「梨泰院クラス」14話。パク・セロイがオ・スアを捨て、チョ・イソを選んだ愛の理由
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- 前回はこちら:「梨泰院クラス」13話。パク・セロイが愛したのはスアでもイソでもない。会長だ
「梨泰院クラス」ついに14話。最終クライマックス15話と16話へ突入する直前の重要回。
パク・セロイが、オ・スアとチョ・イソのどちらを愛するのか自分の気持ちに決着をつける回だ。
チョイソとパク・セロイの関係
パク・セロイに、オ・スアから電話がかかってくる。
「忙しい」とデートの誘いを断るパク・セロイ。
その様子を見て、チョ・イソが言う。
「こっちは恋愛もできずに徹夜で働いているのに。誰かさんとは女と電話でいちゃついて」
するとパク・セロイが怒る。
「俺に……もう言うな」
「何を?」
「俺を好きとか言うのはもうやめてくれ。お前を女として見てない」
「分かってます」
その後、セロイは「なぜ申し訳ない気分にさせる」とさらに怒る。
オ・スアとパク・セロイの関係
一方で、オ・スアに対して、パク・セロイは、以前のように「好きだ」とは言えなくなっている。
「まだ私が好き?」
「急になんだよ。何度言わせる」
「好きだって言ってよ」
「えっ」
言わないのだ。
そこにチョ・イソが偶然やって来る。ふたりを見て立ち去る。
イソを追うセロイの腕をつかんで、スアは言う。
「15年よ。早く長家から解放してよ。あんただけは私を好きでいて」
「分かってる。そのとおりだけど……」
「だけど」なのだ。そして「好き」とは言えない。
そのことにスアは改めて気づき、冗談にしてしまう。
「冗談よ。明日は株主総会よ。イソを追いかけて」
「イソが好きならイソを追いかけて」ではなく、「株主総会でイソが必要なのだからイソを追いかけて」だ。
パク・セロイは、15年間好きだと言い続けてきたオ・スアではなくチョ・イソを選ぶ。
だが、この選択が、シンプルな愛の勝利として描かれないのが、『梨泰院クラス』の凄いところだ。
「アニキらしくない」パク・セロイ
第13話、権力と金を得たパク・セロイの姿が描かれた。
周りは創立メンバー(昔の仲間)しか置かず、それ以外の人は挨拶する程度の関係性しか描かれない。会議では、創立メンバーが部下の提案を理詰めで潰してしまうシーンも映し出しだ。
創立メンバーのひとりチェ・スングォンは本部長になっていて「やってらんない。性に合わない。アニキ、現場にもどしてもらませんか」と愚痴をこぼすが、パク・セロイはまともに取り合わない。
セロイが多忙で仕事以外の時間が取れないことも何度か描かれ、スングォンからは「アニキらしくない」と言われる。
パク・セロイは第8話のラストでこう語った。
「僕と仲間が誰にも脅かされないよう、自分の言葉や行動に力が欲しい。不当なことや権力者に振り回されたくない。自分が人生の主体であり、信念を貫き通せる人生。それが目標です」
パク・セロイは、力を得たが、「自分が人生の主体」にはなっていない。スングォンも、性に合わない本部長をやらされ、パク・セロイも「アニキらしくない」ことで多忙だ。
失敗を繰り返すチョ・イソ
チョ・イソはどうか。
チョ・イソも。チョ・イソらしく生きていないことが繰り返し描かれる。
「ほかのだれより仕事ができて、会社に必要だから」愛していると繰り返し言っても許されるのだ、と語る。
「代表にとって必要な存在にならないと」と考えて無理をする。結果、鼻血を出すまで自分を追い込み、重大な総会直前に過労で倒れて病院に運び込まれてしまう。
実は、チョ・イソが重大なときにいなくなるのは2回目だ。
