3人の子育てに奮闘中の安倍なつみさん「育児を優先したことに迷いも後悔もない」
「大丈夫」と自分に言い聞かせて
――吹き替え版の声優を務めた映画「パウ・パトロール ザ・マイティ・ムービー」では、みんなよりも自分が小さいことをコンプレックスに思う「スカイ」の話がテーマの一つでした。安倍さんはご自身のコンプレックスとどう向き合ってこられましたか?
安倍なつみさん(以下、安倍): 私は基本的に自己肯定感がとても低いので、何をするにしても「まだ足りないな」とか「全然できていない」と思うことが多いんです。「モーニング娘。」の一員でいた時も「これで良かった」というところに自分が落ち着くまでがすごく遅くて。そういう時は、おまじないのように「大丈夫、大丈夫」と自分に言い聞かせるのがクセになっていました。
――お仕事柄、ファンの方からの評価が自信につながることもあるけれど、その反面、ネガティブな意見も耳にすることもあったのでは?
安倍: そういうこともありましたが、外部からの評価にはネガティブな面とポジティブな面の両方があると思うんです。今は子育て中なので、世間の評価や声というのをあまり目にしたり耳に入れたりしないようにしています。一つの物事に対して受け取り方も違えば選択の仕方も人それぞれ違いますよね。「自分は何を大事に、どう生きるのか」ということが大切だと思うから。
ただ、仕事となるとまた違ってくることもあるので、その時は自分だけの意見じゃなく、周りの意見も聞きながら進んでいければと考えています。
――安倍さんは第一子が生まれてから、約3年間お仕事をセーブして育児に専念されました。アイドルグループのセンターというポジションを確立させた後、いったん第一線から退くことに、葛藤はありませんでしたか?
安倍: それが全くなかったんです。友達や周りの方に聞かれることもあったのですが、自然とそういう流れになったという感じです。子育てをする中で、「自分がこの子たちをちゃんと育てたい、母親として側にいてあげたい」という思いが自然と強くなったので、その選択をしたことは、今でも後悔はありません。
――telling,読者は20代後半から40代の女性が中心で、キャリアや年齢を重ねることに対して迷ったり不安を抱えたりする世代でもありますが、ご自身は「仕事か結婚か」、「キャリアか育児か」について悩んだことはなかったのですね。
安倍: そうですね。キャリアや仕事のことも「どうするの?」と聞かれることもありました。多少は考えましたが悩むことはなかったです。多分状況がそれどころじゃなかったんですよね。子育てや家事をしているとあっという間に毎日が過ぎていき、子どもたちもどんどん成長していく……といった感じで。
子育てをしながら仕事を続けるやり方も考えてみればできたかもしれませんが、きっと中途半端になってしまうと思ったので、その選択はしませんでした。私自身、仕事や育児の両立ができるほど、器用な人間ではないので、今は子どもたちに全力を注ぎ側にいてあげたいなと。その後に、またやりたいこと、やらせていただけることを考えさせていただきたいなと思っています。
「この人と夫婦でよかったって、いつも思っています」
――パートナーの協力もなくてはならないものかと思いますが、夫の山崎育三郎さんと家事や育児の分担はどのようにされていますか?
安倍: うちは分担制にはしていないんです。分担制にすると、当番なのにやっていなかったとか、自分のやり方と違うとイライラしてしまうこともあると思うので、今はお家のことも子どもたちのことも私が中心となってやらせていただいます(笑)。でも主人がいる時はもちろん一緒に取り組みますし、「お願い!」とパスすることもあります。
――「この人と夫婦で良かった」と思ったエピソードがありましたら、ぜひお聞かせください。
安倍: 今朝起きたら、シンクの中がピカピカでした(笑)。夫婦で良かった……といつも思っています!
――それはステキですねっ!(拍手)例えば、育児についての考え方の違いで揉(も)めることはなかったのですか?
