最高にマイペースな結婚をしよう!

真船佳奈#10 〜氏名変更ってやらなきゃダメですか?〜

telling,の人気企画「ぼっち旅」シリーズの作者で現役テレビ局員の真船佳奈さんの結婚式までの道のりを、ご本人によるリアルタイムドキュメンタリー形式で追っていく連載「最高にマイペースな結婚をしよう!」。 結婚式を延期した真船夫妻に新たに浮上した「どちらの姓にするか問題」。夫婦別姓が認められていない日本では、夫妻の一方が苗字を変えなければなりません。ある決断を下した真船さんですが、それに伴う手続きは煩雑を極めて――。

日に日に暑くなってくる部屋にこもりっきりの2020年初夏、みなさまいかがお過ごしだろうか。
まわりは「花火もフェスもない夏なんて!ぴえん」と悲しんでいる人も多いが、私は数十年、花火にもフェスにも縁のないインドア生活を送っているため、割と通常運転である。ぴえん。

前回の「”コロナ結婚式”を延期した話」は、驚くほど多くの反響をいただいた。「私も延期になりました」というコメントから「結婚式も延期になって真船の単行本も売れなくて可哀想すぎる」という憐憫まで様々な反応を本当にありがとうございました。3月19日に出した単行本『オンエアできない!Deep』は何かの間違いかと思うくらい売れていなくて本当に私、可哀想なので、皆さんよかったら買ってください。

さて、今回のテーマは「氏名変更について」。皆さんがツイッターで日夜政治について激しい議論を交わしている最中、ひっそりと「この制度、無駄じゃねえか?」という小さな小さな一石を投じたいと思う。

名字を変えるのは女?男?

そもそも「何で氏(名字)を変えなきゃいけないのか」ということは詳しく知らないのだが、まあ普通に婚姻届を出してノーマル夫婦になるためには、現行の法律ではどっちかの名字に統一する必要がある。
で、夫と軽く話した結果、私が変更することにした

ちなみに、ご存知の通り現在の日本では女性が姓を変える方が圧倒的多数である。

私の場合「本名で文筆業している妻の方が名字を変えなきゃいけないなんて!」というご心配の声もいただいた。
実は夫も本名で文章を書くような仕事をしており、おまけに私と違って社会的意義のある固めの物を書いているため、同じ土俵に立ってみると「ペンネーム的本名」(新姓に変えても旧姓を名乗っていい)の私が姓を変えることの方が自然な気がした。
あと、本名で文章を書いていると「私生活でトラブルがあった時に、相手が私の名前でググってツイッターとかに突撃されたらどないしよう」といういらぬ心配もこれまであった。
ちゃんと考えたふうのことを書いてきたが、決め手になったのは夫の名字の方が私より珍しい!というレア度と、夫の姓にした方が金運が上がるという2点の理由だった。

ネットの氏名画数診断により、一瞬で捨てられてしまった“真船”のアイデンティティ

名字がアイデンティティ

私は2017年、デビュー当時から「真船佳奈」という名前で活動しているし、言わずもがな1989年から「真船佳奈」という名前で生きてきた。
なかなかに珍しい名字なので、大抵の人は私のことを苗字で呼ぶ。同級生に「私の下の名前知ってる?」と抜き打ち検査すると、「…美代子?」と言われたことが2回あった。美代子。
そんな感じでずーっと真船真船、たまに美代子と呼ばれたりしていると、段々と私も「佳奈」では反応できなくなってしまった。

自分で名乗るときも「真船です」友人からも「マフちゃん」、歴代の元カレもみんな「真船さん」と呼んでいた。(距離感
アイデンティティが名字の方に宿っている。実際いまだに私は自分のことを真船だと思っているし、死ぬまでそう思っていると思う。
(まあでも金運上がるし、名字を夫の性にしたら妻としての自覚でてくんのかな…?)という謎の期待を込めて、慣れ親しんだ名字とアイデンティティを捨ててみることにした。