イソが「私を信じてください」と言い、パク・セロイがその熱に押されて「信じてるから」と答えたことで進めていたフランチャイズ計画。事業の重要局面で、チョ・イソは長期休暇に入り、海外旅行に行こうとする。マ・ヒョニに、「少し離れてみろ 近すぎると見えないものだ」とふたりの関係をアドバイスされたからだ。
クレバーで天才のチョ・イソが、重要局面で離脱を繰り返す。しかも、仕事上のミスではなく、パク・セロイとの関係性を重視したがゆえに「無理」をして、失敗してしまう。
チョ・イソは、「事あるごとに愛してるって伝えてるの。以前、好きでいるのものダメだったらクビにしてって言ったの」とマ・ヒョニにうちあける。
だが、パク・セロイは、「俺を好きとか言うのはもうやめてくれ」と怒りながらも、クビにはしない。
チョ・イソは、「だって好きだって言うには資格が必要だから」だと考えている。自分らしく素直に好きとは言えない。パク・セロイとの関係性においては、好きだと言うにも資格が必要だと考えているのだ。
チャン・グンスの真意
このことは、グンスも同じように考えている。
「いつまでイソを利用するんですか?」
「おれは利用などしてない」
「なら受け入れるんですか。イソの気持ちを」
イソを利用していることを認めるのか、イソの愛の告白を受け入れるか。パク・セロイは、二択に追い詰められる。
この二択は、チョ・イソが何度もセロイに迫っている問いだ。
「クビにしたきゃどうぞ。代表が困るなら切らないと。でも私仕事できるからいないと会社が困っちゃう、どうしよう。何に悩んでるんですか。方法がないわけではないのに、私を受け入れてください」
グンスは追い打ちをかける。
「わかりますよ。ICにとって重要だからイソは」
「グンス」
「ICがなくなれば、イソを解放しますか」
チャン・グンスは、セロイに囚われているチョ・イソを解放しようとしてICを潰そうと考えている。
これは、パク・セロイが、長家に囚われているスアを解放しようとして長家を潰そうと考えていることの繰り返しだ。
オ・スアに響いたセロイの「ノー」
第12話で、スアは告白している。
「長家への復讐 憎しみ 全部捨てて、私と一緒にいよう。そして、幸せになろう」
《スアを長家から解放してスアと結ばれる》という恋が、《長家に復讐する》という目標と一致していた間は、パク・セロイのスアへの想いは一途だった。
だがスアは、復讐に囚われているパク・セロイを解放し幸せになろうと提案してしまった。長家への復讐を捨ててくれ、と。
パク・セロイはこれを拒絶する。
「一度人生は終わった。再び立ち上がれたのは復讐すると決めたからだ。幸せはそのあとだ」と答える。
ちょうどかかってきた電話を使って、チョ・イソとスアの双方にパク・セロイは言っている。
「人生を俺に賭けるんだろ。それなら 俺を信じろ」
誰かに人生を賭ける賭けないではなく、そういったものを「全部捨てて」「私と一緒にいよう」と提案したスアには、このセリフは「ノー」と響く。パク・セロイに人生を賭けたチョ・イソには「イエス」と響いたはずだ。
これ以降、パク・セロイはスアに「好き」と言わない。
そして13話、パク・セロイは、チョ・イソは「人生を賭ける値する女だ」とチャン・グンスに向かって言う。
「自分が人生の主体であり信念を貫き通せる人生」が目標だと語っていたにもかかわらず、パク・セロイとチョ・イソは、お互いをお互いに「人生を賭け」、たびたび「信じろ」「信じる」と約束を交わす。
パク・セロイとチョ・イソの運命は
「あの人とタンバムで」というイベントの企画書をスングォンが読み上げる場面は、パク・セロイが「チョ・イソを愛している」とはっきりと確認する名場面だ。
デヒ会長を降ろすため総会に向かうなか過労で倒れるイソを思い浮かべる。
「今、愛する人がいますか」
パク・セロイは気づく。
「全部、お前だ」
そう、全部チョ・イソだ。だが、企画のコピーを聞きながら思い浮かべたチョ・イソの姿は、長家の会長を倒す夢に協力してくれた場面と、「好きになるな」と言った場面だけだ。
