3児の母・神崎恵さんに学ぶ仕事と育児 「コンパスのような生き方をしたい」

人気美容家の神崎恵さんは、22歳、17歳、7歳の3人の息子の母親として、仕事と家庭の両立を目指して奮闘中です。近著『神崎メソッド 自分らしく揺らがない生き方』(講談社)でも、仕事と育児のバランスや、子どもとの向き合い方について自身の経験を率直に記しています。日々、悩み考えながらも、片方は地に足をつけて、もう片方は自由でいる“コンパス”のような生き方を目指しているという神崎さん。仕事と家庭のバランスの取り方などについて聞きました。
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「母はこうあるべき」という圧

――多忙な中で、仕事と家庭のバランスをどう取っているのか、教えてください。

神崎恵さん(以下、神崎): 両立は大変ですよね。女性が子育てをしながら仕事をすることは、まだまだ難しいと感じています。三男が今年、小学校に入学したのですが、まず学童保育に入れるかどうかがこんなにも大変なのだと、思い知らされました。

私は「両立している風に見せる」のが上手なだけなんです。いつも「何をするか、何を捨てるか」の二つを考えています。時間は有限で、全部を完璧にはこなせません。そのため、今日しなくていいことは、どんどん後回しにしています。無理が積み重なるとイライラしてしまいますよね? なので、なるべく苦しさは溜め込まないようにしています。

――インスタグラムで、美味しそうな料理の写真を投稿されているのが印象的です。

神崎: 日々の料理の写真をSNSに投稿していると、「これだけ仕事をしているのに、食事を作っていてエライですね」と言われることがあります。ここにはいろいろな思いが混じり合っているんです。

正直、「仕事をしているから、家のことをやってない」と思われるのが嫌という意地もあるかもしれません。もしかしたら、子どもたちに寂しい思いさせているかもしれないと考える中で、美味しいご飯を作ることで、バランスをとったり、愛情表現をしていたりする面もあります。

いま22歳となった長男が幼稚園に通っていた時、こんなことがありました。「私は仕事しなくても大丈夫だけど、仕事しなくちゃいけないのは大変ね」ってママ同士の会話で言われたことがあって。今では当時より女性が働くことが随分と一般的になりましたが、それでも今も「お母さんはこうあるべき」という「圧」が厳しいなと感じることも。

たまたま見つけた「抜き方」

――その一方で、力の抜き方も大切にしているそうですね。

神崎: 力の抜き方は、考えに考えた末に編み出したわけではなく、「(石や木々を触っているうちに)うっかり火を起こせちゃった」っていうのと似ているかもしれません。例えば、料理をしている際、ひき肉の量が多すぎちゃったから、余分な練り物を冷凍したら、忙しい日の料理がすごく楽になったという感じです。

たまたまやって見つけたことで、楽だったことを日々の中に取り入れているだけです。私は、休みの日に1週間分の作り置きをするのがなかなかできなくて。毎日ご飯を作るのであれば、多めに作って、保存しちゃえばいいよねという感じです。

――「抜くこと」について、罪悪感がくっついてくることはないですか?

神崎: ないです!アレンジ力はあるので、例えば料理でも、ハンバーグだったらトマトソース、デミグラス、和風など毎回ソースの味を変えるなど、子どもたちが飽きないように変化をつけるなど工夫をしています。

楽しようと思うと何かを省くことを考えがちですが、大事なことは気持ちの余裕を作ること。料理を作る元気がないときは、デリバリーに頼ることもありますし、麺だけ茹でて天ぷらを頼むことも。無理はし過ぎないように「抜く」ようにしています。

――子育てにおいて、心がけていることは?

