神回「梨泰院クラス」12話。恋愛から逃げるパク・セロイ、「最強の居酒屋」から逃げないマ・ヒョニ
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- 前回はこちら:「梨泰院クラス」11話。チョ・イソ告白シーンでわかるパク・セロイが恋愛に鈍感な理由
「梨泰院クラス」全話レビュー、いよいよ神回と評判の高い第12話。
料理対決「最強の居酒屋」でトランスジェンダーのマ・ヒョニが活躍する回である。
レビューを書くために見直したが、また泣いてしまった。
「梨泰院クラス」の読み方は「イテウォンクラス」。
いがぐり頭のパク・セロイと外食産業トップの長家会長チャン・デヒの因縁の物語だ。
チョ・イソの長期休暇
第12話。JМホールディングスが投資を急遽撤回すると、他の投資家もそれに続いて撤回しはじめた。
チョ・イソが「私を信じてください」と断言して進めたフランチャイズ計画なのだが、パク・セロイは最終的には「自分が決めたことだ」と言う。
このあたりの展開、改めて観てみると、けっこう強引だ。
いままでマネージャーとして超優秀だったチョ・イソが、基本的なことをやりそこなっている。
しっかりとした融資の契約を結ぶ前に事業を進めるのもおかしいし、「私を信じてください」と言い張って進めた事業の重要場面で長期休暇を取るのも不自然だ。
だが、ここが「梨泰院クラス」の物語展開が上手いところなのだが、恋愛的側面で観ると、実に納得がいく流れになっている。
パク・セロイから「好きになるな」とふられたチョ・イソは、居酒屋タンバムの成功(=長家への復讐)で必要な人材になって、それで好かれようとしている。
だから、成功を焦り、「私を信じてください」と言い張り、パク・セロイから「信じてるから」と言われて、幸せそうな笑顔になるのだ。
休暇に入ったのも、ふたりの関係性を心配したヒョニの「少し離れてみろ 近すぎると見えないものだ」というアドバイスがあったからだ。「公私混同はしない」と言いながら、恋愛感情で動いている。
スアの願いは「私と一緒にいよう、幸せになろう」
JМホールディングスの投資撤回は、長家のチャン・デヒ会長の差し金だった。
これがきっかけとなって、オ・スアが、パク・セロイに告白する。
「お願い。ここで止まって」
「何だと?」
「またひどい目に遭い、傷つくわ」
スアは、泣き出しそうだ。
「言ったわよね。私たちの関係は私が決めるんだと。長家への復讐 憎しみ 全部捨てて、私と一緒にいよう。そして、幸せになろう。お願い」
ここで「邪魔」が入る。
第5話の再現だ。オ・スアがキスしようとしたとき、チョ・イソが「ディーーフェンス」と言いながら阻止したときと同じように。
電話が鳴る。チョ・イソからだ。出てる場合じゃないだろうにパク・セロイは出る。
「人生を俺に懸けるんだろ。それなら 俺を信じろ。俺はこの程度で潰れない。もっとつらい経験をした」
父親を会長の長男にひき殺され、証拠も隠蔽された話をして、
「一度人生は終わった。再び立ち上がれたのは復讐すると決めたからだ。幸せはそのあとだ」
と断言する。
これは、電話の向こうのチョ・イソへの返事でもあり、同時に「幸せになろう」と告白をしたオ・スアへの返事でもある。
このシーンは重要だ。
恋愛を決めるのは「いつでもお前しだいだ」と、パク・セロイはオ・スアに何度も言っていた。その言葉がウソだったのだ。
パク・セロイの望みは、「長家を追い越し復讐する」であり、結果としてスアを解き放つことになるが、それは「恋愛」ではなかったし、「いつでもお前しだい」ではなかった。
これは、チョ・イソに対しても同様だ。タンバムを成長させるために仕事のパートナーとして、チョ・イソは必要だが、彼女を「女として見たことはない」(第11話)。
