高畑充希「にじいろカルテ」2話。先回りして謝る真空の生きづらさを溶かす「ちゃんと怒られろ!」

高畑充希主演「にじいろカルテ」。東京の大病院の救命救急の現場から、山奥にぽつんと佇む虹ノ村診療所やってきた医師・紅野真空(高畑充希)には“ある秘密”があったーー。村人から歓迎され始まった虹ノ村での生活。頭が良く気遣いができる真空の診療所は、いつでも村人たちが大行列を作り大人気。忙しいなか、少し無理をしている真空。周りの人たちの心配をよそに診療を続けるものの、診断ミスをしてしまい……。

1月28日に第2話が放送された「にじいろカルテ」(テレビ朝日 木曜夜9時)のホームページへ行くと、ヒロインの紅野真空(高畑充希)を“ポンコツ女ドクター”としていることがわかる。彼女は「ドクターX ~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系)のようなスーパードクターではなく、不完全な人間だ。

“ポンコツドクター”だから患者とも支え合って

2話で印象的なのは、外科医の浅黄朔(井浦新)、看護師の蒼山太陽(北村匠海)との同居生活の中で突然キレてしまった真空の意外な一面だった。朝食の準備をする朔と太陽を手伝う真空はジャガイモ切りを担当することに。しかし、あまりに不器用な真空の包丁さばきに唖然とした朔は、思わず言いかけた。

朔 「ちょっ、お前さあ……。それでもお前……!」
真空 「あっ、あの……『それでも女かよ』とか『女のくせに』とか言われたら、私、あの……ちょっとキレちゃうかもしれないので。もしかしたら……殴っちゃうかもしれないので……! 私もね、お2人に対して『男のくせに』とか『それでも男かよ』とか言わないので。だから、本当にお願いしますね」

この出来事により、3人の共同生活では「~のくせに」の言葉が禁句になった。もしも「~のくせに」と口にしたらポイントが加算され、10ポイント貯まった者は他の人の言うことを何でも聞くというポイント制が導入されたのだ。なのに、言った傍から真空は朔に対し「男のくせに」と言ってしまった。「~のくせに」のNGを提唱した真空自身も、ときには注意されることがある対等のトライアングル。互いに成長し合っていく関係性だ。

彼女の不完全さは私生活だけでなく、医師としても同様だった。診療所には連日行列ができ、内科医の常駐を村人たちが待望していたことがわかる。子どもからお年寄りまで多くの人が真空を頼りにしている。一方で、真空の病気を知る緑川嵐(水野美紀)や霧ヶ谷氷月(西田尚美)らは彼女の体調を心配していた。

今回、真空は糖尿病を患う筑紫次郎(半海一晃)の診断ミスをし、心臓の発作を引き起こさせてしまった。落ち込む真空を救ったのは、桃井佐和子(水野久美)が留守番電話に吹き込んだ「森のくまさん」の歌声だった。電話依存症で話相手が欲しい佐和子のために「いつでも電話してきてください」と力になろうと思っていた真空が、結果的に佐和子から支えられていた。

2話が内包していたのは、立場を超えてみんな対等に支え合っているというメッセージだ。ミスした者を切り捨てるのではなく、救いの手を差し伸べ合いながら生きる。当たり前のようで当たり前とは言い切れない優しさを伝えようとしていた。

真空を救う「ちゃんと怒られろ!」

真空は気遣いの人であり、頭が良過ぎる。

行列ができるほど大勢の患者がいるのに、1人1人じっくり時間をかけて診察する真空。そのせいで患者の待ち時間は長くなり、体調の悪い次郎は遠慮して診療所に来られなかった。彼女の診療方法について話をしようと朔が声をかけると、先に真空が口を開いた。
「わかってます! 1人1人に時間かけ過ぎなの、わかってます。すいません。下手くそで要領悪くて……」(真空)

真空の診断ミスで次郎が別の病院へ運ばれる際、パニックなった真空を朔は笑わせて落ち着かせようとした。

真空 「大丈夫です。あの……私が行くので。私の患者さんなので……大丈夫です」
朔 「なんで、自分で全部言うんだよ! 可愛くないぞ。ちゃんと怒られろ、俺に!」

1人で全てを抱え込もうとする真空。責任感があるから、怒られる前に自分から謝ってしまう。見るからに彼女は生きづらそうだ。真空は支え合って生きる虹ノ村へ来ることが必然だった気がする。「ちゃんと怒られろ!」という朔からの一喝は、彼女が救われるための第一歩になると信じたい。

真空が抱える病気についても同様だ。今回、次郎は体調が悪いのに「大したことない」と無理を続けた。真空も同じタイプに見えるのだ。すでに彼女は首に湿疹ができているし、指の動きに違和感を覚えている。心配する村の人たちをよそに1人で抱え込んでしまっている。だからこそ、「もっと俺たちに頼れ!」と朔から怒鳴られる必要があった。「ちゃんと怒られろ!」の激高には、朔の優しさが詰まっていた。

今夜放送の3話は、3年前から認知症を患う橙田雪乃(安達祐実)とその夫・晴信(眞島秀和)のエピソード。雪乃がいなくなると、晴信はいつも大慌てで妻の居場所を探していた。
真空が患う多発性筋炎は今の医学で完治する手立てがないとされるが、認知症も未だ決定的な治療法が見つかっていない。それでも懸命に生きる橙田夫婦の愛が描かれる3話を、しかと見届けたい。

次回はこちら:高畑充希「にじいろカルテ」3話「何とか付き合っていくしかない」のが家族

■「にじいろカルテ」全話レビュー
1:「にじいろカルテ」1話。ロボット型ヒロインじゃない高畑充希を待ち望んでいた!

ライター。「エキレビ!」「Real Sound」などでドラマ評を執筆。得意分野は、芸能、音楽、(昔の)プロレスと格闘技、ドラマ、イベント取材。
フリーイラストレーター。ドラマ・バラエティなどテレビ番組のイラストレビューの他、和文化に関する記事制作・編集も行う。趣味はお笑いライブに行くこと(年間100本ほど)。金沢市出身、東京在住。
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