神崎: 子育てにおいて、イライラするのは当たり前だと思っています。だからこそ、子どもが何かしたら、怒る前に「なんでそんなことをしたんだろう」と理由を考えるようにしています。そして、自分だったらどういう時にそう行動するのか、と照らし合わせるようにしています。そうすると、イライラすることも減るように思います。

片方は地に足を、もう片方は自由で

――これまで、そして今も多忙な中で、目指している理想の生き方は「コンパス」と著書の中で書かれていますが、改めてその意味について教えてください。

神崎: 片脚はしっかり地面に刺さり、もう片脚は自由に線を描くイメージを考えた時、コンパスが頭の中に浮かびました。自分の軸を持っていたい。気を抜くと流されてしまう勢いのある波もいっぱいあります。

コロナ禍で、改めて自分の軸を持つ大切さに気付かされました。「人に会わなくなって意外と楽になった」という声も多く聞きました。それって、これまではそれほど行きたくもない食事に行っていたり、会いたくない人に会っていたりして、気持ちを擦り減らしていたということなのかもしれないと。「なんとなく」の判断で、貴重な時間や体力をすり減らさないためにも、自分の軸はしっかりと持っていたいと思いました。

その一方で、すべてが予定調和の人生はつまらない。時には流れに身を任せて、違う景色や匂い、味を楽しむなど、面白みも必要だと思っています。

片方は地に、もう片方は自由でいることは、私の中でとても大事にしていることです。

――10代の頃に芸能界で活動された時、「自分にしかもてない武器を手に入れようと誓った」と著書で語っていますが、今の「武器」は何だと思われますか。

神崎: 美容へのゆるがない愛情がある。その上で仕事やプライベートで経験してきたことや失敗してきたことをもお伝えできることが自分の強みだと思っています。
美容を自分の仕事として、自信を持ってお伝えできるようになったのは、年齢を積み重ねるごとに得られた経験やスキルの結果だと思っています。

「ひとりで生きていける力」を培って

――20代、30代の女性は、仕事か結婚かを突きつけられたり、どちらも選べないと感じたり、一歩踏み出す勇気が出ずに悩んだりする年齢です。彼女たちへのメッセージをお願いします。

神崎: そうですね、無理やり何かを決断したり、捨てたりする必要はないと思います。いずれにしろ、生きるための術は持っておいた方がいい。自分ひとりでも生きていける力はしっかりと培っていくことが大切だと感じます。そうすることで、視野が広がり、気持ちにも余裕が出てきます。

もちろん恋愛も良い、でも誰かに頼ったり、結婚・恋愛に全部をゆだねたりするのは、怖いことなのかもと思います。

幸せって一時的じゃなくて、それを維持しなきゃいけない、自分が力強く生きていくためのパワーを保たないといけない。そう考えると、やはり仕事って大事ですよね。そもそも、仕事と結婚は同じ種類のものではなく、比べられないのかもしれません。
仕事か結婚かという二択でとらわれるのではなく、生きる上でのベースとなる経済力をつけることが必要なのだと思います。お金を単に何かを買うためのものと思わず、自分の可能性だったり、選択の幅だったり、力だと思い、自ら稼げるようになっていくことが大事なのではないでしょうか。

【画像】神崎恵さん撮り下ろし写真 神崎恵さんが語る恋愛・結婚・離婚「痛い思いをすることも大事」

●神崎恵さんのプロフィール

美容家。1975年神奈川県生まれ。美容誌をはじめ、多くの雑誌で連載を持つ他、企業のタイアップやイベントの出演も多数。また、コスメブランドのアドバイザー、アパレルブランドとの商品開発など活動の幅を広げている。3人の息子をもつ母として、日々の暮らしや美容情報満載のInstagramはフォロワー数60万人超え。著書は、「老けない美容、老ける美容」(講談社)、「服が似合う顔が欲しい」(大和書房)など多数。著書累計発行部数は153万部を突破。

『神崎メソッド 自分らしく揺らがない生き方』

出版社:講談社
著者:神崎恵
発売日 :2022年07月30日
定価:1760円

同志社大学文学部英文学科卒業。自動車メーカで生産管理、アパレルメーカーで店舗マネジメントを経験後、2015年にライターに転身。現在、週刊誌やウェブメディアなどで取材・執筆中。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。