「梨泰院クラス」10話。権力か家族か。決断を迫られる会長、迫るセロイ

世界最大の動画配信サービス、Netflixで大人気の韓国ドラマ「梨泰院クラス」を全話レビュー。気になるけれどまだ見ていない人はこれを機にチェックしてみては? いよいよ、ある重大な決断を下す、チャン・デヒ会長。パク・セロイとの直接対決が始まります……。

「梨泰院クラス」全話レビュー、いよいよ第10話。

「梨泰院クラス」の読み方は「イテウォンクラス」。
いがぐり頭のパク・セロイと外食産業トップの長家会長チャン・デヒの対決の物語だ。
「梨泰院クラス」最大のテーマになっているある重大な決断を、追い詰められたチャン・デヒ会長が下す回である。

チョ・イソの提示する2つの条件

チョ・イソが録音した長男チャン・グンウォンの罪の告白(というよりイソにのせられて自慢気に話しちゃったこと)が公開される。パク・セロイの父親をひき殺し、その罪を他人になすりつけたのだ。
パク・セロイたちは、カン専務と作戦会議を開き、ここでイッキに会長を追い詰めようとする。

「今がチャンスです」

チャン・デヒ会長の解任決議を提出するタイミングだ、と。
イソは、そのためには2つの条件が必要だと提示する。

1つは、グンウォンの立件。
録音だけでは弱い。隠蔽に関わったオ刑事の自首が必要だ。こちらはクリアする。
もう1つは、会長の考えを把握すること。
息子であるグンウォンを見守るのか傍観するのか見捨てるのか。つまり、会社を取るか、長男を取るかの二択を迫られている長家会長デヒは、どちらを選ぶのかということだ。

これも、すぐに分かる。
グンウォンを切り会社を守ることを、オ・スアは進言する。チャン・デヒ会長は、そんなことは無理だと怒る。「二度と言うな」と。会長は、長男を守り、会社も大丈夫だと言い張るのだ。

わかりやすい悪役

チャン・デヒ会長は、権力を行使する悪人として描かれている。
といっても、周囲が勝手に忖度して、チャン・デヒ自身がストレートな悪事に手を染めているケースはほとんどない。

逆に、チャン・デヒ会長は寛容な態度を見せる。
セロイが長男を殴って校長が忖度して退学にしようとするのを、土下座をして謝れば許してやるともちかける。
土下座をして自分の権力下にいるのであれば寛容に接するというメッセージを送り続けているのがチャン・デヒ会長なのだ。

オ・スアは、チャン・デヒ会長の権力下にいることで、奨学金をもらい、長家で出世していく。これなど、「孤児院で育った少女に、個人的に奨学金を出し、自分の会社で育てた社長」という側面からみれば美談だ。

露骨な悪事を行うのは、長男グンウォンだ。
10話でも、路上でチョ・イソを殴ったうえに、それを止めに入った「各国から来た紳士たち」に金をばらまいて逃げようとする。
わかりやすい悪役である。
チャン・デヒが、悪事に直接手を染めるのは、この長男の尻拭いをするときだけなのだ。
チャン・デヒ会長は、セロイの父をひき殺したグンウォンの罪を自分の部下になすりつけ、グンウォンを助けた。

グンウォンの悪事と軽率な行動が、父親であるチャン・デヒ会長の足カセになっている。
オ・スアは、「血は水よりも濃い。一番嫌いな言葉よ。正しいことわざね」と言う。このような状況になっても、デヒ会長は、会社ではなく長男を選ぶと語るからだ。

チャン・デヒ会長は、長男グンウォンに「自分のことを考えろ。俺は大丈夫。グンウォン、お前は後継者だ」と告げる。権力者チャン・デヒの弱点は家族という血だ。さんざん足を引っ張る長男を守るために、自分の権力を危機にさらす。

チャン・デヒ会長を演じるユ・ジェミョン/Netflixオリジナルシリーズ「梨泰院クラス」独占配信中

会長、パワーアップ

そして、まさかの大逆転が起きる。

グンウォンが出頭に向かおうとする車の中にいるとき。
カン専務が、会長解任の決議を取ろうとしているとき。
チャン・デヒ会長が動く。

緊急記者会見を開き、泣き崩れる。
「数日前息子が初めて検察に出頭した日 帰ってきて…私に言ったのです。10年前のひき逃げ事件は僕がやったと」
隠蔽に自分はまったく関わっておらず、息子だけがやったと、ウソを語る。

長男を見捨てた。
秘書のせいにして自分が責任逃れをする人間はたくさんいる。だが、家族である長男も切り捨て、責任逃れをし、権力の座を守ろうとした。
チャン・デヒ会長は、悪役として覚醒したのだ。長男という足カセを外し、阻まれることなく力を発揮できる状態にパワーアップだ。

チャン・デヒ「このチャン・デヒが君を敵だと認めた。君をぶっ潰してやる」
パク・セロイ「僕も自分の全てを賭けて同じことを誓います」

ここから、仲間の力を得て大きくなっていくパク・セロイと、家族を切り捨てても権力の座を守ったチャン・デヒ会長の直接対決がスタートする。

■梨泰院クラス全話レビュー
1:「梨泰院クラス」会長は本当に悪でパク・セロイは本当に正義なのか? 全話徹底レビュースタート
2:「梨泰院クラス」2話。忖度で生み出される格差に抗うパク・セロイ
3:「梨泰院クラス」3話。忖度社会に抗うための第3の方法
4:「梨泰院クラス」4話。パク・セロイとオ・スアとチョ・イソの恋のトライアングルバトル勃発
5:「梨泰院クラス」5話。パク・セロイとオ・スアのキスにチョ・イソディフェンス発動
6:「梨泰院クラス」6話。最大の疑問。パク・セロイはなぜオ・スアをタンバムに呼ばなかったのか
7:「梨泰院クラス」7話。パク・セロイ、会長に宣戦布告、土下座して罪を償え
8:「梨泰院クラス」8話。大金を得たセロイは、なぜ会長のようにならないのか
「梨泰院クラス」9話。パク・セロイ、オ・スア、チョ・イソの恋と権力のトライアングル

「梨泰院クラス」
演出:キム・ソンユン
原作脚本:クァンジン
キャスト:パク・ソジュン パク・セロイ役、キム・ダミ チョ・イソ役、ユ・ジェミョン チャン・デヒ役、アン・ボヒョン チャン・グンウォン役、クォン・ナラ オ・スア役、キム・ヘウン カン・ミョンジョン役、イ・デビッド イ・ホジン役、ソン・ヒョンジュ パク・ソンヨル役、ユン・ギョンホ オ・ビョンホン役
オープニング曲:ハ・ヒョヌ「Stone」
エンディング曲:Gaho「Start」

ゲーム作家。代表作「ぷよぷよ」「BAROQUE」「はぁって言うゲーム」「記憶交換ノ儀式」等。デジタルハリウッド大学教授。池袋コミュニティ・カレッジ「表現道場」の道場主。
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