サステナブルバトン

「ファストファッションは悪者? そうじゃないと知って、見える世界が広がった」エシカルファッションプランナー・鎌田安里紗さん

サステナブル・エシカル業界で活躍する人にバトンをつなぐ「サステナブルバトン」。第1回の一般社団法人エシカル協会代表理事の末吉里花さんからバトンがわたったのは、エシカルファッションプランナーの鎌田安里紗さん。鎌田さんがエシカルに目覚めたのは、なんと高校生の頃。今やエシカルファッション業界を代表する存在にもなった鎌田さんに原点をうかがいました。

●サステナブルバトン02

「エシカル」(ethical)とは、英語で「倫理的」を意味する言葉。人と自然と動物がちょうど良いあんばいで共存していける世界を目指す「エシカル」なライフスタイルに、近年あらためて注目が集まっています。

「サステナブルバトン」では、サステナブル・エシカル業界で活躍する人にバトンをつなぎインタビューしていきます。第2回はエシカルファッションプランナーの鎌田安里紗さんです。現在は「エシカルファッション」のアイコンとして多くの若者の支持を集める鎌田さんですが、かつてはギャル雑誌でモデルとして活躍する"コテコテのギャル"でした。鎌田さんがエシカルに目覚めた裏には、どんなストーリーがあったのでしょうか。

タネから綿を育てて服をつくるプロジェクト「服のたね」メンバーで育てたコットン。紡績工場にて

前回のエシカル協会代表の末吉里花さんから鎌田安里紗さんへのメッセージ

鎌田さんといえば、日本における「エシカル」や「フェアトレード」のイメージをすごくポジティブなものに変えてくれた人。

なんとなく「土くさくてとっつきにくい」という印象のあったエシカルを、当時ギャルモデルの鎌田さんが彼女自身の視点でおしゃれに取り入れて、それを若い人たちに伝えてくれました。発信のやり方も、オンラインサロン的なコミュニティを立ち上げたりと、現代的でとてもユニークです。

もしエシカル業界の「功労賞」ができたら、一番に鎌田さんに差し上げたいですね。仲間として、心強い存在です!

タネから綿を育てて服をつくるプロジェクト「服のたね」メンバーで育てたコットン。紡績工場にて

たくさんの洋服は、どこからやって来る?

――「元ギャルモデル」という経歴は、「エシカル」のイメージからはギャップを感じます。どうしてエシカルに関心を持たれたのですか。

鎌田安里紗さん(以下、鎌田): 高校進学を理由に徳島から上京した際に、もともと大好きだったファッションにも関われるようにと渋谷109のショップ店員としてアルバイトを始めました。そのバイトの休憩中にスカウトを受けて、ギャル雑誌のモデルとしても働くように。

お店にはシーズンごとに新作の服がたくさん入ってくるし、雑誌の撮影でも毎回違う服をとっかえひっかえ。まさに、「大量の服に囲まれる」という生活でした。

――服好きの鎌田さんにとって、理想的な環境だったのでは。

鎌田: もちろん、仕事は充実していて楽しかったです。ただ、あまりにもたくさんの服が日々入れ替わっていくので、だんだん「この服たちは、一体どこからやって来たんだろう?」と疑問を持つようになりました。

ところが不思議なことに、いくら調べても答えが見つからないんです。

服を買うときにお客さんが気にするのは、「デザイン」だったり「コーディネート」だったり「値段」ですよね。そういうことは私たち販売員も詳しいし、きちんと説明できます。ですが、その服の見えない部分、「どうやって作られたのか」はわからない。たとえば生地の原料がどこで生産されて、縫製は誰がどうやって作ったのか。

――なぜ、情報が得られないのでしょう。

鎌田: わかりようがないし、わからなくても服は作れるからです。糸や生地から服づくりを行うブランドもありますが、生地を購入し、そこから服をつくることも一般的です。場合によっては、「完成した服」の状態で購入し、ブランドタグをつけて販売することもあります。こんな状況で生地の生産背景を知るのは、とても難しいのです。

ショップにいる販売員さんでも、自社の服がどうやって作られたかと詳しく知ることは難しい状況にあると思います。

ピープルツリーの生産者、バングラデシュのタナパラ・スワローズへ。コットン生地の手織りの初挑戦

フェアトレードを知った衝撃をファンに共有、共感の声

――そんな時に「エシカルファッション」と出会ったのですね。

鎌田: インターネットでたまたま知ったのが、フェアトレードブランド「ピープルツリー」です。私がずっと知りたかった情報が、そこではすべて公開されていました。

というのも、フェアトレードでは「生産者にフォーカス」した作り方が選ばれるからです。たとえば「この生産者は伝統的な刺繍の技法を持っているから、それをいかした服のデザインにしよう」というように。デザインありきで生地を選ぶのではなく、生産者ありきで服を作るんです。

こんなファッションの世界があるなんて! 私はその時まで、フェアトレードはチョコやコーヒーに対するもので、洋服にも当てはまるとは思っていませんでした。このことを当時やっていた個人ブログにつづりました。これが高校2年生の時だったと思います。

年に1、2回のペースで開催している、ものづくりの現場を尋ねる「めぐる旅」で訪ねたカンボジアのオーガニックコットンの畑にて

――ギャルモデルとして活動されていた頃ですよね。周囲はどんな反応を?

