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わたしと未来のつなぎ方

おいしくて、持続可能。リンゴのお酒「サイダー」から始まる、カネシゲ農園の新しい農業

長野県下條村で親子3代、果樹農園を営む「カネシゲ農園」。製品として出荷できない傷もののリンゴから「サイダー」を醸造し、減農薬、有機肥料による安心・安全な果樹栽培を実現するために土作りを研究するなど、未来を見据えた新しい農業に取り組んでいます。そこに込める思いを、3代目の古田康尋さんにうかがいました。

●わたしと未来のつなぎ方 04

リンゴ農家自ら、リンゴのお酒を醸造販売

センスのいい瓶に詰められた、黄金色に輝く液体。ラベルには「ファーマーズクラフトサイダー」の文字が。炭酸ジュースかと思いきや、飲んでみるとなんとリンゴのお酒。しかも、フルーティーでとっても美味しい!

サイダーは王道のふじりんごのみで醸造したフラッグシップモデル「ファーマーズクラフトサイダー」のほか、3代目古田さんのあだ名を冠した「BOB」など、季節ごとに数種類が揃う。飲み比べてみるのも楽しい

こちらは長野県下條村で親子3代にわたり、果樹農園を営んできた「カネシゲ農園」が自社製造しているもの。リンゴのお酒というと日本ではフランス語の「シードル」がよく知られているけれど、英語圏では「サイダー」と呼ばれ、好まれているのだそう。

「シードルがリンゴのみでつくられるのに対し、サイダーはリンゴのほかに副原料として、桃やシナモン、香料などを使用することも。その自由な発想がしっくりきて、うちではサイダーを醸造しています」

そう説明してくれたのは、3代目の古田康尋さん。でも、なぜ、果樹農園がお酒づくりを?

「すべては、父である先代が、農家として果樹の生産だけを行うことに限界を感じ、旬のリンゴの美味しさを通年味わっていただきたいと、リンゴジュースづくりを始めたのがきっかけでした」

 

農園を、時代に沿ったものへと進化させるために

2代目の古田道寛さんはフロンティア精神あふれる人物で、20歳のときにアメリカ・オレゴン州の先進的なリンゴ栽培に興味をもち、単独修行の旅に出た経験も。リンゴジュースを作るにあたり、外部に加工を依頼せず、自ら製造する道を選んだのは、「自分たちで育てたリンゴを、最後まで責任をもってお客さまに届けたい」という誠意から。しかし、その先代が6年前に他界。3代目の古田康尋さんがすべてを引き継ぐこととなった。

3代目の古田さんも先代に似て、チャレンジ精神に満ちたアイデアマン。農園を今の時代にふさわしいものへと進化させていくために、2つの大きな改革を行った。まずは、減農薬、有機肥料による安心・安全な果樹栽培を目指し、土作りから見直すこと。そしてもうひとつが、新たにサイダーの製造を始めることだった。

 

農作物を強くする土作りが、循環型農業には不可欠

「土作りは、いわば原点回帰。減農薬、有機肥料というと手間がかかるイメージがあるかもしれませんが、突き詰めていくと実は効率のよい農法なんです」

もともと農薬が広く出回るようになったきっかけは、作物の品種改良に由来する。現代人が食べやすく、育てやすいように品種改良された農作物が普及して以降、農作物の耐病性、耐虫性が下がり、農薬に頼ることとなったのだ。

「この流れを元に戻すには、農作物を強くするための土作りが重要です。そうすれば、農薬を散布する回数を減らすことができますから。父が亡くなった翌年から土の研究を始め、試行錯誤しながらやっていますが、まだまだ難しいですね」

そう謙遜する古田さんだが、2018年に徳島で行われたコンテスト「オーガニックエコフェスタ2018」のリンゴ部門で最優秀賞を受賞するなど、日々の努力は着実に実を結んでいる。

カネシゲ農園があるのは長野県の最南端、南信州の下條村。南アルプスを望み、天竜川が流れる豊かな土地で育まれたリンゴは、まさに大自然の恵み。栽培品種はふじ

製品として出荷できない傷物に、付加価値をつける

もうひとつの改革、サイダーづくりは、リンゴジュースの販売が頭打ちになっているのを感じたのが理由。自家栽培、自家搾りゆえ、もともとロットが少なく、販路拡大の難しさを感じていたと語る。

「収穫するリンゴのうち、製品として出荷できるのは5割か6割。残りは傷ものとして外れてしまう。それらをリンゴジュースに加工して収益と環境の両面に役立てるだけでなく、自分たちが楽しく取り組めるやり方で付加価値をつけて販売できないかと考え、出合ったのがサイダーでした」

さっそく、シードルを醸造している近所のワイナリーに足を運び、相談したところ、意気投合。一年足らずでオリジナルのサイダーの醸造、販売にこぎつけた。現在は定番から限定品まで、数種のサイダーを自社サイトで販売するほか、「LUMINE AGRI MARCHE」のオンラインサイトでも取り扱われている。

サイダーもリンゴジュースもすべて、農園内の加工場で製造されている。こちらは、アルコールの度数を計測しているところ

農業を通して、人と人とをつなぐ役割を果たす

2年ほど前からは未来を見据え、100年先まで続く新しい農業を目指すためのコンセプト「RE:AGRI(リアグリ)」を提示。傷ものに付加価値をつけて再生させる「RE:USE(リユース)」、不食部分を堆肥に変えて大地へと返す「RE:CYCLE(リサイクル)」、地域の農産物をリスペクトし、新たな魅力を発信する「RE:PRODUCT(リプロダクト)」の3つを軸に、さまざまなプロジェクトに着手している。

「リサイクルに関しては、地元のキノコ農家が廃棄処分する菌床などを堆肥の原料にしています。もちろん、うちのリンゴの搾りかすも同様です。リプロダクトの面で取り組んでいるのは、村おこし。下條村には景観をはじめ魅力がたくさんあるのに、そこに価値を乗せられていない。まずは道の駅でイベントを開催し、村人に地元のファンになってもらうことから始めています」

このほか、引退した農家から譲り受けた畑を活用し、農業体験ができるキャンプ場をオープンすることも計画中。今後も農作物を生産するだけでなく、農業を通して人と人とをつなぐ役割を果たしていきたい、と古田さん。

「父から受け継いだものでいちばん大きかったのが、人を思いやる気持ち。人の大切さ、つながりの豊かさを、今7歳の息子にも伝えていきたい。それが僕の夢であり、目標です」

左が3代目の古田康尋さん。スタッフや地域の仲間たちと協働しながら、新しい農業、そして新しい下條村のあり方を模索している

Text: Kaori Shimura  Edit: Sayuri Kobayashi

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