最高にマイペースな結婚をしよう!

【真船佳奈】#1 すっぽんぽんで結婚します。〈後編〉

前回、telling,上で突如として発表された真船佳奈さん「結婚」のニュース。この連載では、結婚を決意した真船さんが実際に結婚式を挙げるまでの道のりを、ご本人によるリアルタイムドキュメンタリーとしてお送りしていきます。超人気シリーズ「最高に楽しいぼっち旅をしよう」の作者として「ぼっち」をきわめてきた真船さんが、なぜ「結婚」という道を選ぶことになったのか。前回に続き、気になるいきさつを語ってもらいました。
【真船佳奈】#0 すっぽんぽんで結婚します。〈前編〉 【真船佳奈】#2 プロポーズにまつわるエトセトラ

その頃はマッチングアプリで出会った男性(SNSにおしゃれなポエムを投稿する人)と何回かデートを重ねたのち、「価値観が合わない」という理由で振られ、私は荒れに荒れていた。会社の先輩と、その友人と3人でラーメン屋でしこたま飲んだあと、担当編集が一日ママを務めているというスナックに「追い酒」をしに寄った時に今の夫と出会った。(ここら辺の情報量が多すぎて申し訳ない)

私は大変酒癖が悪いので酔った時は「それは私ではなくて霊が憑依していたんです」というイタコ方式の言い訳をしながら生きてきたのだが、その日は運が悪いことに犬の霊が憑依していた。

カウンターでグデングデンに酔っ払い、日本語を使うこともままならなくなった私は「バウワウッ!バウワーーーウっ!ウ〜〜〜〜ガルルルルル」と犬の鳴き真似をしていたそうだ。よく可愛い子がやる「ワンワンっ♡」みたいな生易しいモノマネではなく、セントバーナード系の口の端がたるんでる系の犬が頬をブルンブルン震わせ、よだれを振り乱しながら吠える本格的なモノマネである。

案の定皆大人なので「あ、可哀想な人だ」という感じで至極真っ当な対応(無視)をしてくれていたのだが、唯一興味を持って話しかけてきたのが夫なのである。「犬なのかい?」とか言ってきた。全然覚えてねえけど。

これは今までの私からの「シンデレラセオリー」でいうと最悪の出会い方だった。男の前では、ガラスの靴しか残しちゃいけない。合コン後に「あの子、可愛かったな…」とか「よく笑う子だったな…」とか、男性の心にふわっと綺麗に香る思い出を残さなきゃいけない。
「あの子の犬のモノマネ本格的だったな…」と思う奴なんて私の辞書にはいないのだ。酒臭い思い出を残してうまくいった例はない、はずだった。

バラ色の想い出ならぬアセトアルデヒド色の置き土産

前頭葉が完全にイカレる前にラインを交換した。翌朝史上最悪のハングオーバー後「昨日はすいませんでした」的なメールを送ったら、「今度飲みましょうワンワン」的なラインが返ってきたので(あ、この人のこと好きかも)と思った。顔も会話内容も思い出せないけれど、この人にだったら出前館のこと話せるかも、と、そう思った。

結婚とは「理想を捨てることだ」

そこから1週間後に、また私が泥酔した後一緒に飲むことになり、その日のうちに「お付き合いしましょう」ということになった。で、そこからなんとなく毎日一緒に過ごすようになりお互いの親に挨拶をして、生まれて初めての同棲生活もスタートした。

(裸でスヌーピータウンしかやってない私が人と一緒に暮らすことができるんだろうか…)と不安に思っていたが、実際に暮らし始めてみると想像していたよりもはるかに、誰かと暮らすことは楽チンだった。
「豚肉を卵でガーッと炒めて醤油的なものをビャーッとぶち込んで火を通す」みたいな擬音の多い謎料理しかできない私よりも遥かに料理がうまい夫は、炊事を一切強要してこない。男尊女卑云々ではなく、単純に美味いものを食って生きていきたいんだと思う。違ったらごめん。

左:私の作ったピーマン肉詰めらしき物体 右:彼の作った料理

一人暮らしの時は「空き巣が入ったの?!」と疑われる地獄の汚部屋だったが、同棲後は「耐えられなくなった方が掃除をする」が暗黙の了解になっているので、「10分くらい空き巣が物色した」くらいの状態はストレスなくキープできている。

彼は私が腹を出して寝ていても笑って盗撮している。
今までの窮屈な恋愛はなんだったのだろうというくらい、自然で自由な状態である。

逆にどうして今まではあんなに苦しかったのだろうと思い返してみると、「完璧でなくては嫌われる」という自分で決めたルールで苦しくなっていたんだなあと実感する。

よく「結婚したかったら理想を捨てた方がいい」と言われた。
これの意味を、「じゃあ多少ブサイクでもいいですし、多少年収が下がって多少ハゲていてもいいです」などと相手の条件を下げることだと思っていたが、実際は自分で勝手に作り上げた「自分自身への理想」を捨てることだな、と思うようになった。

女は温かい料理を作って待っていなきゃいけない、綺麗な家をキープしなきゃいけない、可愛い笑顔で夫をお迎えしなきゃいけない。
誰が作ったわけでもない、でも強く思い込んでいた「理想の女像」。そう言ったものを全部脱ぎ捨てた「理想じゃない、本当の私」を拒絶されたら、私はとても傷つく。だから今まで無理をして苦しくなっていたのだ。

ラッキーだったのは、理想じゃない私(セントバーナード状態)で彼と出会えたことである。もうメッキを塗るのには遅すぎた。「どうしてこんなになるまで病院に来なかったんですか」って怒られるレベルの状態で出会えたからこそ、理想を捨てることができた。

肌に金箔を塗っていると皮膚呼吸できなくて苦しい。すっぽんぽんでいいじゃないか、とりあえずそう思える相手と出会えた。
だからあまり深いことも考えず、「これからもずっと一緒にいたいから」結婚をすることにした。結婚という形に縛られなくても、とか、結婚は人生の墓場、とか。人によって考えは違うけれど、とりあえず自分にとっては最良の選択だと思っている。

書いてて気づいたがまだ入籍していないので現在はクーリングオフ期間だ。文章を読んでお気づきかもしれないが、どう考えても「ギブアンドテイク」の割合がおかしいことになっているのでいつ返品されてもおかしくない。

今後はこの企画の中で結婚にまつわる様々なステップや、心境の変化をなるべくリアルタイムで更新していこうと思う。
まーーだステップあんのかよ!めんどくせーーーーーーーーー!スヌーピーストリートしよっ!

【続きはこちら】

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【真船佳奈】#0 すっぽんぽんで結婚します。〈前編〉 【真船佳奈】#2 プロポーズにまつわるエトセトラ
テレビ東京社員(現在BSテレ東 編成部出向中)。AD時代の経験談を『オンエアできない! 女ADまふねこ(23)、テレビ番組作ってます』(朝日新聞出版)にまとめ、2017年に漫画家デビュー。ツイッターアカウントは@mafune_kana
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