「3年B組金八先生ファイナル」金八のピンチに謎の組織「3B」が立ち上がる

学園ドラマの金字塔、「3年B組金八先生」。1979年から2011年まで、なんと32年間にわたり放送されました。全8シリーズに加えて12回のスペシャルを合わせて、全185話あり、現在、動画配信サービス「Paravi(パラビ)」で全話を順次配信しています。今回は2011年に放送された「3年B組金八先生ファイナル~最後の贈る言葉」。まさかのジャニーズ先輩が大集合!

動画配信サービス「Paravi」で順次配信されている「3年B組金八先生」。今月配信されるのは、完結編となった2011年放送の「3年B組金八先生ファイナル~最後の贈る言葉」。
「ロッキー・ザ・ファイナル」など、完結編のタイトルに「○○ファイナル」とつけるのが流行っていた時期とはいえ、微妙なタイトル!

連ドラとしての最終シリーズとなった第8シリーズ(2008年)前後から、テレビ番組やインタビュー記事などで武田鉄矢が「金八の定年退職に合わせてシリーズを完結させたい」という由の発言を繰り返していたため、シリーズ終了は覚悟していたが、残念だったのは完結編が連ドラではなく単発のスペシャルドラマになってしまったこと。

4時間スペシャルという破格の扱いではあったものの、通常は2クール、半年間放送してきたシリーズだけに少々物足りなさを感じてしまうのだ。

21世紀に昭和の不良が登場したら

時間的な都合から、当然、生徒ひとりひとりと向き合う時間はなく、明確なメイン生徒が設定されている。Hey! Say! JUMPの岡本圭人演じる景浦裕也だ。
リアル父親の男闘呼組・岡本健一はスペシャル4「いじめられっこ金八先生」で生徒を演じていたため、親子二代での生徒役ということになる。

景浦の役どころは、絵に描いたような不良!
カツアゲをするわ、椅子をぶん投げるわ、教師をぶん殴るわ……。校内暴力が吹き荒れていた第2シリーズ(1980年)「腐ったミカンの方程式」時代にタイムスリップしたかのような、古典的な問題児なのだ。

かつての不良キャラといえば、怖がられつつも、筋の通った生き様からどこか憧れられるような存在として描かれることが多かったが、さすがに2011年ともなると昭和スタイルの不良なんて「DQN」と呼ばれてバカにされる存在でしかない。

3年B組のクラスメイトたちは、やたらと暴力を振るう景浦を恐れてはいるものの、離れた場所から「バーカ」「消えろ」「帰れー!」と罵声を浴びせている。不良の景浦がクラスからハブられているような状態なのだ。

ジャニーズのパイセンが次々登場

かつての金八だったら、こんな不良にも体当たりでぶつかって問題を解決したものだが、本作では定年退職間近となった金八の“老い”も描かれている。
若かった頃の気分で景浦に立ち向かうも、アッサリぶん殴られてしまい、その上、狭心症の発作が出て入院してしまう。

問題児の景浦はもちろん、異質な者を簡単に排除してしまう現代っ子なクラスメイトたちにも問題があると考えてはいるものの、解決の糸口が見つからず、いつになく弱気になってしまう金八。

さらにPTAからも、こんなことを言われてしまう。

「在学中に同級生の子どもを生んだり、よその学校の卒業式に乗り込んでいって逮捕される子がいた。他にも母親を刺したり、覚醒剤で逮捕された子がいたそうですね。しかもそうした問題児は坂本金八先生のクラスに集中していると聞きました」

言ってはいけない『金八』シリーズの不都合な事実! そりゃあドラマだから……。

心身ともにボロボロの金八を救ったのが3年B組の卒業生たち。完結編にふさわしく過去の有名生徒たちが続々と登場する。

「15歳の母」の浅井雪乃(杉田かおる)&宮沢保(鶴見辰吾)、「腐ったミカンの方程式」の加藤優(直江喜一)あたりは納得の人選だが、なぜかジャニーズ所属の卒業生ばかり次々と登場するジャニーズメドレー的なパートがあり、「色々な忖度が働いたのでは!?」と勘ぐってしまった。

まずは第1シリーズで金八と一緒に長ランを着て街を闊歩した星野清役のマッチ先輩。
授業をさぼって川原に寝転ぶ景浦の前に現れ、

「金八っつあんを泣かせるようなことをしたら、オレたちがただじゃおかないからな」
「オレたち?」
「3年B組だ!」

夜道で他校の生徒を恐喝し警察に追われる景浦。それを目撃した深川明彦(亀梨和也)は兼末健次郎(風間俊介)に電話連絡。自動車でさっそうと現れた健次郎は、景浦の逃走を助ける(いいのか!?)。

「あんまり先生に面倒かけるなよ。先生困らせたらみんな黙ってないぞ」
「みんな?」
「3Bだ!」

さらに、ファミレスでチンピラたちとつるんでいるところに現れたのは、成迫政則(東新良和)、長谷川賢(加藤シゲアキ)、長澤一寿(増田貴久)たち第7シリーズの卒業生。

「景浦君だよね? 時間がないんだ、さっさとはじめよう。受験勉強だよ」
「オレたちキレたら怖いよ」
「アンタらも3B?」
「そう、3年B組!」

言っておくが、みんな景浦とは初対面だ。

以前からこの地域にはまったくプライバシーがないとは思っていたが、ちょっとした不良中学生の情報が勝手に共有され、卒業生たちがストーカーのごとくつきまとうって……3年B組とはどんな秘密組織なのか!?

ドラマの中の景浦も相当戸惑っただろうが、それ以上に、俳優デビュー作でジャニーズの大先輩たちから次々と恫喝される岡本圭人の気持ちを考えると気の毒になってくる。
この上、第1シリーズに越智はるみ役として出演していた現・ジャニーズ事務所社長の藤島ジュリー景子まで出てきていたら、さすがにハートが堪えられなかっただろう。

連ドラだったら……

警察に逮捕され、鑑別所送致までされた問題児・景浦だったが、ジャニーズのパイセンたちの恫喝もありスッカリと心を入れ替えて高校受験に合格した。4時間のドラマ中(CMを考えると3時間半くらい)、ここまでで約2時間半。

メインのストーリー以外にも、金八の娘・乙女(星野真里)の結婚式や、歴代の先生たち大集合、新潟県で会社を経営している加藤優を訪ねる金八など、要素が盛りだくさんのため、どうしても生徒とのエピソードは薄々になってしまう。

初の、金八を男性として見ている女生徒。屋上で「ハレ晴レユカイ」のオタ芸を練習するオタクたち、メチャクチャ気弱そうなのに黒板に「地獄に落ちろ。香坂(先生)死ね」なんて落書きをする男子生徒。それを根に持って、実験と称して生徒に100Vの電流を流そうとする理科教師……。

「ファイナル」だけに生徒役も気合いを入れてオーディションしたようで、いいキャラが揃っていたのだが、景浦以外の生徒はほぼモブキャラのような扱い。いくらでもエピソードを膨らませられそうなのにもったいない。

連ドラとして、半年間かけてこの生徒たちを見てみたかったといまだに思ってしまう。

1975年群馬生まれ。各種面白記事でインターネットのみなさんのご機嫌をうかがうライター&イラストレーター。藤子・F・不二雄先生に憧れすぎています。
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