お呼ばれルールにとらわれない女たち
結婚式のお呼ばれ服はダサすぎる
結婚式の“お呼ばれルール”に縛られて、日本人はみんな同じようなドレスや髪形になっていてダサい……。SNSなどでこんな投稿が話題になり、多くの共感をはじめとする反応がよせられるケースを度々目にする。
日本の伝統や季節感、主役を立てるといった文化も相まって、結婚式に参列する際の服装に関する暗黙のマナーは、現代では少なからぬ人にとって悩みの種となっているようだ。例えば、主役より目立たないようにダークトーンの色の服を選ぶ、肩だし背中だしなど露出が激しいものは避ける、かかとのあいた靴は履かない、美容院にいって髪をセットしないといけない、などなど。

ただし、最近はそのようなルールを意識しながらも、自分なりに自由に着飾っている女性も少なくないようだ。
自分の良さを引き出せる姿で
人材会社に勤めるKさん(32)は、結婚式に参列する際はとにかく派手に奇抜に着飾っていくという。その理由は「新郎新婦に喜んでもらえることの方が多いから」だという。24歳で初めて結婚式に参列したときから、既存のルールには違和感があった。好きな色の服を選べないことや、普段はスニーカーを履いているのにヒールを履かないといけないことなど、ゲストが我慢して服装を整えて出席することで、新郎新婦は得るものがあるのだろうか、と疑問には思っていた。
疑問を抱きながらも無難な服で参列した結婚式では、あとから集合写真で自分を見つけられなくて後悔した。その中にはおしゃれに派手な服を着ている人がいて、個性が目立っていた。その人を見てから、自分もそうしたいと思うようになったという。
Kさん流のお呼ばれのこだわりは、参列する新郎新婦の式のコンセプトに合わせることだという。先日参列した友人の結婚式のテーマは「人気アニメ×和」だったので、そのテーマにあわせて髪型や服装を決めたが、新婦にとても喜んでもらえた。なぜそこまでこだわるのかといえば、結婚式の想い出の一部になりたい、という気持ちが強いからという。
「もてなしている側は、一生に一回しかない。ゲストにとっても、その場は一生に一回しかない結婚式のはず。そこで変な遠慮なんて要らない、と思っています。結婚式はみんなでつくるものという感覚があり、一方的に新郎新婦だけが主役で好きな恰好をしているのではなく、参列している人たちも好きな服を着て、最大限楽しむ方がいいのではないでしょうか。それが自分なりの敬意だと思っています。実際に毎回、新郎新婦に喜んでもらっています。後日飲みに行ったりすると自分の服装の話をしてくれるし、『あなたの恰好は一生忘れられないわ!』と言われたり、主役の記憶の一部に残ることが嬉しい」

同じようなアップの髪型に違和感
広告会社に勤めるAさん(27)は、美容院に行ってヘアセットをしないことが“マイルール”だという。ヘアもメイクも普段通りにする理由は、時間とお金がもったいないから。
たびたびお呼ばれするようになって徐々に結婚式への出席にも慣れてきた頃、参列者の男性に「女性はお金も時間もかかって大変だよね」と言われ、モヤモヤした。なぜみなお決まりのように同じようなものを着て、お金かけて時間かけてヘアセットまでして準備しないといけないのか疑問に思った。結婚式に参列することや、大切な人をお祝いできることはとても嬉しいが、やらないといけない暗黙のルールに縛られることには違和感がある。Aさんは美容院に行くのをやめた。

「ルールにとらわれ似たような服やスタイルが増殖していることを、楽しいとは思えない。服や髪型にバリエーションがあった方が楽しい。また、本当にその人たちが楽しいからやっている、と思えることが大事だなと」。もしかしたら今後、何かのタイミングで自分なりのヘアメイクにこだわり、再び美容院へ行くようになることはありだという。Aさんにとって大事なのは「やりたいと思うタイミングで」できることだ。もし自分が結婚式をする側になったら、「カジュアルにしたい」と伝えたうえで、それでも楽しんでやってくれる人がいるならウェルカム。大事なのは「やらなきゃ」とは思わせないようにすることだ、と考えている。
真におしゃれを楽しむ
IT会社に勤めるMさん(31)は、イギリスと日本のハーフ。初めて参列した結婚式はイギリスの親戚の結婚式だった。参列している人がみんなカラフルで、ハットを被っていたり、手袋をしたりして、おしゃれだった。花嫁をもちろん立たせつつも、参列者の男女どちらもドレスアップしていて楽しかった。Mさんの結婚式参列の“こだわり”は、その原体験が影響している。

