仲間由紀恵

仲間由紀恵さん「帰ったら家族がいる。それが私にとっての幸せな場所」

「TRICK」や「ごくせん」などの代表作を筆頭に、10代の頃から俳優として活躍してきた仲間由紀恵さん。プライベートでは2児の母親でもある仲間さんに、お子さんとの接し方や年齢を重ねて感じる変化、ご自身にとっての「理想郷」などについて伺いました。
仲間由紀恵さん「見守ることで寄り添う」母の思いに共感 映画「STEP OUT にーにーのニライカナイ」 【画像】仲間由紀恵さんの撮り下ろし写真

双子の育児、それぞれの個性に合わせて

――映画「STEP OUT にーにーのニライカナイ」では、息子が夢に向かって独り立ちしていく姿に、悩みながらも見守る母親役を演じました。ご自身もお子さんが成長したことで、幼かったときとは違う悩みはありますか? 

仲間由紀恵さん(以下、仲間): 昔よりもごまかしが効かなくなってきたなと思います。成長するにつれていろいろなことへの理解が深くなっていきますから、こちらが言っていることに対して、前は「うん」と素直に答えていたのが、どうしてそういうことを言っているのか分かるようになってきて、私の思惑が全部分かってしまうんです(笑)。

なので、「ちゃんと理由があって話しているんだよ」ということが伝わるような接し方をするようにしています。私自身、「今まで、こんなに考えて人と会話できていたのかな」と振り返るようにもなったので、人とのコミュニケーションの取り方を改めて考えるようになりました。

――双子の男の子がいらっしゃいますが、接し方に違いはありますか?

仲間: やはり二人それぞれに個性があります。一人は元気で明るく「これをやろう」と声をかけたら「いいね、やろう!」と乗ってくるけれど、もう一人はそういうタイプではないので、彼のスピードやリズムに合わせてうまく誘導するようにしています。無理やりいろいろなことを進めても逆に時間がかかりますし、本人の気持ちもちゃんと入っていかないと思うので、それぞれの性格や気持ちにできるだけ合わせて話をしたり、物事がうまく進められるような誘導をしたりすることを心掛けています。

仲間由紀恵

「ただ見守る」って難しい

――そのほかに、子育てをする上で大切にしていることを教えてください。

仲間: 気をつけなければいけないことはたくさんありますが、朱音のように「ただ見守る」ことってすごく難しいんです。目の前で何かやっているとつい口も出るし、手伝うために体も動いてしまうのですが、できていようがいまいが「やりたいことを見守る」という我慢も必要なのだと思いました。

とはいえ、うちは男の子なので動きも速いし危なっかしいときもあります。「失敗しても、うんと汚れてもいいや!」という気持ちを持って、できるだけ黙っていようとは思いながらも、なかなか実践するのは難しいですね(笑)。

――見守ることしかできない、というのはもどかしくもありますよね。

仲間: 親が子どもの夢のために手伝えることって、きっとないんですよね。子どもだって自分で選んだ夢を自分で歩きたいから、親に手を出してほしいわけじゃないと思うんです。

親として嬉しいのは「この前できなかったようなことができるようになっている」とか、「前よりも少しだけ客観的にものが見られるようになっている」といった日々少しずつ成長していく姿を目の前で見られることです。それが子どもたちの努力の結果でもあると思うとたくましく思いますし、頑張ってくれていることでこちらも励まされることがあります。

――お子さんたちに、どのように成長してほしいと思いますか?

仲間: 強く育ってほしいと願っています。そして、自分がやりたいことや好きだと思うものを見つけて、それをやるためにはどうしたらいいのかを自分で考えて進んでいってほしいですね。

家訓というほどではないのですが、昔から「とにかく人には優しくする」ことを大切にしています。人生には楽しいときや大変なときもあるけれど、自分一人の力ではなく、周りの人たちの助けや応援があって今があるので、他者への感謝の気持ちを子どもたちにも伝えていきたいなと思います。

仲間由紀恵

内面を磨けば、自分の場所に行き着く

――telling,読者は20代後半から40代の女性が中心で、結婚やキャリアについて迷ったり不安を抱えたりする世代でもあります。仲間さんは「仕事か結婚か」、「キャリアか育児か」について悩んだことはありましたか?

