真船佳奈#12 家事はどっちがやるものですか?(後編)
前編では、“家事を完全放棄し母をハウスキーパーとして雇い、気楽で非人道的な裸族生活を送っていた”私が、“エマールお洒落着洗いを日課とする夫”と結婚し、早々に挫折を味わっていた過去をお話しした。
話を聞いている限りだと世間では家事をしない「男性」の方が多いようだが、私は限りなくそっちサイドの女なので、
身近に家事をやらなくてイライラしている人がいたら、この成長記を読んでいただきたい。
役には立たないかもしれないけど、動物調教物語みたいなテンションで読んでもらえれば。
部屋が汚いと心が荒む
我が家は、夫は深夜勤務、私は朝から夕方まで働く“すれ違い共働き世帯”なので、どちらかが一人の時間に何らかの家事を進めないと快適な生活は望めない。
同棲早々に必殺奥の手「実家の親を頼る」を封じられてしまった私は、どうやら本当に自分の手で片付けや洗濯をしなきゃいけないようだった。
どうしよう、死ぬほどめんどくさい。
やらなきゃとは思うのだが、(うーん、時間がある日曜にまとめてやろう)などとゴロゴロしてしまう。で、日曜になったらなったで「ザ・ノンフィクション」とか見ていたらあっという間に深夜である。
でもまだ私の中には甘えがあり、こう思っていたわけですよ。
(汚部屋限界我慢比べだったら絶対に私が勝つ、だから耐えられなくなった夫がやるだろう)、とね。
甘かったよ。夫もやらねえの。
超当たり前の話だけど、家事って夏休みの宿題と同じで、放っておいても減らないから貯めた分だけ後からやらなきゃいけない。
おまけに宿題より厄介なのは、日常的にやっておけばそんなに大変ではない作業が、貯めたら貯めただけ大変な作業になる。
「我慢比べ状態」になる頃には、もう医者に「どうしてこんなになるまでほっておいたんですか!」って怒鳴られるレベルになってるわけですよ。
そうなると同じく仕事で疲れている夫の重い腰も上がらない。(エマールお洒落着洗いはする)
多分、気になってはいるんだろうけど、調教の意味も込めてやらないのかもしれない。家庭内ストライキのにらみ合い状態である。
そうして二人とも迫り来る現実から目を背ける。雰囲気も良くはならない。
地獄の耐久レースに終止符を打ったのは、意外にも私の方だった。
ダイソンで人生が変わる
きっかけは、家に私の友達が来るとなった時だった。
我々がいかに地獄の環境に耐性を持っていようと、友人はそうではない。
仕方なく夫の持っていたダイソン掃除機をかけてみることにした。
私はそれまで“ネット通販で高評価だと思って買ったら全員サクラが採点してたと思しき激安ポンコツ掃除機”を使用していたので、「あんたダイソンっていうのかい?ふん!生意気な名だねえ!あんたなんか、“ダ”でいいよ!」くらいの気持ちでいた。
だから近寄りもしていなかったのだけど、(あと充電コードどうやって外せばいいのかわからなかった)もう私の短命の掃除機は天に召されていたので仕方なく手に取ったところ、もうめちゃくちゃ吸えるのね。
そんで、吸ったものが見えるのね。
なにこれ、楽しい。
「やったことの成果を見える化しないと!」とはよく言ったもので、掃除の成果報酬がすぐ見えるの、めちゃくちゃテンションが上がる。すごいよダイソン。
そうなってくると落ちている様々なゴミを一網打尽にしたくなってきた。
「ここまで床が綺麗になったんだから、今度は食器を洗ってみよう」という気持ちになる。
いつの間にか、地獄だった部屋がちょこっとだけ綺麗になった。
すごい、もう私自身が“吸引力の変わらないただ一つの掃除機”になっている。
帰宅した夫が、綺麗になった部屋を三度見くらいして、「掃除してくれたの?!ありがとう!」と言う。
何だかとても素晴らしい響きに聞こえるので、もう1回くらいやってもいいかと思う。
日々きちんと家事をしていらっしゃる人から見れば、ハードルは恐ろしく低く地面スレスレなのだろうが、それでも達成感でいっぱいになった。
成果が見えること、そして感謝されること、この二つでちょっぴりとだけ30年間停滞していた家事タスクが前進したのである。ありがとうダイソン。
※ダイソンの通販ではありません。
得意・不得意と楽しさを優先して分担を
