木村拓哉「BG~身辺警護人~」4人揃って「誤差なし」最終回をかみしめる

惜しまれながらも7話で最終回となった「BG~身辺警護人~」新シーリーズ。主演の木村拓哉演じるボディガード島崎章とバディの高梨雅也(斎藤工)、元同僚・菅沼まゆ(菜々緒)と沢口正太郎(間宮祥太朗)の「誤差なし」シーンも。もう一度かみしめたい名シーンの多かった最終回を振り返ります。

「あなたの命が危ないので、お受けします。用心棒なので」

木村拓哉主演のドラマ「BG~身辺警護人~」が最終回を迎えた。コロナ禍によって全7回に短縮することになり、制作現場は非常に大変だったと思うが、とても見ごたえのある最終回になっていた。

久々の4人揃って「誤差なし」

最終回は、島崎警備の島崎章(木村)とバディの高梨雅也(斎藤工)がいろいろありながらも、依頼者のKICKS CORP.代表・劉光明(仲村トオル)を護り抜くことに。途中でかつての同僚だった菅沼まゆ(菜々緒)と沢口正太郎(間宮祥太朗)も合流。久々に4人揃って「誤差なし」を披露した。

どうして島崎が高梨を崖下に投げ飛ばしたのか、同じくどうして高梨と劉が入れ替わったのか、どうして加藤(中村織央)が執拗に島崎を狙ったのか(逆恨み?)、海外逃亡をしようとした劉が自首を決意した動機などはよくわからなかったが、なんとなく盛り上がったのでノー問題。「三密」を避けるよう工夫が凝らされた舞台設定、大掛かりではないけれど痛みが伝わるアクションなどがギュッと詰まった展開だった。

殉職した村田課長(上川隆也)や警視庁警備部だった落合(江口洋介)、政治家の立原愛子(新聞記事に名前と談話のみ)などが登場したのも、シーズン1から観ていたファンからしてみたら嬉しかったサービスだろう。さすが、ボディガードはサービス業。最後は悪徳政治家の桑田(小木茂光)が議員辞職に追い込まれて、視聴者は溜飲を下げることができたはず。華々しい市川海老蔵登場シーンも良かった。あのビルは『半沢直樹』の「電脳雑伎集団」が入っているビルと同じ。

ボディガードとは「信じて護る」仕事

見ごたえがあったのは、高梨、菅沼、沢田、劉の前で、島崎がボディガードという職業について語る場面だ。

「高梨。お前、俺に聞いたよな。なんでボディガードなんかに必死になれんのかって。たぶん、人を信じられるかどうか、問われてるからじゃないかな。毎回、いろんな依頼人に会って、否が応でも人を信じることに全力を傾ける。たとえ、敵対する人間でも」

たしかに、投資詐欺の容疑者(豊原功補)だったり、危険な行動を繰り返す盲目のピアニスト(川栄李奈)だったりと、多少怪しかろうがなんだろうが、島崎は愚直にクライアントを護り続けてきた。

「信じて護る。今の依頼人を護ることが、その人の未来を護ることになる。それが俺たちの仕事なんじゃないの」

身の安全を護ることは、その人の意志や日常、希望を護ることにつながる。だけど、まずはクライアントを信じることから始めるしかない。たとえ、裏切られても、それはそれで仕方がないというのが島崎のオールドファッションな考え方である。島崎は若い3人からは一斉に反論をくらうが、振り切るようにこう言い放つ。

「嘘かどうかなんてわかんないよ。だから信じてみるしかないんだよ! じゃなかったら、護るのに命なんか賭けられないだろ」

島崎の不器用な生き方がそのまま表れている言葉だった。30歳前後の高梨、菅沼、沢口はギリギリついていけるが、“令和の若者”である中島(道枝駿佑)にはとても理解できない考え方だろう。

ジャストフィットな服が似合う47歳の木村拓哉

「BG」は島崎と息子・駿(田中奏生)との親子関係が強調されていたように、チートでも破天荒でもない、ひとりのプロフェッショナルである中年男・島崎章を描こうとしていたドラマだった。

宇宙にも南極にも行かず、アンドロイドでも天才でもなく、鼻をすすることも意味なく無作法であることも強制されることはないから、こちらとしても安心して観ていられる。無理して今風のルーズシルエットの服を着た記号としての“キムタク”ではなく、大人らしいジャストサイズの衣装が似合う等身大の47歳の俳優・木村拓哉が十分に活躍できるシリーズだからこそ、今後のシリーズ化にも期待が寄せられるのだろう。シーズン3を楽しみにして待ちたい。

そうそう、笠松先生(市川実日子)とのロマンスは実らずに終わったけど、シーズン3は別のヒロインが登場するような気がする。そんな「寅さん」みたいな木村拓哉もまた面白いかもしれない。

ライター。「エキレビ!」などでドラマ評を執筆。名古屋出身の中日ドラゴンズファン。「文春野球ペナントレース」の中日ドラゴンズ監督を務める。
フリーイラストレーター。ドラマ・バラエティなどテレビ番組のイラストレビューの他、和文化に関する記事制作・編集も行う。趣味はお笑いライブに行くこと(年間100本ほど)。金沢市出身、東京在住。
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