仲間: 私はあまり先のことまで考えない楽観主義なところがあるので、キャリアを見据えて計画的にお仕事をなさったり、人生プランを考えていたりする方は本当にしっかりしているなと思います。

20代~30代は寝る時間もほとんどないくらいお仕事をしていたので、先のことを考えられる余裕がなかったかもしれませんが、どんなに大変な現場でも、とにかく目の前の仕事を全力でやって、お芝居の技術を磨くことが今後につながると確信していました。

――結婚についてはいかがでしたか?

仲間: 結婚に関しても「そろそろするのかな?」といった思いも全くなく、割と急に「結婚する」といった感じでしたので、悩んだり不安に思ったりしたことがなかった分、ある意味で幸せだったのかもしれません。

人それぞれにいろいろな不安もおありかと思いますが、自分の内面を磨くことでより輝いていきますし、そうすることでお仕事でも恋愛でもいいご縁が寄ってきて、きっとご自分が整う場所に行き着くのだと思います。

仲間由紀恵

ニライカナイ(理想郷)は憧れる場所ではなかった

――映画のタイトルに入っている「ニライカナイ」とは、沖縄地方に伝わる“理想郷”の概念を表す言葉だそうですね。仲間さんにとってそう思える場所はどこでしょう。

仲間: 私が沖縄に住んでいた頃は、東京など沖縄以外のテレビで見る場所が本当に憧れでした。当時は漠然と東京がニライカナイなのかな?と思っていたのですが、本当のニライカナイって、憧れを求めるような場所ではなく、“理想とする自分”ということなのかなと思うんです。なので、今目の前にあることを頑張れる環境や状況があること自体が、すごく幸せだなと思います。

それに、今、自分が幸せになれる場所はどこかと考えたときに思い浮かぶのは、やはり我が家ですね。何かと騒がしいですが、家に帰って家族がいる。それが私にとっての幸せな場所であり、その幸せを長く続けていけるように、この先のニライカナイへ向けて頑張りたいなと思っています。

――「ごくせん」での「ヤンクミ」などの当たり役をお持ちですが、今後演じてみたい役はありますか?

仲間: これまで、お医者さんや学校の先生、警察官など様々な職業の役を経験させていただきましたが、この年齢になったからできる立場や職業もあると思うので、また新しい気持ちでいろいろな役に臨みたいなと思っています。

「40代からのスタート」と考えると、まだこの年齢でやっていない役はたくさんあると思いますし、ホラーも大好きなのでいつか絶対に出たいなと思っています。

ヘアメイク:杉田和人(POOL)
スタイリスト:十川ヒロコ(THIS)
ワンピース・ショートジャケットともにFABIANA FILIPPI

仲間由紀恵さん「見守ることで寄り添う」母の思いに共感 映画「STEP OUT にーにーのニライカナイ」 【画像】仲間由紀恵さんの撮り下ろし写真

●仲間由紀恵(なかま・ゆきえ)さんのプロフィール

1979年生まれ、沖縄県出身。地元のタレント養成学校で演技指導を受け、95年にTVドラマ「日本一短い母への手紙2」でデビュー。その後、数々の映画やドラマに出演。代表作に、主演を務めた「TRICK」シリーズや「ごくせん」などがあるほか、近年の主な出演作に、連続テレビ小説「ちむどんどん」、「大奥season2 医療編」(いずれもNHK)など。

■映画「STEP OUT にーにーのニライカナイ」

監督: 堤幸彦、平一紘
脚本: 谷口純一郎
出演:仲間由紀恵、Soul、又吉伶音、伊波れいり、津嘉山正種、橘ケンチら
配給 : ギャガ
配給協力 : 大手広告
©「STEP OUT」製作委員会
3月7日(金)沖縄県先行公開、3月14日(金)新宿ピカデリー他にて全国公開

ライター。雑誌編集部のアシスタントや新聞記事の編集・執筆を経て、フリーランスに。学生時代、入院中に読んだインタビュー記事に胸が震え、ライターを志す。幼いころから美味しそうな食べものの本を読んでは「これはどんな味がするんだろう?」と想像するのが好き。
1983年生まれ。出版社勤務を経て、2008年 フリーランスフォトグラファーに。「温度が伝わる写真」を目指し、主に雑誌・書籍・web媒体での撮影を行う。