鎌田: 意外にも、記事に対して大きな反響があったんです。ブログの読者は、ギャル雑誌で私を見てファンになってくれた方が中心でした。

「私もずっと気になっていたけど、どう学べばいいかわからなかった」など、たくさんの好意的なコメントが付きました。記事を書く前は「フェアトレードなんてきっと誰も興味ないだろうな」と思っていましたが、本当はみんなも知りたいのだと聞いて安心しました。その後も情報発信を続けました。

この経験は今の私の活動に生きています。自分の体験や考えをほかの人と共有し、予想外の反応を得ることで、次のアクションにつながるとわかりました。

2015年には旅行会社と連携してオリジナルのスタディ・ツアー「めぐる旅」を企画し、途上国にある衣服の生産現場を見学に行きました。また2019年からはオンラインコミュニティ「Little Life Lab」を立ち上げて、現在100名弱のメンバーたちと衣食住やものづくりについて話し合う場を設けています。

2020年よりスタートした一般社団法人unisteps(ユニステップス)で開催するエシカルファッションのオンライン講座

エシカルとは「自分の判断基準」をクリアにすること

――いわゆる「ファストファッション」と呼ばれる、低コスト・短いサイクルで流行の服を大量生産する業態があります。エシカルな視点で見ると、ファストファッションに対して否定的になったりはしませんか。

鎌田: ちょうど私が販売員として働いていた時に、海外からファストファッションのブランドが入ってきて、日本でもみるみる浸透していきました。実は、フェアトレードを知ったばかりの頃は「フェアトレードが正義で、それ以外は悪だ!」なんて考えていたんですよね。

だけど、決してそうじゃない。それぞれの立場に、それぞれの正義や美学があるんですよね。

エシカルについて勉強しながら、私自身もファッション業界の一員として活動を続けるなかで、いろいろなことが見えてきました。エシカルでもファストファッションでも、渋谷109の販売スタッフも、みんな真剣に目の前の仕事をまっとうしています。それぞれ見ている景色が違うだけで、悪いことをしようと思ってしている人はひとりもいません。ただし、その結果として生産背景での問題や余剰在庫など、さまざまな課題が生まれていることは事実です。それぞれの立場から、自分の仕事の先で何が起きているのか、ということに目を向ける必要があります。

スタディ・ツアー「めぐる旅」の参加者と

――それぞれの正義があるとしたら、エシカルファッションを選ぶことの良さは何だと思われますか。

鎌田: エシカルファッションとは、服そのものを指すこともあれば、その人が服と向き合う「姿勢」を指すこともあります。たとえばファストファッションの服でも、長年同じものを大事に着たら、それはエシカルです。

だからエシカルというのは「視点が増えること」だと思っています。自分はどんな基準で服を選ぶのか。デザイン、価格、素材、縫製、あるいは生産背景や環境へのインパクトを重視するのか。

すべてを満たすものは存在しないので、「自分が絶対に譲れないポイントは何なのか」をつねに意識していないと、納得いく判断はできません。エシカルな暮らしを取り入れるには、自分について考え続けることが不可欠。いわば「思考のトレーニング」ですね。そしてその繰り返しは、必ず自分自身に返ってきます。

●鎌田安里紗(かまだ・ありさ)さんのプロフィール
1992年、徳島県生まれ。高校2年生の時にギャル雑誌『Ranzuki』でモデルデビュー。2011年、モデル活動を続けながら慶應義塾大学総合政策学部に現役合格。現在は同校の博士課程に在籍。「エシカルファッションプランナー」としてフェアトレード製品の制作やスタディ・ツアーの企画など、情報発信と啓蒙活動を行う。2020年2月からは一般社団法人「unisteps」の共同代表理事を務める。
LITTLE LIFE LAB
unisteps

ことりと暮らすフリーランスライター。米シアトルの新聞社を経て、現在は東京を拠点に活動中。お坊さんやお茶人をよく追いかけています。1984年生まれ、栃木出身
わたしと未来のつなぎ方