「にじいろカルテ」1話。ロボット型ヒロインじゃない高畑充希を待ち望んでいた!

高畑充希主演「にじいろカルテ」。東京の大病院の救命救急の現場から、山奥にぽつんと佇む虹ノ村診療所やってきた医師・紅野真空(高畑充希)には“ある秘密”があったーー。村人から歓迎され始まった虹ノ村での生活。外科医・浅黄朔(井浦新)と、超絶優秀ながらすぐキレる若き前髪ぱっつん看護師・蒼山太陽(北村匠海)と、ひとつ屋根の下で暮らすことになり……。
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1月21日に高畑充希主演「にじいろカルテ」(テレビ朝日 木曜夜9時)がスタートした。テレ朝木曜21時枠の医療ドラマと言ったら「ドクターX ~外科医・大門未知子~」のようなスーパードクターをイメージしがちだが、今作は違う。主演の高畑は「演じるのは医者ですが、これはヒューマンドラマです」(産経ニュース/1月24日)ときっぱり。そのつもりで見ると、色々と腑に落ちるところがあるのだ。それにしても、ロボット型ヒロインじゃない役の高畑をどれだけ待ち望んでいたか。

虹ノ村は夢の世界か?

医療過疎地域で働くドクターを描くドラマだ。真っ先に思い浮かんだのは「Dr.コトー診療所」(フジテレビ系)だった。ただ、「Dr.コトー」は地元民から信頼を得るまで苦労したが、虹ノ村にやってきた紅野真空(高畑充希)は最初から村人に歓迎された。

彼女がこの村にやってきたのには理由がある。東京の大病院の救命救急現場で働いていた真空は勤務中に倒れた。現在の医学では完治が望めず、5年生存率60~80%とされる多発性筋炎と発覚したのだ。休職を余儀なくされた真空は内科医を募集していた虹ノ村に病気の事実を隠して応募、すぐに採用された。

真空が虹ノ村へ向かうため乗ったのはバス。その道中はどこかファンタジーだった。車中からの景色は絵本を見ているかのように美しく、映像にはエフェクト効果がかかっていた。「空を持つ柱前」「森の守護神前」等の停留所の名称には現実味がない。そもそも、虹ノ村ホームページに記された郵便番号200なんて実在しないし、虹ノ村は存在しない。ここは真空が医師として再スタートを切る夢の世界、別世界に思えてくるのだ。

真空の歓迎会はなぜ2度開かれたか

村人たちは個性の強い面々ばかりだ。外科医の浅黄朔(井浦新)と看護師の蒼山太陽(北村匠海)は犬猿の仲で、すぐに口論を始めてしまう。

太陽 「この人(朔)は医者とかじゃなくて田舎暮らしとか畑とかやりたくて(虹ノ村に)来たんですよ。それだけの理由で!」
 「まあ、そういうことにしとくか」
太陽 「自分で言ったんでしょうが!」
 「いいか? 患者もそうだけど語る言葉ってのは全てが真実とは限らないんだぞ」

緑川日出夫役を演じる泉谷しげるを見ると、彼が同じような役を演じた「Dr.コトー」をやっぱり思い出してしまう。自分についての話なのに「~らしい」と語尾に付ける橙田雪乃(安達祐実)は認知症を患っている。だから、夫の晴信(眞島秀和)は何枚も写真を撮っていたし、真空の歓迎会を2度も開いたのだろう。

コロナ禍に描かれるべき医療ドラマ

初回は一夜にして2人の急患が出た。足を滑らせて崖下に転落した白倉博(モト冬樹)は低体温症になり、一方で浴室でのぼせて熱中症になった幼児もいる。この窮地を切り抜けようと村人たちは手伝った。雷雨で電気が止まったため発電機を用意し、熱中症の幼児のため大量の氷を用意したのは日出夫たち高齢者だ。「年寄りだから」「病気があるから」と自らに弱者のレッテルを貼らなくてもいいということ。

村人の優しさに触れた真空は自分を受け入れてくれたみんなに後ろめたさを感じ、病気の事実を打ち明けた。てっきり病気を隠したまま数話進むかと思っていたが、このタイミングで彼女は告白した。月1で東京に戻るのは検査が理由なのに「母の介護のため」と偽った真空。これ以上事実を隠すのは辛い。だけど、難病の自分を受け入れてもらえるか不安だ。もう、自分はここでしか生きられないのだから。
虹ノ村は真空の秘密を知った上で彼女を受け入れた。「語る言葉は全てが真実とは限らない」と、みんなわかっていた。

「いいんじゃねえの? 医者で患者かあ、最強じゃん!」(朔)

東京では「うちに必要なのは患者じゃない」と突き放された真空が、この村では「医者で患者は最強」と迎え入れられた。今作はコロナ禍に描かれるべき医療ドラマだ。医師だって人間である。いつ患者になるかわからないし、いつコロナに感染してもおかしくない。そんな時代にこそ伝えたいストーリー。だから、村人を温かく描いているのだろう。

ただ、「医者で患者」の真空に立ちふさがる困難もいつか描く必要がある。難病を抱える真空に用意された部屋が梯子を登った屋根裏だったのは、それが目的のはずだ。

優しい雰囲気に包まれたドラマだ。しかし、最終話までに真空は「5年生存率60~80%」の現実と向き合うことになる。こんな時代のドラマだけにハッピーエンドを期待しているのだけれど、果たして。

次回はこちら:高畑充希「にじいろカルテ」2話。先回りして謝る真空の生きづらさを溶かす「ちゃんと怒られろ!」

ライター。「エキレビ!」「Real Sound」などでドラマ評を執筆。得意分野は、芸能、音楽、(昔の)プロレスと格闘技、ドラマ、イベント取材。
フリーイラストレーター。ドラマ・バラエティなどテレビ番組のイラストレビューの他、和文化に関する記事制作・編集も行う。趣味はお笑いライブに行くこと(年間100本ほど)。金沢市出身、東京在住。
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