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わたしと未来のつなぎ方

日本家屋を着る? 和紙でできたニット!? アンダーソン アンダーソンの服が気持ちいい理由

和紙から生まれたオリジナルの素材で作られるアンダーウエアやルームウエアで人気のブランド「アンダーソン アンダーソン」。その着心地のよさの秘密を探るべく、チーフデザイナーの中西孝史さんに直撃。すると、長いスパンと広い視野でモノづくりを捉える、独自の姿勢が浮かび上がってきました。

●わたしと未来のつなぎ方 01

開発に15年以上かかった和紙素材

「肌に触れる部分は99.9%が和紙」という画期的なコンセプトのもと、2019年秋に登場したブランド「アンダーソン アンダーソン(UNDERSON UNDERSON)」。和紙から作られるオリジナルの繊維「WASHIFABRIC」から生まれたアンダーウエアやルームウエアは、シンプルで着やすく、何より機能面で優れているのが特徴だ。これまでにないサラッとした触感や、洗濯を重ねていくほどにソフトな風合いに変化していくさまが心地よく、そんな魅力が口コミを中心に広まり、リピーターも続出している。

手がけているのは、「スナイデル」や「ジェラート ピケ」などのブランドを有するアパレルメーカー、マッシュスタイルラボ。まずはブランド誕生の経緯を、同社企画部のチーフデザイナー、中西孝史さんに聞いた。

チーフデザイナーの中西孝史さん。かつてモードの世界も経験したが、現在はアップサイクルなモノづくりに興味があるそう

「2018年の秋ごろ、ITOI生活文化研究所の糸井徹社長が、15年以上かけて開発していた独自の和紙繊維WASHIFABRICが完成したということで、一緒に何かできないかと提案にいらしたのがきっかけでした。和紙というとパリパリと堅いイメージがありますが、WASHIFABRICは驚くことに、伸縮性がある。しかも、吸水・速乾性、消臭・抗菌性などもきわめて高く、環境にも優しい。いいことづくめで、これは新たなブランドを立ち上げて世界に広めていくべきだと判断しました」

WASHIFABRICの原料は、環境に配慮し、きちんと管理されたカナダの森林で育った針葉樹。それを日本で漉き、和紙に仕立てていく。その後は1.2mmの細さにカットし、裂いて撚って糸にしていくのだが、その糸をさらにポリエステル糸に巻きつけることで伸縮性を実現。編んでニットにしたり、織って布帛にしたりと、さまざまな肌触りや表情のアイテムを生み出すことができる。

左がカットした和紙糸。真ん中がポリエステルの糸に巻きつけながら撚りをかけた伸縮性の高い糸。右がその糸をローゲージのニットを編むためにリリヤーン加工した糸

障子や襖の機能を服に

また、和紙はもともと「多孔質構造」といって、無数の細かい穴が開いている状態にある。そのため、和紙繊維も多孔質構造ならではのたくさんのメリットをもつ。まず、吸水・速乾性はコットンの約5~8倍。速乾性も高く、湿度調節機能に優れている。消臭・抗菌性があり、かつ、静電気や摩擦熱が発生しにくい。UVカット率も98%前後と優秀だ。

「昔の日本家屋の障子や襖などに調湿性や吸水・速乾性の高い和紙が用いられていたのは、暑い夏を涼しく、寒い冬を暖かく過ごすための工夫でした。WASHIFABRICはそんな昔ながらの日本人の知恵を、現代に応用したもの。身につけることで、肌を快適な状態に保ってくれるのです」

商品はアンダーウエア、ルームウエアのほか、外に着ていけるシャツ、ニットなどもある

ただ、和紙はもともとデリケートで取り扱いが難しい素材。しかも、和紙を細くカットし、撚ってポリエステル糸に巻きつけていく特許技術を支えるのは、愛知県の工場で管理されている世界でたった一台の撚糸機。なかなか大量生産できない状態にある。まず販売ルートをニュウマン新宿内の第一号店とオンラインに限定したのも、そんな希少性ゆえのこと。

 

新しい和紙素材も開発中

目下のところ、生産量を上げるための環境づくりや機械増設に向けて取り組んでいるが、そのひとつに、肌にも環境にも優しい新たな和紙素材の開発が挙げられる。原料は、東南アジア原産の「アバカ」というマニラ麻の一種。多年草で約3年周期で収穫でき、一度生えれば脇芽も出るので安定して生育することができる。

「WASHIFABRICの原料も環境に配慮した木材ですが、新たに開発する素材も、やはりエコロジカルでサステナブルなものでなくてはならないと考えています。私たちは目先の利益を追うのではなく、このブランドをじっくり育てていきたいと思っているんです。ファッションのトレンドとはある意味で対極に位置する、エビデンスの取れたモノづくりを目指しています」

天然の素材でありながら、吸水・速乾性、消臭・抗菌などの機能性に富んでいるのが魅力。また、これだけこだわっていながら、ブラジャーで3,000円前後、Tシャツで8,000円前後とリーズナブルなのもポイント。ギフトにも人気

環境だけでなく地場産業のためにも

そんなアンダーソン アンダーソンの姿勢は、モノづくりの行程から販売まで、あらゆる面に表れている。例えば、繊維の滑りをよくするために一般的に使用される、シリコン剤は不使用。和紙素材の白色漂白には「水素さらし」という技法を採用し、最終的に無害な水と酸素に分解されるよう配慮するほか、一部の製品には天然染料によるボタニカルダイを施すなどの工夫も。また、店舗で用いられるショッパーやシールラベルなどの紙類はすべて、FSC認証を得たものをはじめ環境に優しい原料からできたものを使用するなど、徹底したこだわりようだ。

「デザインもできるだけシンプルかつ普遍的なものに削ぎ落とし、メンズとレディースとでパターンを分け、アイテムによっては6サイズを用意しました。パーツごとに、その仕立てが得意な全国各地の昔ながらの工場にオーダーしています。正直、効率は悪いのですが(笑)、流行に左右されることなく、高品質な定番の素材を持続的に生産していきたい。そうすることで、環境に優しいモノづくりを継続していくのはもちろん、地方の地場産業を少しでも盛り上げ、日本の優れた技術力を今後も維持していければと思っています」

Text: Kaori Shimura Photograph: Ittetsu Matsuoka Edit: Sayuri Kobayashi

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