飲み会で楽しく話したこと、ディスコに行ったこと、一緒に楽しく働いたこと、そういった場面を思い起こすことはない。
チャン・グンスが、愛するイソを思い浮かべるとき、ディスコで楽しそうに踊ってるイソの姿をイメージするのと対照的だ。
資本主義的な金と権力のマッチョな競争世界で勝ち抜き、憎っくき相手を叩きのめす。復讐に生きたパク・セロイは、その世界観と一致する相手を恋愛の対象として選ぶ。
パク・セロイの愛が不純だと言いたいわけではない。恋愛そのものが、純粋でいられないときがある。お互いに人生を賭けるような強力な愛がどうやって生まれるのかを「梨泰院クラス」はしっかりと見せた。
矛盾を抱えながらも、チョ・イソへの愛を、いや、長家への復讐を選んだ。
まだ父が殺される前、復讐の思いなどなかったとき、一緒に走って好きになったスアへの想いを捨てた。
パク・セロイの抱える矛盾が大きくなって気持ちの起伏は波乱万丈になるが、アクションとしては地味になってしまったエピソードのラストは、かならずヤツがやらかしてくれる。14話でも、そうだ。長男チャン・グンウォンの出番だ。病院にいるチョ・イソを誘拐して、パク・セロイを殺そうと企てるのだ。
パク・セロイとチョ・イソの運命はいかに。長家デヒ会長はまたまたやらかしちゃった長男の尻ぬぐいができるのか。スアは立ち直れるのか。タンバムと、長家は、どうなるのか。
15話、16話、ついにすべてに決着をつける最終決戦がはじまる。
■梨泰院クラス全話レビュー
1:「梨泰院クラス」会長は本当に悪でパク・セロイは本当に正義なのか? 全話徹底レビュースタート
2:「梨泰院クラス」2話。忖度で生み出される格差に抗うパク・セロイ
3:「梨泰院クラス」3話。忖度社会に抗うための第3の方法
4:「梨泰院クラス」4話。パク・セロイとオ・スアとチョ・イソの恋のトライアングルバトル勃発
5:「梨泰院クラス」5話。パク・セロイとオ・スアのキスにチョ・イソディフェンス発動
6:「梨泰院クラス」6話。最大の疑問。パク・セロイはなぜオ・スアをタンバムに呼ばなかったのか
7:「梨泰院クラス」7話。パク・セロイ、会長に宣戦布告、土下座して罪を償え
8:「梨泰院クラス」8話。大金を得たセロイは、なぜ会長のようにならないのか
9:「梨泰院クラス」9話。パク・セロイ、オ・スア、チョ・イソの恋と権力のトライアングル
10:「梨泰院クラス」10話。権力か家族か。決断を迫られる会長、迫るセロイ
11:「梨泰院クラス」11話。チョ・イソ告白シーンでわかるパク・セロイが恋愛に鈍感な理由
12:神回「梨泰院クラス」12話。恋愛から逃げるパク・セロイ、「最強の居酒屋」から逃げないマ・ヒョニ
13:「梨泰院クラス」13話。パク・セロイが愛したのはスアでもイソでもない。会長だ
14:「梨泰院クラス」14話。パク・セロイがオ・スアを捨て、チョ・イソを選んだ愛の理由
15:「梨泰院クラス」15話。結局、会長もパク・セロイもマッチョなのだ。次回最終回
16:「梨泰院クラス」最終話。パク・セロイ「夢みていた光景なのに心の底から喜べない」
「梨泰院クラス」
演出:キム・ソンユン
原作脚本:クァンジン
キャスト:パク・ソジュン パク・セロイ役、キム・ダミ チョ・イソ役、ユ・ジェミョン チャン・デヒ役、アン・ボヒョン チャン・グンウォン役、クォン・ナラ オ・スア役、キム・ヘウン カン・ミョンジョン役、イ・デビッド イ・ホジン役、ソン・ヒョンジュ パク・ソンヨル役、ユン・ギョンホ オ・ビョンホン役
オープニング曲:ハ・ヒョヌ「Stone」
エンディング曲:Gaho「Start」
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