高畑充希「にじいろカルテ」4話。命の順番を決めるトリアージの難しさ。井浦新のサングラスの意味

高畑充希主演「にじいろカルテ」。東京の大病院の救命救急の現場から、山奥にぽつんと佇む虹ノ村診療所やってきた医師・紅野真空(高畑充希)には“ある秘密”があったーー。隣村のキャンプ場で土砂崩れが発生、負傷者の優先順位を決めるトリアージが必要だといいます。普段はがさつなおじさん浅黄朔(井浦新)の秘めた過去とは……。

2月11日放送「にじいろカルテ」(テレビ朝日 木曜夜9時)の第4話が取り上げたのはトリアージという難しいテーマ。大きな事故現場で治療する負傷者の優先順位を決める作業のことだ。

虹ノ村の人たちは何かしら心の傷を負っている。普段はがさつなおじさんとして振る舞う浅黄朔(井浦新)も同様だった。

虹ノ村には朔が思い描く未来に近い風景があった

朔は毎日畑仕事をしながら、妻の沙織(佐々木希)の記憶と向き合っていた。作業の手を止めて思い出す。沙織が収穫した野菜を笑顔で頬張っていた朔。妻と居たころの彼は畑仕事に興味がなかった。元々は沙織の趣味だった。

医師として爆破事件の現場を訪れた朔。そこには、夫のためにサングラスを買いに来ていた沙織がいた。彼女は「大丈夫」と朔に告げ、他の被害者を処置するよう夫を促した。その場を離れた朔は「こいつは絶対に助けてください」と刑事が指した怪我人の命を助けた。しかし、その間に沙織は息を引き取る。朔が処置したのは爆破事件の犯人だった。彼は犯罪者の命を救い、最愛の妻を救うことができなかったのだ。
「医者が順番を決めるんだよ。治療の優先順位、決めるんだよ。みんな怪我人だけどさ、緊急度の差を決めるんだよ。大変なことだよ、命の順番だから。でも、決めなきゃいけないんだよ。キツイよ……」(霧ヶ谷)

黒色のトリアージが付けられた沙織を見た朔は、妻に駆け寄った。もう蘇生術を行わない医師を、朔は「何やってんだよ!」と押しのける。その言葉には沙織をちゃんと診なかった夫の後悔の念も含まれていた。朔がいつも掛けているあの冗談みたいなサングラスには意味があったのだ。

虹ノ村の診療所に来た朔は、裏の畑を見て泣き崩れた。沙織の野菜の美味しさに驚き、畑仕事に前向きになったところだったのだ。虹ノ村には彼が思い描いていたはずの未来に近い風景があった。

トリアージが取り上げられた理由

隣村のキャンプ場で土砂崩れが起き、朔たちにトリアージの要請が入った。朔は紅野真空(高畑充希)に「患者の『大丈夫』という言葉は信じるな。先入観で診るな」と指示を出した。「俺はどうしたらいいですか?」と問う蒼山太陽(北村匠海)には、こう返答している。
「そばにいてくれ、俺たちの。不安なんだ、1人じゃ。見落としてることがあるかもしれない。気付いたら何でも、無駄でもいいから言ってくれ」

沙織の異変に気付かず、妻を亡くした朔は不安だった。真空と太陽と共にトリアージというトラウマにこれから向き合う。朔は1人の負傷者に話しかけた。彼女が「私は大丈夫です」と答えると、朔は激昂する。
「それはあなたが決めることじゃない! 大丈夫かどうかは僕が判断します。ちょっと、こっちに座ってください」
朔の脳裏に浮かんだのは沙織だった。

2018年放送「アンナチュラル」(TBS)で井浦新は法医解剖医・中堂系を演じている。結婚間近の恋人が愉快犯に殺された、という役柄だ。心に闇を抱えながら前を向いて生きる役を演じる井浦は本当に上手い。

コロナによって医療現場崩壊の危機に陥る中、トリアージの必要性が説かれたことがあった。4話を制作するにあたり、この現実もストーリーに影響を与えた気がしてならない。

全てを知ろうとしない真空と太陽の優しさ

現場の作業を終え、虹ノ村に戻る3人。帰りの車中で真空と太陽は朔の激昂の理由を問わなかった。村に来るまでの過去を詮索せず、最低限の距離を保つ謙虚さは優しさだ。

3人は桃井佐和子(水野久美)の家へ寄り、ナスを使ったトーストとタルトを美味しそうに食べた。医療ドラマにおいて食事シーンは生命力を表現する大事な場面である。

そして、3人は佐和子が真空の留守電に入れようとした「かえるの合唱」を輪唱した。横を見ると、朔が歌いながらサングラス越しに涙を流している。それに気付いているのに真空と太陽は何も言わなかった。

ブヨに刺されるも「防虫対策をしているから大丈夫」と言ったため、打ち明けられない太陽のすったもんだが4話のサイドストーリーだった。隠すほどのことではない太陽の秘密と、語るには辛過ぎる朔の過去が対照的に描かれている。太陽の虫刺されを笑い話にして盛り上がった3人と、朔の全てを知ろうとしない真空と太陽の優しさ。人には悲しい過去や現実がある。

ライター。「エキレビ!」「Real Sound」などでドラマ評を執筆。得意分野は、芸能、音楽、(昔の)プロレスと格闘技、ドラマ、イベント取材。
フリーイラストレーター。ドラマ・バラエティなどテレビ番組のイラストレビューの他、和文化に関する記事制作・編集も行う。趣味はお笑いライブに行くこと(年間100本ほど)。金沢市出身、東京在住。
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