上白石萌音さん「話したい相手がいる人生は、あたたかい」。大切なのはどんな言葉で伝えるか

味わい深い細やかな演技と表現力で、俳優、歌手、声優と多彩に活躍する上白石萌音さん。実話を元にした映画『35年目のラブレター』では、十分な教育を受けられず読み書きができない夫を支える妻役を演じ、夫婦のあり方や多様な生き方に考えを深めたと話します。理想の夫婦像や、大切な人との関係性について、伺いました。
上白石萌音さんが憧れる夫婦像とは? 映画『35年目のラブレター』 【画像】上白石萌音さんの撮り下ろし写真

時間をかけて、しっくりくる言葉を選びたい

――本作では、夫婦を結ぶ絆として「手紙」がカギとなっています。上白石さんは普段の生活の中で、大切な人にどのように気持ちを伝えたり接したりされていますか? 

上白石萌音さん(以下、上白石): 私が普段から大切にしているのは「どんな言葉で伝えるか」ということです。嘘がなく、相手が喜んでくれる言葉を選びたいといつも思っています。今はスマホなどでぽんぽん言葉のやり取りができて、その流暢さが求められがちな時代ですが、だからこそ、ここぞというときには、時間がかかっても一番しっくりくる言葉を探したいです。

――映画の二人のように、手紙で想いを伝えることもありますか?

上白石: 実は私、よく手紙を書くんです。メールももちろん使いますが、特に、誕生日や大事な日には、できるだけ手紙で言葉を贈りたくて。その方が伝わる想いもあると思いますし、何より私が手紙をもらったら嬉しいので。

 同じ矢印の太さで必要とし合える関係に

――多様な生き方が広がる今の時代、結婚を選ばない人も増えています。一方、この映画では「結婚」や「パートナー」「夫婦」が描かれ、人と共に生きることの幸せや豊かさを感じます。上白石さんが描く理想の結婚の形とはどんなものでしょうか? 

上白石: 映画の中の保(たもつ)さんと皎子(きょうこ)さんの関係はまさに憧れです。互いの言葉をちゃんと聞くとか、対等であるというところも、夫婦関係においてすごく大事ですよね。皎子さんも3歩下がって……というポーズはしているけど、実際には対等な関係を築いていて、だからこそ信頼関係も強くなるのかなと思います。

自分の人生に必要な人に、必要だと言ってもらえる。お互いに同じ矢印の太さで必要とし合っているのが、本当に素敵な関係ですよね。そんな相手と人生を共にできたらすごく幸せだし、私も誰かのために生きることができたらいいなと思います。

結婚じゃなくてもいいと思うんです。今日こんなことがあって、こんな気持ちになったよとか、あなたはどうだった?とか、自分の気持ちを話したい、伝えたいと思える相手のいる人生は、あたたかいなと思います。それがたまたま結婚という形に結び付くこともあるかもしれないし、また別の関係性もあるかもしれません。

ときには悩みを何かのせいにしたっていい

――2030代は、結婚や出産などライフイベントに伴う選択に迷うことも多い年代ですが、自分らしく生きるために大切にしていることがあれば教えてください。

白石: 悩めるのは、幸せなことだと思うんです。やりたいことがあったり、なりたい自分があったりするからこそ悩めると思うので。だから全然悪いことではない。とことん悩んでいいし、考えていいし、落ち込んでもいい。それでもどうしようもないときは、何かのせいにしたっていいと思っています。

たとえば生理だからとか、低気圧だから、とか、誰かを傷つけなければ、何のせいにしてもいいんじゃないかなって。常にいい子ではいられないし、きれいごとも言っていられない。毒を吐きたいときだってあって当然です。心の中でどこかに向かってボールを投げて、それでスッキリするなら、そういう解消の仕方もあっていいのではないでしょうか。

上白石萌音さんが憧れる夫婦像とは? 映画『35年目のラブレター』 【画像】上白石萌音さんの撮り下ろし写真

●上白石萌音(かみしらいし・もね)さんのプロフィール

1998年、鹿児島県生まれ、。2011年、第7回「東宝シンデレラ」オーディションで審査員特別賞を受賞しデビュー。2014年、『舞妓はレディ』で映画初主演を果たす。現在は、歌手・ナレーター・声優としても幅広く活動する。代表作に、映画『君の名は。』『夜明けのすべて』、ドラマ『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』、連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』、舞台『千と千尋の神隠し』などがある。

●映画『35 年目のラブレター』

監督・脚本:塚本連平
出演:出演:笑福亭鶴瓶、原田知世、重岡大毅、上白石萌音ほか
2025年3月7日(金)に全国で公開

ライターやエディターとして活動。女性の様々な生き方に関心を持ち、日常の中のセルフケアや美容、ウェルネスをテーマに取材・執筆を続ける。また、ファッションやコスメブランドのコピーライティングなども手がけている。
1983年生まれ。出版社勤務を経て、2008年 フリーランスフォトグラファーに。「温度が伝わる写真」を目指し、主に雑誌・書籍・web媒体での撮影を行う。