「3年B組金八先生」中居&木村をオーディションで落とすジャニーズの無駄遣い!第3シリーズ配信開始

学園ドラマの金字塔、「3年B組金八先生」。1979年から2011年まで、なんと32年間にわたり放送されました。全8シリーズに加えて12回のスペシャルを合わせて、全185話あり、現在、動画配信サービス「Paravi(パラビ)」で全話を順次配信しています。今回は、隠れた名作シリーズが見られる第3シリーズを北村ヂンさんが考察します。
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動画配信サービス「Paravi」で順次配信されている「3年B組金八先生」。今月配信されたのは昭和の終わり、1988年に放送された第3シリーズ。
第2シリーズ終了後、定期的にスペシャルは放送されていたものの、連ドラとしては7年振りとなる本作。ただ、非常に地味なシリーズなので、金八マニアの間でも話題に上ることは少ない。
というのも『金八先生』は通常、2クール半年間かけて生徒たちの成長を丁寧に描いていくのだが、本作は人気俳優となった武田鉄矢のスケジュールを半年間押さえるのが難しく、1クールのみの放送となっている。描かれるのは3年生の2学期のみ、なんと受験や卒業式がないのだ!

その後、『スペシャル7』で本作の生徒たちの進路が描かれるものの、やはりちょっと物足りない。
さらに、本作の舞台はお馴染みの桜中学ではなく、同じ学区の松ヶ崎中学。桜中学を舞台にすると、どうしても愛着のある卒業生に注目が集まってしまうため、金八を転任させることで再び現役の生徒たちにスポットを当てたいという脚本家・小山内美江子の意向があったようだが、桜中学にいない金八先生には何となく違和感がある。

しかし、第3シリーズが駄作なのかというとそんなことはない。地味ながらも、隠れた名作シリーズなのだ。

金八家族の団らんにウルウルしてしまう

本作の重要なポイントのひとつは、金八の家庭が描かれていること。
第2シリーズ後に養護教諭の天路里美(倍賞美津子)と結婚した金八だったが、第4シリーズ開始時に里美は既に亡くなっている。夫婦+長男・長女という4人での家庭生活が描かれているのは、レギュラーシリーズでは第3シリーズのみなのだ。
妻の里美が、金八の相談に乗ったり、ツッコミ役になったり、甘えたり、時に派子どもの教育方針で言い合いになったり……。第4シリーズ以降、シングルファーザーとして孤軍奮闘している金八の姿を知っていると、第3シリーズの幸せそうな家族の団らんを見るだけでグッときてしまう。

ジャニーズ勢を無駄遣いしすぎ!

意外な有名人が出演していることでお馴染みの金八シリーズだが、第3シリーズの出演者は一際豪華だ。
舞台が桜中学ではないので、カンカンこと乾先生などお馴染みの教師たちは登場しないのだが、本作の教師たちもなかなかクセのある面々だ。
金八と対立するイヤミな教頭先生に橋爪功。職員室でも恐れられる怖~い数学教師に室井滋。3年B組の副担任として金八に指導される頼りない新米教師に石黒賢。かつては若さゆえに、時にはルールを無視して突っ走っていた金八が、若手を指導する中間管理職になっているというのもポイントだ。

もちろん、生徒役も粒ぞろい。第3シリーズ放送開始直前の8月に公開された映画『ぼくらの七日間戦争』で注目を集めた菊池健一郎をはじめ、浅野忠信、萩原聖人。ジャニーズ枠ではV6の長野博、元・SMAPの森且行。今となってはこのメンバーを一同に集めるのは不可能だろう(大人の事情もあるが)。
ちょい不良気味なクラスの中心的生徒を演じた菊池健一郎や、優等生の弱味を握りカンニングさせるよう要求した萩原聖人にはそれなりに見せ場があったものの、いかんせん全12話ということもあり、ジャニーズ勢+浅野忠信にはまったく見せ場がないという、後の人気者の無駄遣いっぷりもスゴイ。

長野と森は、女子ウケする髪型や脱毛に興味津々のチャラい生徒役。女子に媚びない、本当の男らしさを説く金八に対して、

「でもさぁ、今、男臭いのって本当に流行ってないよ」(森)
「先生、嘘だと思ったら原宿歩いてみなよ。男臭いヤツなんてみんな端っこ歩いてるよ」(長野)

と、反論したのがハイライトだ。
浅野忠信に至っては、栗色の髪を「卵シャンプーで洗ってるか?」と金八にいじられたのが最大の見せ場。セリフがあったのかなかったのか……レベルの扱い。岩井俊二作品などで注目を集めるのはまだまだ先の話だ。

ちなみに本作の生徒役オーディションにはSMAPから、森とともに中居正広、木村拓哉も参加していたが、落選している。……なんちゅう無駄遣い! ジャニーズ枠として中居や木村が出演している『金八先生』も見てみたかった(第5シリーズのオーディションでは嵐の二宮和也も落選している)。

地味に中学生と向き合う名作シリーズなのだ

第1シリーズでは中学生の妊娠・出産。第2シリーズでは校内暴力をテーマにしていたが、第3シリーズのテーマは保健室登校や無気力な中学生たちという地味なもの。どのくらい地味かというと、7年振りの連ドラとなった第1話のサブタイトルが「ウンコの旅」というくらい。

朝食をしっかりと食べて、「バナナのような」「バットのような」ウンコをしようという
食育をテーマにした回だ。

その他のエピソードも、真面目に教室掃除をしない生徒たちにキレる金八。張り切って給食のお残しを禁止すると宣言する新米教師の石黒賢。過保護な母親に振り回される生徒……。
妊娠・出産や放送室占拠といったセンセーショナルな事件と比べると、地味にも程があるエピソードばかりだが、その分、地に足の付いたリアルな中学生と向き合う金八を堪能できる。
武田鉄矢としても、『金八先生』に続いて映画『刑事物語』シリーズもヒットさせ、1991年には『101回目のプロポーズ』も控えている時期。武田鉄矢最盛期を楽しめるシリーズとも言えるだろう。

1975年群馬生まれ。各種面白記事でインターネットのみなさんのご機嫌をうかがうライター&イラストレーター。藤子・F・不二雄先生に憧れすぎています。
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