恋愛に対して鈍感で、相手が自分に恋していようが関係なく「ひとりの人」として対峙することが、パク・セロイの強さでもあるし、弱さでもあるのだろう。
私はびくともしない
テレビ番組「最強の居酒屋」。
第一回戦、第二回戦と、タンバムに負けた長家。追い詰められたグンスは、ヒョニがトランスジェンダーであることをリークする。
スタジオに入ったヒョニは、周囲からの冷たい視線を浴びる。
スタジオから飛び出してしまうヒョニ。
廊下で泣いているヒョニのところにセロイが来て言う。
「逃げてもいいんだ」
ちょっと考えて「いや、悪くもないのに“逃げる”は変だ」と言い、ヒョニの目を見て、続ける。
「好奇の目に耐えてまですることではない。お前はお前だから、他人を納得させなくていい」
ヒョニの涙、決意。
スタジオにもどったパク・セロイが、「ヒョニさんは逃げた」と言ったグンスに対して、「逃げただと? ヒョニは犯罪者か?」と諭す。リークしたのはグンスだと気づいているにもかかわらず責めない。
「応援してくれよ。さみしいじゃないか」と続けるのだ。
ヒョニが再びスタジオにもどってくる。
“私は石ころ 炎で焼いてみよ 私はびくともしない”からはじまるチョ・イソが朗読した詩がインサートされる。
マ・ヒョニが堂々と胸をはる。
「タンバム代表マ・ヒョニ、私はトランスジェンダーです。そして今日私は優勝します」と宣言し、チョ・イソの声で詩の最後のフレーズが追いかける。
“私はダイヤだ”。
強い。
■梨泰院クラス全話レビュー
1:「梨泰院クラス」会長は本当に悪でパク・セロイは本当に正義なのか? 全話徹底レビュースタート
2:「梨泰院クラス」2話。忖度で生み出される格差に抗うパク・セロイ
3:「梨泰院クラス」3話。忖度社会に抗うための第3の方法
4:「梨泰院クラス」4話。パク・セロイとオ・スアとチョ・イソの恋のトライアングルバトル勃発
5:「梨泰院クラス」5話。パク・セロイとオ・スアのキスにチョ・イソディフェンス発動
6:「梨泰院クラス」6話。最大の疑問。パク・セロイはなぜオ・スアをタンバムに呼ばなかったのか
7:「梨泰院クラス」7話。パク・セロイ、会長に宣戦布告、土下座して罪を償え
8:「梨泰院クラス」8話。大金を得たセロイは、なぜ会長のようにならないのか
9:「梨泰院クラス」9話。パク・セロイ、オ・スア、チョ・イソの恋と権力のトライアングル
10:「梨泰院クラス」10話。権力か家族か。決断を迫られる会長、迫るセロイ
11:「梨泰院クラス」11話。チョ・イソ告白シーンでわかるパク・セロイが恋愛に鈍感な理由
12:神回「梨泰院クラス」12話。恋愛から逃げるパク・セロイ、「最強の居酒屋」から逃げないマ・ヒョニ
13:「梨泰院クラス」13話。パク・セロイが愛したのはスアでもイソでもない。会長だ
14:「梨泰院クラス」14話。パク・セロイがオ・スアを捨て、チョ・イソを選んだ愛の理由
15:「梨泰院クラス」15話。結局、会長もパク・セロイもマッチョなのだ。次回最終回
16:「梨泰院クラス」最終話。パク・セロイ「夢みていた光景なのに心の底から喜べない」
「梨泰院クラス」
演出:キム・ソンユン
原作脚本:クァンジン
キャスト:パク・ソジュン パク・セロイ役、キム・ダミ チョ・イソ役、ユ・ジェミョン チャン・デヒ役、アン・ボヒョン チャン・グンウォン役、クォン・ナラ オ・スア役、キム・ヘウン カン・ミョンジョン役、イ・デビッド イ・ホジン役、ソン・ヒョンジュ パク・ソンヨル役、ユン・ギョンホ オ・ビョンホン役
オープニング曲:ハ・ヒョヌ「Stone」
エンディング曲:Gaho「Start」
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