最高にマイペースな結婚をしよう!

真船佳奈#14 パートナーが落ち込んでいるときにできる唯一のこと(後編)

telling,の人気企画「ぼっち旅」シリーズの作者で現役テレビ局員の真船佳奈さんの結婚式までの道のりを、ご本人によるリアルタイムドキュメンタリー形式で追っていく連載「最高にマイペースな結婚をしよう!」。 コロナによる変化の中、真船さんに芽生えたクリエーターとしての悩みは果たして、解決したのでしょうか?そして前編でゲームばかりしていたパートナーとの関係や距離感の行方は・・・・。
真船佳奈#13 パートナーが落ち込んでいるときにできる唯一のこと(前編) 真船佳奈#15 恋人から家族になるまでの“賞味期限”っていつまでなんだろう

前編ではここ3ヶ月の鬱々とした日々の愚痴をひたすらに書いた。
あれだけ読んだ人は、「この人はtelling,の記事をデスノート的に使っているだけなんじゃないだろうか」と思ったことだろう。
実際、書くだけ書いてめっちゃスッキリした。
後編ではいよいよ本題。

「毎日精神状態がコロッコロ変わる不安定な妻を前に、話を聞く以外は特に何もしない夫。アドバイスもくれない。これはひどいことなのか?!」に関して、お話ししていきたいと思う。

パートナーと暮らす日々の中で、どちらかが病んでいるときにどうすべきなのか。珍しく真面目なテーマについて考える章の後編である。

転機は夫以外の一言で訪れた

で、まあずーっとクサクサした日々を送っていたのだが、転機はひょっこり訪れた。
ある日漫画フリークな先輩とのひょんな会話の流れから「このご時世テレビマンの漫画読みたいと思うか?売れない理由、それが全てだと思うよ」と言われたのだ。
もうね、憑き物が落ちたように心がスッキリした。

作品が売れないのは作り手が全て悪いと思っているし、今だに「読者が悪い!」とは全く思っていない。
だが、コロナによって世の中が急速に変化して、人の気持ちも大きく動いた。
だから3月に発売した本が、4月には求められていなかったのかもしれない。
悩み悩んで、自分も責めたし、やるべきことはやり尽くした。
それでもやっぱり、どうにもならないってこともある。全部自分のせいにして苦しむのはやめよう、と思えるようになった。

そこからは、「自分の心が摩耗するようなことは極力しないようにしよう」と思い一時的にSNSもセーブするようにした。

今、私はめちゃくちゃ晴れ晴れとした気持ちでTOEICの勉強とかしてる。
最終的に行き着いた先がめっちゃ謎だけど とにかく
一人で悩んで悩んで悩んで、解決策を模索して足掻いて苦しんで、自力で水面に浮上することができた。
逆に言えば、多分ここまで苦しんで足掻いた先でなければ、解決することはできなかったと思う。

パートナーであっても、一つにはなれない

後で夫に「どうして私にあの時具体的なアドバイスをしなかったの?」と聞いたところ、「求めてなかったでしょ」と。

実際、めちゃくちゃそうなのだ。
大好きな夫に私の苦しみはわかって欲しかったけど、
私が頑張って築き上げた世界のことで、わかったようなことを言って欲しくないのもまた事実なのだ。

私がどん底にいるとき「まあ俺だったらこうするかな」とか「こうすればいいのになんでしないの」とか言われてたら、
禁断の一言「おめえに何がわかるんだ!!!!」って叫んでたね。
(「お見通しすぎてしゅごい!」と思ったけど、単純にゲームやりたかっただけの説も濃厚である)

漫画フリークの先輩が何百冊もの漫画を読んだ上の一言と、夫がその場しのぎにいう一言だったら納得度も違うし。

わかっては欲しいけど、わかったようなことを言って欲しくない。
夫婦の関係は極めて微妙で難しくもある。

夫婦関係って、溶け合って一つになるというよりは、コアラがしがみついている感じ。 片方が足掻いていても振動は伝わるが、問題自体は本人のものであるという。 上手いこと言ったようで言えてなくてすいません

夫婦は一つになれるのか

恋愛をして、大好きな相手に自分のことを受け入れてもらえると嬉しい。
だからどんどん体を沈み込ませ、お互いの境界線が曖昧になってくる。
一体感が嬉しい時もある。
でもどんなに一緒にいようと、境界線は消えない。
夫も私も違う世界を持って生きている、別々の人間である。
それを絶対に忘れてはいけない、と思う。

相手が歩んできた人生や、大切にしてきたもの、それらを全て分かち合うのは難しい。「結婚したら喜びも二倍、悲しみは半分」とか言うけど、分かち合える悲しみばかりではないかもしれない。

私の苦しみは、私があがいて戦って、答えを出さないといけない時もある。
もちろん夫の苦しみも然り、である。

家族であり、他人でもある。
そんなバランスが難しい夫婦生活だが、二人で食べるご飯は美味しい。
どちらかが落ち込んでいたら、好きなテレビでも見ながら、美味しいカキフライとか食べればいいと思う。
もちろん油がはねると危険なので、私は作らない。夫に作ってもらう。

だから今回のテーマ「パートナーが落ち込んでいるときにできること」の結論は、(夫が作った)カキフライを食べる、でした。

分けあえる幸せはどんどん分け合いながら、個と家族のバランスを保っていきたい、と思う今日この頃であった。

完全に料理という家事を放棄してから数ヶ月。毎日美味い料理が食べられているので精神安定してきた。

追伸:
本が売れてなくてかわいそうだな、と思った方は是非以下から試し読みしてみてください。夫の愛より、あなたの課金が私を救います。

オンエアできない! Deep

著者:真船佳奈

定価:本体1000円+税

出版社:朝日新聞出版

判型:A5判

ページ数:176ページ

試し読みはこちらから

真船佳奈#13 パートナーが落ち込んでいるときにできる唯一のこと(前編) 真船佳奈#15 恋人から家族になるまでの“賞味期限”っていつまでなんだろう
テレビ東京社員(現在BSテレ東 編成部出向中)。AD時代の経験談を『オンエアできない! 女ADまふねこ(23)、テレビ番組作ってます』(朝日新聞出版)にまとめ、2017年に漫画家デビュー。ツイッターアカウントは@mafune_kana
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