最高にマイペースな結婚をしよう!

【真船佳奈】#0 すっぽんぽんで結婚します。〈前編〉

読者の皆さん、重大発表です。telling,の超人気シリーズ「最高に楽しいぼっち旅をしよう」の作者で現役テレビ局員・漫画家とマルチな才能を持つ真船佳奈さんのプライベートに、大異変が勃発しました。それに伴い、telling,は真船さんによる緊急連載をスタートさせます。いったい何が起きたのか――詳しくは本文をご覧ください!
【真船佳奈】#1 すっぽんぽんで結婚します。〈後編〉

30歳の誕生日に婚約をした。というわけで、私、結婚します。
夫(仮)は同い年で文章を扱う仕事をしており、見た目は寝起きのラッコに似ている。

出会って1週間で付き合い、3カ月で親に会わせて、5月で同棲を開始し、半年ちょいで婚約をした(させた)。世の中的にはまあまあスピード婚の部類に入ると思う。

この話をするとよく「うまくいく時ってトントン拍子よね〜」と言われるが、私はその度に(んなわけあるか!壮絶な囲い込み漁をしたんだよ!)と内心思っている。

幼い頃から「結婚とは二人の距離が自動的に近づいていき0.01mmの薄さに到達したらどちらからともなく自動的に成立する」もんだと思っていたが、実際はそんなことはない。

私が交際初日から毎日「ちょっと今日は役所に行ってみようか」と誘ったり、「誕生日プレゼントはパカリ(指輪の箱を開ける動作)がいいなあ」と日に日に大きな声で呟くようになる地獄のカウントダウンをしたり、我が家の親父が「夫くんと佳奈はいい夫婦だなあ…おおっと!まだ夫婦じゃないかあ!ワッハッハ」とわざとらしく発言したりと、家族ぐるみで真綿で首を絞めるかのごとく、じりじりと追い詰めていった結果なのである。

私が毎日プロポーズ(脅迫)して、結婚させたと言うほうが現実に近い

でもなんでそこまでして、結婚したんだろうか。そういったことを今回はお話ししたいと思う。

それまでの私は、毎日出前館で同じ店の唐揚げ弁当を頼み続けて光の速さでゴールド会員になったり、(今日も1日生まれたままの姿で過ごしてしまったぜ…)と朝焼けを見ながらおセンチに呟く「すっぽんぽんデー」をコンスタントに開催したり…と、一人でもそれなりに楽しかった。

人生は自分の意思でできることだらけだし、反対に言えば一人でできないことは二人でも困難である。個人プレイが多い職種(変な意味じゃないぜ)なので年々その思いは募っていき、「このままちょっと変わったソロおばさんになるのかなあ」と漠然と思ったりした。

だから①誰かと出会って②その人のことをいいなと思って③お互いの気持ちを推察しつつ④丁寧なラインのやりとりを繰り返し⑤気合を入れたメイクと服で武装して⑥デートしてなんとか付き合って⑦お互いのことをそこから理解して⑧すれ違いを経て⑨それでも愛を確かめ合って⑩皆に祝福されてゴールイン という過程を踏むのが死ぬほど面倒だった。なんだよこの過程、ミートローフだってもっと簡単に作れるぞ。

特に①〜⑥までの難易度がヤバイ。出前館で頼んだらすぐに唐揚げ弁当が届くってのに、私と付き合ってくれる理想の相手は待てど暮らせど来てはくれない。

Tinderなどの出会いアプリも試してみたが、「こんにちは!僕は縛られるのが好きですがマフさんはそういったプレイにご興味ありますか^^」と通り魔のごとく瞬間的にクリティカルヒットを与えてくるメッセージが飛んでくるたび頭を抱えた。

周りは既婚者が多くなってくる年頃。しかし聞こえてくる「ゴールイン」の先も穏やかなものばかりではない。大体のドラマも昔話も結婚したら「めでたし、めでたし」のはず。でも実際はその先にまだまだ苦難が待ち受けているのだとしたら、私はいつ幸せになれるのか。

結婚をなんとなくしたい。でも、なんで私は無理してまで、結婚したいんだろうか。29歳の私はそんな渦の中にいた。

シンデレラのその後

私たちは「シンデレラ」の物語に影響されすぎている。
苦境に立たされても本当は美しいその姿を男性の前で晒し、ガラスの靴のような美しい思い出を残し、その思い出を頼りに見つけ出してもらう。

だから私も「面白い系女子に見えて、実は可愛い一面もあるってことをデートで見せて、その思い出を頼りに交際に結びつける」方法が一番正しいと思っていた。出前館のゴールド会員どころかそろそろゴッド会員になりそうな気配や、休日は腹をかきながら一生スヌーピーストリートをやっている実態は殺すことにしていた。

付き合ったら付き合ったで、世間で言われる「いい女」であるために、料理を作って彼の帰りを待ったりした。

うまくもねえ料理を押し付けて「おいしい」のカツアゲをしていた若かりし頃

男の前で綺麗なドレスを着て、引き際を見計らってガラスの靴を置く。
そうすると男性は喜ぶし、褒めてくれる。私のことを好きになってくれる。
そういったニコニコ100点満点のデートをした帰りは次の展開に胸を躍らせながらも、スカートはきついはヒールは痛いわ、精神までコルセットで締め上げられたような窮屈な気分がなかなか抜けない。

結婚したら毎日これが続くのか。中世ヨーロッパじゃあるまいし、コルセットで胃を締め上げられる日々はゴメンだ。

だけどすっぴんの私はあまりにブスすぎて、とても男性に見せられるものじゃない。セメントのように塗り固めた肌にヒビが入るほどの作り笑いを浮かべて、当たり障りのない会話をするデートに疲れ切った時に出会ったのが、夫であった。

【後編はこちら】

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【真船佳奈】#1 すっぽんぽんで結婚します。〈後編〉
テレビ東京社員(現在BSテレ東 編成部出向中)。AD時代の経験談を『オンエアできない! 女ADまふねこ(23)、テレビ番組作ってます』(朝日新聞出版)にまとめ、2017年に漫画家デビュー。ツイッターアカウントは@mafune_kana
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