【漫画つき】言葉をうまく発せないポンコツ会社員が、漫画家になったお話【真船佳奈】
皆さんこんにちはーーーー! とっても元気に挨拶をしてみました。
今日は「バラエティ番組にゲスト出演している女優が始終ヨソイキの顔していると思ったらラスト30秒でいきなり滔々と出演映画の告知をしはじめる」みたいなテンションで自身の漫画の宣伝を滔々とさせていただこうと思う。
telling,さんでは2018年の4月くらいから「親指レディOLサム子」という漫画や、「#最高に楽しいぼっち旅をしよう!」という企画、最近では「#最高にマイペースな結婚をしよう!」という企画をやらせていただいている。かなり自由にいろいろ書かせてもらって「ほんとに渡る世間に鬼はないねえ、ありがたや…」と毎夜 “朝日新聞の神”に感謝して晩酌している次第だが、普段の私はテレビ局で働いているしがない会社員である。
そんな私がどうして会社員をやりながらマンガを描き始めたのか、そしてそれがどんな効果があったのか、めちゃくちゃ語りたいのでお付き合いいただきたい。
まずはこちらのマンガをどうぞ。
私が漫画を描き始めてデビューしたのは、今から3年ほど前のこと。
当時は制作局という番組を作る部署にいて、音楽番組のディレクター兼AD(アシスタントディレクター)みたいな仕事をしていた。
テレビのADというと「なんか臭そう」とか「なんか辛そう」とか、「なんの仕事してるかよくわからない」というイメージを持つ人が多いと思うが、割と全部大正解である。
「バラードの歌中にハトを飛ばしたいから、ハト業者探して」と言われりゃあ、それこそハトが豆鉄砲くらったような表情を浮かべながら片っ端から電話して探したし、
「馬車で日本一周する番組を作りたいんだけど、どうしたらいいか調べて」といわれりゃ馬車馬のように情報を探し回った(うまいこと言ってない)。
「地球の裏側にいる仙人の情報がほしい」とか、「スタジオに巨大な雲を作るから綿を30キロ買って作って」とか、「おい かぐや姫だってもうちょっと現実的な注文出してたぞ!」と突っ込みたくなる、火鼠の皮衣的宿題に毎日頭を悩ましていた。
おまけに私は生粋のポンコツADだったため、毎日アホみたいな失敗をしては怒られていたし、そのたび結構な年齢なのにわあわあ泣きわめいていた。こわない?
そんな私が、唯一得意だったのは絵を描くこと。
映像の世界ではイメージを言葉だけでなく視覚的に伝える作業が大事なので、イメージを伝えるために絵コンテを描いたり、セット図を描いたりするのだけは重宝された。
私は極度の人見知りで、怖い先輩を前にすると言葉が出てこなくなったり、ひどいときは過呼吸になりかけたりするのだが、絵を描いて説明しているときは平気だった。
テレビの職場 ってめちゃくちゃお話が上手な人が多い。そんな中、ポンコツで口の立たない私は 現実世界では「何言ってるかよくわかんねえやつ」だったけれども、絵で何かを伝えるのだけは好きだった。(いや、そんな言うほどうまくもないんだけど)
いつの間にか、「制作局であった変な出来事を漫画で描き溜めておこうかな」という気持ちに至り、ノートに少しずつADのお仕事漫画を描くようになった。
で。職場のインフルエンサー的な先輩が「後輩がこんな漫画を描いてますよ!」とツイッターで拡散してくれたおかげで、あれよあれよという間に漫画の単行本化が決まった。
こんな他力本願棚から牡丹餅なデビュー秘話きいたことないよ…っつーくらい、自分で何もせずにデビューが決まってしまった。(多分、「絵がうまい」というよりは、「テレビ局で働いていて漫画を描いている」という希少価値のみで選ばれたと思う。)
実際漫画の描き方なんぞ全く分からず、文房具屋に「漫画家初めてセット」を買いに行くところからスタートした。
友達づてに漫画家さんを紹介してもらって、ペンの握り方から原稿用紙の使い方まで一から教えてもらった。漫画の枠線は母に引いてもらった。
漫画家としてはありえない低レベルスタートだったが、
「なんとか仕上げなきゃいけない!」というど根性だけはAD時代に培ったものかもしれなかった。
そんなこんなで2017年に『オンエアできない!~女ADまふねこ(23)、テレビ番組つくってます~』という作品でデビューした。
