跳び箱やゴルフクラブがおしゃれなインテリアに変身! 驚きの発想で循環を目指す、モノファクトリー
●わたしと未来のつなぎ方 03
廃棄物のイメージを覆す、魅惑のショールーム
子どものころ、まるで宝探しのように、公園や街の片隅でガラクタを見つけては、うっとり眺めた記憶はないだろうか。大人になったいまでも、用途不明のカラフルなプラスチックのかけらや奇妙な形の金属片を見かけると、なんだかワクワクしたりするものだ。
廃棄物を再利用して商品開発、製作、販売を行う「モノファクトリー」のショールームは、まさにそんな魅力的なパーツの宝庫。企業や団体、行政、家庭が処分した廃品の数々をモノファクトリーが仕入れ、大小さまざまなマテリアルとして見事に蘇り、展示販売されている。室内でまず目を引くのが、色とりどりの極細ケーブルの山。これはいったい?
「これらは実は、LANケーブルの内部導線の被覆膜なんです。見た目もカラフルで扱いやすく、デザイナーやアーティストの方々にも人気の素材です」
教えてくれたのは、モノファクトリーでマーケティングを担当している河西桃子さん。そもそもこのモノファクトリーとはどんな会社なのか、聞いてみた。
商品開発のほか、民間企業へのコンサルティングも
「モノファクトリーは、循環を前提とする社会を目指し、1990年に誕生しました。もともと群馬県前橋市に工場があるナカダイという廃棄物処理業者の関連会社で、これらの商品はすべて、ナカダイに運び込まれた廃棄物の中から、面白く活用できそうなものを私たちが探し出して買い取り、新たなマテリアルへと生まれ変わらせたものです」
このほか、リサイクルに関する情報提供やコンサルティングなども行っているそう。
「リサイクルへの取り組みを強化したい民間企業から相談を受けることも多く、自社製品の回収スキームを構築したり、専門の業者を紹介したりといったかたちで関わらせていただいています」
例えば、ルミネとの関わりもそのひとつ。「インフォメーションスタッフの制服をリサイクルしたい」との相談に、モノファクトリーはサーマルリサイクルを提案。廃棄物を焼却する際に発生する熱エネルギーを回収して利用する仕組みで、現在、制服を処分したときに出る熱エネルギーは、製紙メーカーのボイラーの熱源に活用されている。
産業廃棄物業が抱える矛盾を解決するために
モノファクトリーという会社が生まれた背景には、産業廃棄物業界ならではの葛藤があった、と河西さん。
「産業廃棄物業界は、ゴミを集めれば集まるほど儲かる仕組みになっています。環境に配慮してリサイクルを推進し、廃棄物を減らそうと働きかけているにもかかわらず、本当に廃棄物が減ったら事業が立ち行かなくなるという矛盾を抱えているんです。その葛藤から、ゴミを処理するだけでなく、素材を生産し、循環型の社会をつくっていくことをビジョンに掲げ、この事業をスタートしました」
まずは、廃棄物のもつネガティブなイメージを一掃するべく、前述のような楽しいマテリアルを生産。2011年に東京デザイナーズウィークに出展したのをきっかけに、「新しくて面白い素材を提供する会社」として、建築デザイン業界に広く知られるように。工場見学やワークショップも人気があり、以前は夏休みの自由研究のためにやってくる家族連れが多かったが、世の中の流れを受けて、近年は民間企業の社員研修に活用されるケースが増加。
「捨てられたものがどのようにリサイクルされていくのかを実際に学ぶと、みなさん、意識が変わるようです。『今日からゴミはもっとしっかり分別して捨てます』などとおっしゃる方も多く、学んだことを日常生活に反映していただくのは私たちとしても本意なのでうれしいですね」
リサイクルを超え、アップサイクルを提案
2017年からは建築設計事務所「オープン・エー」と協働し、新たなプロジェクト「THROWBACK」をスタート。これは廃棄物をリサイクルするという従来の概念ではなく、「面白い素材を提供したいのに捨てるしか手段がない人」と「新しい素材を使いたいけれど、どこに行けば見つかるのかわからない人」とをつなぐ、アップサイクルのプラットフォーム。跳び箱で作られたテーブルとスツール、ゴルフのパターで作られたコートハンガーなどスタイリッシュなアイテム揃いで、伊勢丹新宿店のイベントで什器として使用されたことでも注目された。
「廃棄物の面白さのひとつが、ストーリーがついてくるところ。例えば跳び箱なら、どこどこの小学校が少子化で廃校になって、といったエピソードが必ずついてくる。そんな会話からビジネスの場が和やかになるなど、新たな価値が生まれることもあります」
「もったいない」からではなく、純粋に「楽しい」「カッコいい」から使いたくなる。そんなアップサイクルなアイテムが私たちの周りに増えていけば、きっとハッピーな循環型社会が生まれるはずだ。最後に、私たち一人ひとりが今できることについて、河西さんにアドバイスをお願いした。
「自治体のルールに従って、ゴミをきちんと分別することと、できるだけ環境に優しいものを選ぶこと。モノを価格で選ぶのではなく、ときには違う視点から選ぶことも大事だと思います」
モノファクトリー
“いま”という時代を生きる女性の思いに応えるため
ルミネは持続可能な人々の生き方や社会のあり方に
貢献するプロジェクトを応援しています。
Text: Kaori Shimura Edit: Sayuri Kobayashi
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