その後、夫が様々なお掃除グッズを我が家に持ってきていたことが判明した。
私はそれらを試すのが楽しくなり、何となくお掃除の担当となった。
ゴミと同棲していた20代では考えられない進歩である。
そしてあんなにエマールお洒落着洗いな夫が、意外にも洗濯物をたたむ作業が好きではないことが判明したので、これも何となく私の担当としている。
逆に私は細かい事や繊細な味付けが全くできないため、料理や洗濯物などは夫が担当することになった。
夫と一緒にご飯を食べない時は、大好きなマクドナルドを中心としたハッピー外食をするようにしている。
ただ、これもきっかり役割を決めないようにしている。生活時間帯が異なるので、例えば「風呂掃除は夫!」と決めて夫がいなかったら風呂に入れないからである。
とりあえず、苦手なことは得意な方が。
タイミングが合わなければ後回しして、どちらかがフォロー。
半分しかできなければ、自分の分だけ、と言う大方針で生きている。
そしてお互いやりたくない時は、我慢できるだけ放置する。
別に風呂にカビが生えてたって、死にはしない。
ゴロゴロしたい時だってあるし、どうしても今やりたいことだってあるよね、今は優秀なカビ取り剤があるしね、っつって、お互い緩やかな気持ちで家事と向き合っている。
それでも何か気になったら、「お風呂の目地のカビだけ取っておいて!」と頼む。
※「〜〜だけ」と言ってハードルを下げておきながら、割と重めのタスクを課しているところもポイントである。
そんで、どっちかが何かをやってくれた時はちゃんと「ありがとう」を言う。
ありがとうを言われた方は努力が報われるし、言った方は自分も何かやらなきゃな、とかすかに思う。
これだけで本当に本当に、劇的に喧嘩が減った。
綺麗好きの人が見たら「ごちゃごちゃした家!ここに埃が!」と多数指摘されそうな家だけれど、
突然ヨネスケとかが訪ねてこない限りは、二人が良ければそれでいいのである。
私の中の松居一代さんが突然目覚めて家の中をダイソン持って駆け巡る日もあれば、ぐうたら眠っていたい日もあるのだ。夫もしかり。
だから、「まあ、死にはしないか」と言うのを合言葉に、感謝し合いながらゴロゴロ過ごすのも一つ夫婦生活のコツなのかもしれない、と思う今日この頃である。
「ぐうたら夫婦同士だったらそれでいいかもしれないけど!」「子どもがいる家庭の場合は違う」「共働きじゃない場合は違う」と言う意見が出そうだけど、これはもちろん我々夫婦の価値観(我慢レベル)が一年経ってやっと重なり合ってきた結果なので、お手本にして欲しいわけでも何でもない。
夫婦それぞれにとってベストな方法を探って欲しいな、と思っていることを書き添えておく。
ちなみに結婚する際、母から来たメールに「もうル●バも卒業かと思うと、ちょっぴりさみしいです!(笑)」と書いてあったのを思い出したので、やっぱりまた懲りずにル●バを頼もうと思っている。
- 「最高にマイペースな結婚をしよう!」これまでの記事はこちら!
#0 すっぽんぽんで結婚します。〈前編〉
#1 すっぽんぽんで結婚します。〈後編〉
#2 プロポーズにまつわるエトセトラ
#3 (役所の)君に届け、結婚届
#4 今年末こそ大掃除したい恐ろしき自虐癖
#5 嫉妬心とうまく付き合うために夫のパンツを作った話〈前編〉
#6 嫉妬心とうまく付き合うために夫のパンツを作った話〈後編〉
#7 結婚式場でマイペース夫が呼吸困難になった話〈前編〉
#8 結婚式場でマイペース夫が呼吸困難になった話〈後編〉
#9「#コロナ結婚式」を延期した話
#10 氏名変更ってやらなきゃダメですか?
#11 家事はどっちがやるものですか?(前編)
#12 家事はどっちがやるものですか?(後編)
#13 パートナーが落ち込んでいるときにできる唯一のこと(前編)
#14 パートナーが落ち込んでいるときにできる唯一のこと(後編)
#15 恋人から家族になるまでの“賞味期限”っていつまでなんだろう
#16 2回の延期の末に……ついに結婚式します!
#17 1年越しに結婚しましたよレポート(前編)
#18 1年越しに結婚しましたよレポート(中編)
#19 1年越しに結婚式しましたよレポート(後編)