いよいよ香水の量り売りをスタート。持続可能な社会を目指すフレグランスブランド「オゥパラディ」の現在
●わたしと未来のつなぎ方 13
安全な香料とこだわりの素材から生まれる、柔らかな香り
「よかったらどうぞ、お試しください」とオゥパラディのスタッフの女性がにこやかに手渡してくれたムエットを嗅いでみると、ふんわりと心地よい香り。香りに対する日本人の繊細な感性を強く意識してつくられたブランドとあって、どの香りも柔らかく、ナチュラルな印象で、男女を問わずファンが多いのも頷(うなず)ける。自分の好みや個性にあわせて、2種類の香りを重ね付けして楽しめるのもうれしい。
天然香料はすべて、産地がわかるものを採用。奥行きのある天然香料と、天然香料では存在しない香りを表現した合成香料のいずれも、IFRA(国際香粧品香料協会)で使用を認められている安全なものばかり。香料以外の素材も、サトウキビを原料とした醸造アルコール、カリテフランス(フランスの有機認証機関)認定のオーガニックのアルガンオイルなど、できるだけナチュラルなものにこだわっている。
リサイクル可能な香水の実現を目指して
そんなふうにユーザーフレンドリーなオゥパラディが、もともと地球環境への配慮から誕生したブランドであることをご存じだろうか。2008年にオゥパラディを立ち上げたエストインターナショナル代表、大塚恵さんは、ブランド誕生の秘話をこう語る。
「私たちは1996年から香水専門店を運営し、当時は主に海外ブランドの香水を扱っていたのですが、それらの香水のボトルのほとんどがカシメ式、つまりスプレー部分が外れないタイプで、そのことにずっと疑念を抱いていました。スプレーを外せないということはボトルのリサイクルが難しいということで、これは問題ではないのかと。環境のため、また香水の文化を守るためにも、繰り返し使えてリサイクルもできる香水を作りたいと考えるようになりました」
リサイクル可能な香水の実現を目指し、海外の展示会などを見て回った大塚さんは、取り外しが可能なスクリュー式のスプレーを発見。しかし、スクリュー式にはカシメ式と違い、ノズルが詰まりやすいというリスクがあった。その懸念をクリアしたスクリュー式スプレーを求めて再び世界を飛び回り、ようやく現在のスプレーにたどり着いたという。
「ボトルは国内のガラス工場に製造を依頼。不要になったボトルは店舗で回収し、ガラス工場に戻してリサイクル。再び、ボトルを作っていただいています。およそ2カ月に一度、平均して100kg前後のボトルを工場に送るのですが、過去には1トンも工場に持ち込んだことがあるんです」と説明してくれたのは、営業部長の鈴木悠公さん。
「私たちのボトルの色は遮光のためブラウンですが、ガラスをリサイクルするには、着色ボトル、つまり、ガラスに着色したものだと難しい。そのため、透明のボトルにブラウンの塗装を施すという方法を取っています。そのやり方なら、透明のボトルとして再利用できるんです。塗装にもリサイクルにもコストはかかりますが、地球環境を守るために必要なコストだと考えています」(鈴木さん)
香水の量り売りのマシンに、なんとワインサーバーを応用
そんなオゥパラディがこのたび、満を持してスタートしたのが、香水の量り売りという新たなスタイル。今年2月にリニューアルオープンしたオゥパラディ ルミネ町田店に初めて導入され、注目を浴びている。
もともと、オゥパラディでは15ml、30mlのスプレータイプと60mlのレフィル・スポイトタイプの3サイズを販売。15ml、30mlの香水を使い終わっても60mlのレフィルから中身を移せば、ボトルを繰り返し使えるというエコなスタイルを、ブランド誕生時から提案し続けてきた。今回の香水の量り売りは、その当初からの目標だったと大塚さんは言う。「化粧品の分割販売についての公文書に沿って、安全に量り売りができるシステムをやっと導入することができました」
念願の「香水サーバー」はというと、一見、ワインサーバーのよう。「実はこちらは、ワインの量り売り用のサーバーを応用したものなんです」と鈴木さん。香水の品質をきちんと保持でき、ボタンひとつで15ml、30ml、60mlの香水をボトルに注ぐことができるという優れものだ。
「なかには『店内にワインバーを作ったんですか?』と勘違いされるお客様も。この珍しいマシンをきっかけに、日本ではまだまだ普及していない香水の量り売りというシステムや、ひいてはサステナビリティに対して、興味をもっていただけたらうれしいですね」(鈴木さん)
未来のために何ができるか、が今後の重要なテーマ
今後はできるだけ多くの店舗で「香水サーバー」を展開していくとともに、脱プラスチックにも取り組んでいく、と代表の大塚さん。最後に、サステナブルを目指して挑む背景にある思いを語ってくれた。
「私は今年で65歳になったのですが、子どもの頃は都市部でもまだ自然が豊かで、これまで争いも飢えも体験することなく平和な時代を生きてくることができました。これは当たり前のことではなく、奇跡のようなことだと感じています。だからこそ、未来に対する責任を感じずにはいられません。グレタ・トゥーンベリさんをはじめとする若者たちの声は、高度成長期を生きてきた私たちに向けられているように思っています。未来のために何ができるか。これは私の個人的な思いであると同時に、今後のオゥパラディの重要なテーマのひとつなのです」
オゥパラディ
“いま”という時代を生きる女性の思いに応えるため
ルミネは持続可能な人々の生き方や社会のあり方に
貢献するプロジェクトを応援しています。
Text: Kaori Shimura Photograph: Ittetsu Matsuoka Edit: Sayuri Kobayashi
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