安倍: 子どもたちのこともこれから先のことも含めて、私たちは常にたくさん会話をする様にしています。一人で考えているとすべて抱えがちになってしまうので、自分がキャパオーバーしないように主人とシェアして、意見を求めたり、お互いの思いを伝え合ったりしています。たとえ意見が合わなかったとしても、お互いが「そうなんだね。じゃあ合致点はどこかな」と考えるようにしています。
――まずはお互いの意見を聞いたうえで結論を出すことは、他のことでも大切にしたいですね。
安倍: そうですね。私の周りでも、いちいち相手に伝えるのも面倒だからと我慢している人も多くて。それもわかるけれども、そこは諦めずに面倒くさがらずにちゃんと伝え合った方が良いと思います。2人だけの時間から環境や状況が変化する中で、夫婦がうまくやっていくためには伝え合う、会話をすることはとても大切だと思います。
特に産前産後は女性ホルモンのバランスが大きく変化しますし、普段の自分じゃいられなくなることもあります。そんな時こそ、側にいる家族が優しく話を聞いてくれたり共感してくれたりといったことで、少し気持ちが楽になったり気持ちの余裕を持てたりしますからね。
――これからどのように年齢を重ねていきたいですか?
安倍: 子どもがまだ小さいので、まだまだしてあげたい事、一緒にやりたい事が沢山あります。しばらくは子どものため家族のために生きたいという思いが今の私の軸になっています。今は自分のために使える時間がすごく限られているので、この先もうちょっと余裕が生まれてきた時にこれからのことを考えられたらいいですね。
――育児のために仕事を辞めた人の中には「キャリアを諦めなければよかった」や、自分のやりたいことや仕事をして輝いていたりする人が羨ましいという声を聞くこともありますが、安倍さんから何かアドバイスはありますか?
安倍: 育児にもっと喜びを感じて過ごしていただきたいな。そうするためにはどうしたらいいかなと私自身、日々悩んだり反省したりの日々ですが、羨ましく感じてしまうことがあるならば、臆せずやってみて欲しいなとも思います。でもその一方でそれは家族の理解も得られなければ難しいという状況もわかります。
家族や夫婦の形は色々あっていいと思います。人生は一度きりですし、今一度話し合ってみてはいかがでしょうか? 家族が何処(どこ)に向かっているのか、日々何にフォーカスしているのか。私は世の中のママを心から尊敬しています。毎日本当にお疲れ様ですと心の底から伝えたいです! そして同じ時代に生きる母親として味方でありたいとも勝手ながら思っています。そしてあまり我慢しないで下さいねと伝えたいです。
●安倍なつみ(あべ・なつみ)さんのプロフィール
1981年8月10日生まれ、北海道出身。97年に「モーニング娘。」のメンバーに選ばれ、翌年にシングル「モーニングコーヒー」でメジャーデビュー。「なっち」の愛称で人気を博す。CMやテレビドラマ出演などでソロ活動を開始し、2004年1月に「モーニング娘。」を卒業。15年に俳優の山崎育三郎さんと結婚し、現在は3人の子育てに奮闘中。「祝祭音楽劇トゥーランドット」「三文オペラ」など数々のミュージカルや舞台でも活躍。
監督: カル・ブランカー
声の出演:潘めぐみ、小市真琴、井澤詩織、矢作紗友里、石上静香、松田颯水、小堀幸、安倍なつみ、魚建、日野聡、中島沙樹、森川智之、諏訪部順一、水田わさび、井上喜久子、仲間由紀恵
-
第13回すみれさん、最愛の母・松原千明さんを亡くし、自身は母に「夫と悲しみを分け
-
第14回【編集長コラム】働く子育て女性、背負うものの重さ
-
第15回【編集長コラム】マミートラック、解消する日は
-
第16回3人の子育てに奮闘中の安倍なつみさん「育児を優先したことに迷いも後悔もな
-
第17回【編集長コラム】仕事・子育て……全部は欲張りですか?