ワイワイと楽しく笑っていられる時間があるということは幸せだなと感じています。きっと家族それぞれが年齢を重ねて、子どもたちも中学生や高校生になったらまた形は変わってくると思うのですが、「今が一番楽しい」って常に思えるような家庭にしていきたいなと思っています。

ヘアメイク:杉田和人(POOL)
スタイリスト:十川ヒロコ(THIS)
ワンピース・ショートジャケットともにFABIANA FILIPPI

仲間由紀恵さん「帰ったら家族がいる。それが私にとっての幸せな場所」 【画像】仲間由紀恵さんの撮り下ろし写真

●仲間由紀恵(なかま・ゆきえ)さんのプロフィール

1979年生まれ、沖縄県出身。地元のタレント養成学校で演技指導を受け、95年にTVドラマ「日本一短い母への手紙2」でデビュー。その後、数々の映画やドラマに出演。代表作に、主演を務めた「TRICK」シリーズや「ごくせん」などがあるほか、近年の主な出演作に、連続テレビ小説「ちむどんどん」、「大奥season2 医療編」(いずれもNHK)など。

■映画「STEP OUT にーにーのニライカナイ」

監督: 堤幸彦、平一紘
脚本: 谷口純一郎
出演:仲間由紀恵、Soul、又吉伶音、伊波れいり、津嘉山正種、橘ケンチら
配給 : ギャガ
配給協力 : 大手広告
©「STEP OUT」製作委員会
3月7日(金)沖縄県先行公開、3月14日(金)新宿ピカデリー他にて全国公開

ライター。雑誌編集部のアシスタントや新聞記事の編集・執筆を経て、フリーランスに。学生時代、入院中に読んだインタビュー記事に胸が震え、ライターを志す。幼いころから美味しそうな食べものの本を読んでは「これはどんな味がするんだろう?」と想像するのが好き。
1983年生まれ。出版社勤務を経て、2008年 フリーランスフォトグラファーに。「温度が伝わる写真」を目指し、主に雑誌・書籍・web媒体での撮影を行う。