Mさんの参列する際のこだわりは、ハレの日にあう華やかな服を選ぶことだという。過度な露出は避けるが、ノースリーブやミニ丈のドレスを選ぶこともある。色・デザイン性のあるもの・自分が着たいものを選ぶ。また、普段できないヘアアレンジをできる機会なので、髪が長い時は美容院にいって好きな髪形にチャンレジしている。
「実際にピンクのノースリーブを着ていったときは、新婦から『最高! あなたなら着飾ってくれると思っていた』と言われてとても嬉しかった。カラフルな人の方が目に入るし、会場が華やかになると思っています。同じような服に同じような髪型で参列しても楽しくない。ドレスアップはするけど、下品にはしない。あくまでも新郎新婦が主役という前提で、自分もカラフルにしてお祝いの気持ちを表現し、場を華やかにしたいという思いでやっています」。Mさんは他人の結婚式をおしゃれするきっかけととらえ、前向きに楽しんでいる。
また、Mさんは自身の結婚式では、カラフルな方が見ていて楽しい、可愛く着飾ったみんなを見るのが楽しいと思い、ドレスコードを「カラフル」にした。可愛いドレスでも、日本では着る機会がないものを楽しんでほしい、という思いを友人に伝えた。実際に後から見返す写真も華やかで、主役である自分も振り返るのが楽しいし、自分の結婚式でおしゃれを楽しんでいる友人をみてとても嬉しかったという。

「自分の好み優先で服を選ぶ」女性は2割
博報堂キャリジョ研プラスは今年2月、20-30代の女性150名を対象に「お呼ばれ服に関する意識アンケート調査」を実施した。
まず、結婚式に参列する際、お呼ばれ服のルールを気にしてコーディネートを選んでいるか、自分好みを優先しているかを4段階で聞いた。「ルールに合わせて選ぶ」「どちらかといえばルールに合わせて選ぶ」と回答した人は全体の8割となった。一方で、「自分好みを優先して選ぶ」「どちらかといえば自分好みを優先して選ぶ」と回答した人は2割にとどまり、ルールに合わせて選んでいる人が大半ということが明らかになった。
【グラフ1】

お呼ばれ服のルールとして具体的に気にしているルールを聞いてみると、「白色の服を選ばない」が52%とトップで、次いで「上品で落ち着いたトーンの服を選ぶ」が41.3%となった。また「膝が出ない丈の服を選ぶ」「足先が出ないピンヒールを履く」「腕時計を身に着けない」などなど、靴やアクセサリーに至るまで様々な細かなルールを気にしている人の割合も少なくなかった。
【グラフ2】

一方、「自身の好みを優先して選ぶ」「どちらかといえば自身の好みを優先して選ぶ」と回答した人にその理由を聞いてみると、「お呼ばれ服選びや美容院にお金をかけたくないから」が最も多く、次いで「準備に時間をかけたくないから」「普段できないおしゃれをできる機会なので、その機会を楽しみたいから」などが続いた。
【グラフ3】

取材やアンケートを通して、TPOに合わせてお呼ばれルールを守ることの大切さももちろんあるが、「新郎新婦が喜ぶ」ことや「祝いの場をゲスト自身も楽しむ」ことを重視して自分らしい着こなしを楽しんでいる女性がいることもわかった。近年はガーデンウエディングやビーチウエディングなどカジュアルな結婚式も増え、ゲストも自分らしくおしゃれを楽しめる場が少しずつ増えているようにも思う。ルールを守る人も、自分好みで服装を選ぶ人も、まずはひとりひとりが「その日を楽しむ」ことを忘れずに服装を選べるようになるとよいと感じた。
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