漫画に描いたのはテレビ東京の制作局。
主人公のADのまふねこが日々奮闘していくギャグコミックエッセイである。
実際にあった出来事をモチーフにしながらもひたすら明るいテンポで描いた。
ありがたいことに発売後即重版となり、毎晩“出版の神”に感謝しながらひとり晩酌した。
「石投げられるんじゃないか」とびくびくしていたが、出版してみて後悔したことは1個 もなかった。
一部の“ギョーカイおじさん”から「局員って漫画描いてるほど暇なんだなw」みたいな思った通りの100点満点どクソリプをいただいたりもしたが、そんな雑音気にならないくらい、大きく世界が変わった。
「ちょっと何言ってるかわからない」ななしのADだった私も、“漫画家”という代名詞がついただけで名前を覚えてもらえるようになった。というか、初めて名前が付いた気すらする。
なにより、自分の失敗をうじうじ悔やんではおいおい泣いていた時代から比べると、
漫画を描く作業によってだいぶ自分を客観視する能力がついたように思う。
AD時代辛かったことや悩んだこともあるけど、振り返ってみるとたいていギャグだ。
自分で作品にすることによって、あの時泣いてばかりだったポンコツADの私自身を
初めて許せた気もする。
後輩ADに指導もできないどころか、逆に指導されている逆転現象が起きていたのに
制作会社のADさんから「マンガ読みました!すごく元気になりました!」とか言ってもらえる。
日々働いている皆さんにも「思い出したくもない失敗」や「辛すぎて封印した過去」がきっとあると思う。そんな思い出を酒の肴に語るでもよし、SNSに書き殴るでもよし。何かしらのコンテンツにすることによって、誰かが、そして自分が救われることがあるかもしれないと思う。
何よりどんだけひどい失敗をしても「ま、これもネタになるか」と思えるようになったのはかけがえのない、大きな収穫である。(反省しなくなってしまったのはよかったのか悪かったのか)
<さて宣伝です>
「どんだけこの人自分の話するの?!」とお思いの皆様、ここからが本番です。
3月19日に『オンエアできない!Deep』という漫画を出版しました。
舞台はテレビ局。ポンコツADの主人公・まふねこがキャラの濃い人々や
襲い掛かる様々な艱難辛苦を乗り越えながら成長していく物語です。
テレビのお話ですが、どんなお仕事にも通じる「あるある」が詰まっています。
ぜひ読んでください!
- 「最高にマイペースな結婚をしよう!」これまでの記事はこちら!
- #0 すっぽんぽんで結婚します。〈前編〉
- #1 すっぽんぽんで結婚します。〈後編〉
- #2 プロポーズにまつわるエトセトラ
- #3 (役所の)君に届け、結婚届
- #4 今年末こそ大掃除したい恐ろしき自虐癖
- #5 嫉妬心とうまく付き合うために夫のパンツを作った話〈前編〉
- #6 嫉妬心とうまく付き合うために夫のパンツを作った話〈後編〉
- #7 結婚式場でマイペース夫が呼吸困難になった話〈前編〉
- #8 結婚式場でマイペース夫が呼吸困難になった話〈後編〉
- 【真船佳奈さんによる「最高に楽しいぼっち旅をしよう!」。過去のシリーズ一覧はこちら!】
- 最高に楽しいぼっち旅をしよう!NY編
- 最高に楽しいぼっち旅をしよう!台湾編
- 最高に楽しいぼっち旅をしよう!灼熱のタイ編
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第13回【真船佳奈】#7 「結婚式場でマイペース夫が呼吸困難になった話」〈前編〉
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第14回【真船佳奈】#8 「結婚式場でマイペース夫が呼吸困難になった話」〈後編〉
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第15回【漫画つき】言葉をうまく発せないポンコツ会社員が、漫画家になったお話【真
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