芳根京子さん「今を全力で生きれば、きっと未来につながる」
支え合う関係性が理想
――夫役の松坂桃李さんとは、映画「居眠り磐音」以来の再共演でしたが、今回の現場ではいかがでしたか。
芳根京子さん(以下、芳根): 前回ご一緒させてもらった時は同じシーンがあまりなくて、会えなくても心は繋がっているという役どころだったので、面と向き合っていてもお互い悲しい顔をしていることが多かったんです。
でも今作では、夫婦として支え合い、補い合うという関係性で、自然とその空気感になれたのは、松坂さんご本人のお人柄があってこそ。安心感もありましたし、とても心強かったです。良策さんの笑顔が見られた時は「笑顔にさせられて嬉しい!」って思いました。
――良策と千穂の関係性を、客観的にどう感じましたか。
芳根: 今回は良策さんと千穂それぞれに殺陣のシーンがあるのですが、時代劇というと「女性は守られるもの」みたいに思い込んでいたところもあったんです。でも今作は女性も戦っているので、ある意味で現代的な感じもあるなと思いました。
でもきっと、今の時代では成立しなかった夫婦の形なのだろうなと思います。今は連絡を取ることもスマホひとつでできるし、ハードルが低いですよね。「今どこにいますか? 元気ですか?」ということの確認が簡単にできるけど、千穂たちが生きたのはそれがなかなかできない時代。
同じ状況を現代に置き換えて考えてみた時、夫が長旅に出て、今どういう状況なのかも分からない、もう帰ってこないかもしれないとなったら、私は自分の心を守るために、割と早めに覚悟を決める気がします。「当たり前」が違う今の時代から思うと、あそこまで夫を信じて待ち続けることはなかなかできない強さだなと思います。
――芳根さんにとって、理想の夫婦とはどんな形でしょう?
芳根: 良策さんと千穂を見ていて、どちらが強いとかでもなくて、足りないところをお互いが補う。そういう平等な関係性って、すごく風通しもいいなって思いました。お互いに支え合うってすごいことですよね。どちらかが頼りっぱなしではなく、「今、つらいんだね、じゃあ私がここは頑張るよ」みたいに、2人でひとつといった夫婦はすごく素敵だし、理想の夫婦の形のひとつだなと思います。
自分では気づかない繋がりを大切に
――映画のタイトルには「ともに在りて」という副題がついています。妻の千穂や、良策が教えを乞う京都の蘭方医・日野鼎哉先生をはじめ、人と人との助け合いや支え合いが描かれていましたが、この副題も含め、作品全体に対する思いを聞かせてください。
芳根: やっぱり人は支え合って生きているし、自分では気づかないところで、たくさんの人が支えて、見守って、応援してくれている。きっと自分が思っているよりも、たくさんの方と繋がっているなと思うことが多いので、私もそういう人との関わりをこれからも大切にしていきたいです。
千穂たちが生きたのは、人との繋がりによって成り立つものがたくさんある時代だったのかなとも思います。当時は手紙など温もりを感じる方法で繋がっていたのかなと。そういったものも詰まっているので、この作品が皆さんとともにあっていただけたら嬉しいです。
「今を楽しめれば勝ち」
――時代が令和になった今、女性も「キャリアも家庭も」などの選択肢が増えた分、また新たな悩みを持つ方も増えています。仕事、結婚、夢など人生のさまざまな局面でターニングポイントが訪れますが、芳根さんはこれまで不安や迷いがあったことはありましたか?
芳根: 不安なことを探したらたくさん出てくるんですけど、私は「とにかく今を生きよう!」って思っているんです。そう思うのは昔から変わらないのですが、今作のような時代劇に出演させていただくと、より「今」が未来に通じていると思えます。
「こうでなきゃいけない」という考えはあまりしないようにしています。未来のことばかり考えて不安になっていろいろなことが疎かになるのであれば、とにかく今を全力で生きてみて、結果「未来がどうなるかと楽しめれば勝ちだな」というのが私の生き方なんです。
今自分がやるべきことをやる。そうしていれば、恋愛に限らず、友達や先輩後輩、お仕事などでいつか素敵なご縁や出会いがあると思うし、素敵な人との出会いって、自分の価値観をより豊かにしてくれる気がするんですよ。
――芳根さんにはいつもそうした前向きな印象がありますが、不安になったり落ち込んだりしたときはどのように乗り越えていますか。
芳根: 「この人ならなんでも話せる」と思う人に話しますね。実は私は根は割とネガティブなので、気を抜くとすぐ気持ちが落ちてしまうんです。以前、「落ち込んじゃって」と友達にこぼした時「いつでも連絡ちょうだい。話聞くから」と言ってくれたことがありました。
そうやって自己肯定感をあげてくれる友達に出会えたことが、私の人生の強みだなと思っています。なので、家族や友人でも、この人だったら自分を否定しないと思える人や、今の自分を「そのままのあなたでいいんだよ」と言ってくれる人とお話しするようにしています。
30歳になった友人がキラキラして見えた
――2月で28歳を迎えられます。「telling,」では「30歳」というひとつの節目を迎える女性たちの焦りや葛藤を「29歳問題」として取り上げてきましたが、30代に対する今の思いを教えてください。
芳根: 私も以前は、「30歳になるとこれができなくなる、あれができなくなる」みたいな考えを持っていたんですけど、さきほどお話しした「なにかあったら電話して」と言ってくれた友人が、「30歳っていいよ」という話をしてくれたことがあったのです。それを聞いて、私も30代になるのがすごく楽しみになりました。できることも増えていくし、30歳になったその友人がすごくキラキラして見えたんです。
――身近にロールモデルになるような人がいると、「自分もそうなりたい!」と前向きになれますよね。
芳根: 元々、年齢に対してマイナスなイメージがなかったので、年齢を重ねることに対する恐怖心というものは、人よりは感じていないタイプかもしれません。今はとにかく30代になるのが楽しみなんです。30歳になったからできるお仕事や、「どういう役に会えるかな」ということがどんどん増えていて。だからこそ、20代を悔いなく終えられるように、今を全力で日々過ごしていきたいです。
●芳根京子(よしね・きょうこ)さんのプロフィール
1997年、東京都生まれ。2013年にテレビドラマ「ラスト♡シンデレラ」でデビュー。翌年、映画「物置のピアノ」で映画初出演・初主演を飾る。同年、NHKの朝ドラ「花子とアン」に出演。近年の主な出演作に、映画「Arc アーク」、「累-かさね-」、「散り椿」ドラマ「オールドルーキー」、テレビ東京開局60周年特別企画ドラマ「晴れたらいいね」(Prime Video 配信)、などがある。1月14日スタートのドラマ「まどか26歳、研修医やってます!」(TBS系)では主演を務める。
監督:小泉堯史
脚本:齋藤雄仁、小泉堯史
原作:『雪の花』(吉村昭著、新潮文庫刊)
出演:松坂桃李、芳根京子、三浦貴大、宇野祥平、沖原一生、坂東龍汰/吉岡秀隆/、役所広司ほか
1月24日(金) より全国公開