氏名変更の旅、クッソめんどくせえ

いざ夫姓に入ることを決めたはいいが、何万回ゼクシイの「名義変更の旅」のページを読んでも重い腰を上げられなかった。
まず、会社を休まなきゃいけない。名義変更しなきゃいけないような場所は「平日の仕事後にふらっと一軒飲みに行く」みたいなテンションでは行けない場所ばかりだ。
警察署やお役所、パスポートセンターに銀行など「健全なお時間に一度深呼吸してからお越しください」的な場所ばかりなのである。

入籍から数ヶ月後、やっとのことで自分を奮い立たせ、朝8時に起きて「楽しくない変更ツアー」を開催することにした。
まず役所で手続し、ついでにマイナンバーカードの申請をだし、その後警察署へ。
何にも悪いことしていないのに背筋をピンと伸ばしてビクビクしながら15分ほどで手続きを終え、銀行を3軒はしご。
有楽町のパスポートセンターに行きがてら証明写真を撮影し、合間にクレジットカード会社に電話。手続きが直接できるクレカ窓口にも行った。1日で終わらそうと思うと、飯を食う時間もまともに取れない。

クリック一回で数千万円の投資もできる世の中だってのに、手書きとハンコが必要なお手続きがこれほどまでにあるとはな…
ちなみに1日で何とか申請自体は終わったが、今度はピックアップに伺わなければいけない箇所が出てくる。UBER EATSさん、パスポート届けてくれよ!

で、今は落ち着いたかというととんでもない。
通販で買い物しても「振込元のお名前と注文者のお名前が違うんですが〜」というご本人確認が発生したり、会社では旧姓を使っているが「この書類のハンコは新姓で欲しいです」的なことが発生したりする。コロナ禍の中、何度か役所や銀行に足を運ぶ羽目にもなった。

本当にめんどくせええええええええええ!!!!

もっと「やっと同じ姓になれましたね…///」的な気持ちになれるかと思ってた!全くなれない!新姓別のアルファベット綴りも漢字もいまだに覚えられない。
金運アップどころかパスポート更新代もかかるわ、メリットが何もない
こりゃあ、夫婦別姓議論、燃え上がりますわな!というのが正直な実感である。

メリットはあったのか

夏休みになると、子どもたちがみんな楽しそうに電車に乗ってスタンプラリーの旅をしている。名字変更もスタンプラリーみたいな作業なのだが、何が地獄って、楽しいことやメリットが何もないのよね。終わったらピカチュウのサンバイザーくらい欲しいんだけど。

私はまだ「金運アップ」という謎の希望を持っているから(それすら消えかけてるけど)いいけど、やっぱり「女側が姓を変えるのが当然」という意見も多い世の中、納得せずに姓を変える人も多いんじゃないのかな。

だったらもう新姓を作っちゃいたいよね。
「つのだ☆かな」とか、「西園寺佳奈」とか…楽しい名字になるのならこの作業も愛おしく思えるんだろうか。でもこんなふざけた作業に付き合わされる各窓口の人がたまったもんじゃないか。

ただでさえ忙しいのにこんな奴らばっかり押し寄せたら桂文枝さん級に椅子からひっくり返る自信ある

そんなわけで、特に結論はないのだけれど、まだまだ日本には無駄な仕組みがたっっっっっっくさんあるので、コロナをきっかけにこれも無くなって欲しいなあ、と思う今日この頃なのであった。

オンエアできない! Deep

著者:真船佳奈

定価:本体1000円+税

出版社:朝日新聞出版

判型:A5判

ページ数:176ページ

試し読みはこちらから

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テレビ東京社員(現在BSテレ東 編成部出向中)。AD時代の経験談を『オンエアできない! 女ADまふねこ(23)、テレビ番組作ってます』(朝日新聞出版)にまとめ、2017年に漫画家デビュー。ツイッターアカウントは@mafune_kana
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