木村拓哉×斎藤工「BG~身辺警護人~」2話 川栄李奈を抱きかかえたままの“階段落ち”の衝撃

新型コロナウイルスの影響で放送が延期されていた「BG~身辺警護人~」新シーリーズ。主演の木村拓哉演じる島崎章がフリーのボディガードとして今回守るのは、盲目の天才ピアニスト。自分自身を傷つけようとするのには、事務所の社長を務める姉との関係に問題が……。島崎は難しい依頼人をどう守る?

「本当に俺と組む気?」
「何回言わせるんですか」
「いや、でも、今まで通りまともなクライアントとは限らないし、危険な案件も増えるかも」
「ま、食わしてくれたらいいですよ」

木村拓哉主演の「BG~身辺警護人~」。あらゆる危険からクライアントを守るため、丸腰で立ち向かうボディガードたちの活躍を描く。

第1シーズンでは民間警備会社に所属し、チームとともに行動していた主人公の島崎章(木村)だが、第2シーズンでは組織から離れて個人として活動することに。警察の権力も拳銃も手錠も持たない上に、仲間も失ってしまった島崎だったが……。先週放送された第2話では、島崎がかつての仲間、高梨雅也(斎藤工)とバディとなるまでの姿が描かれた。途中でちょっと斎藤工が押しかけ女房にも見えたりしたのだが、「食わしてくれたらいいですよ」って!

用心棒・木村拓哉

今回のクライアントは、盲目の天才ピアニスト・守尾絵麻(川栄李奈)。事務所社長で彼女の姉でもある美和(谷村美月)からの依頼だった。もともと島崎が以前所属していたKICKSガードが請け負っていたのだが、降りることが決まったため、沢口正太郎(間宮祥太朗)が独立した島崎に仕事の話を持ってきたのだ。

国際コンクール出場を控えた絵麻だったが、自ら危険な行動を繰り返していた。つまり、今回のミッションは彼女自身から彼女を守ること。

「正気ですか! ボディガードは外の脅威からクライアントを守る仕事です。クライアント自身が脅威だなんて聞いたことありません」
「守ることに変わりねぇだろ。用心棒なんだから」

ロジカルな高梨に対して、ぶっきらぼうな島崎。ここで島崎に気の利いたことを言わせることもできたかもしれないが、スタッフはあえてそうしなかったように見える。口を開けばカッコいい名ゼリフが飛び出るスター・キムタクを描いているのではなく、47歳のおじさん俳優・木村拓哉が演じる職人的なボディガードを描いているのだとあらためて感じる。

姉妹が弾いていたピアノ曲とは?

逆恨みで襲ってきたピアノ講師の桜井(阿部翔平)の襲撃を排除するアクション(川栄李奈を抱きかかえたまま“階段落ち”を披露した木村拓哉がすごかった)はあったものの、基本的に第2話は心の話。

盲目の天才ピアニストとして売り出された妹・絵麻と、亡くなった親代わりとして彼女のために人生を捧げる姉・美和。絵麻が危険な行動を繰り返すのは、美和の振る舞いに納得がいかなかったからだ。自分は目が見えないことを武器にしているわけではない。また2人で楽しくピアノを弾きたい、と。島崎は2人の関係に介入し、姉妹の関係が元に戻るようサポートする。組織所属のボディガードなら明らかに越権行為だが、ただの用心棒ならそんなことだって可能になる。

恵麻がソロで弾いていたのは、シューマン作曲「ノベレッテン」作品12の第1番。大林宣彦監督の映画「ふたり」では、妹の石田ひかりが亡くなった姉の中嶋朋子の指導のもとで上達して発表する曲として使用されていた。このときも姉妹の曲だったというわけ。恵麻と美和が連弾していたのは、ドビュッシー作曲「小組曲」より「小舟にて」。ヴェルレーヌの詩集からインスピレーションを受けて作曲されたもので、自由闊達に宴を楽しむ人々の様子が描かれている。幼い姉妹が楽しげに弾くにはぴったりの曲。

高梨の微笑みと謎の男・加藤

クライアントの姉妹の絆をつなぎ合わせていくうちに、いつのまにか島崎と高梨の間にも強固なパートナーシップが築かれていたというのが第2話だった。

ポイントになっていたのは高梨の笑顔。押しかけ女房よろしく島崎と一緒に仕事しようとしていた高梨だが、素顔は無愛想極まりない男。島崎に指摘されて作り笑顔で仕事に臨むが、鋭い感覚を持つ恵麻にはバレバレである。

だが、彼が素の笑顔をもらすシーンがあった。恵麻と美和の関係を修復するため、恵麻を「誘拐」した島崎。高梨は島崎に言われるまま、憤慨する美和を連れて彼女たちがかつてピアノで遊んだ教会へと向かう。気持ちをぶつけ合い、和解する2人(さりげなく島崎が恵麻のビンタをブロックしたのは、美和を守るためではなく恵麻の指を守るため。さすが)。

連弾を始める姉妹を見守る島崎は、高梨のほうを振り返り、照れくさそうに「サンキュ」とだけ言う。島崎の後ろ姿を見ていた高梨は思わず微笑みを浮かべるが、すぐさま微笑んだ自分に戸惑う表情になるところがいい。今後、島崎と高梨がどんな名コンビぶりを発揮するのだろうか。通常より回数が少なくなるなんてもったいないと言わざるを得ない。

今後のキーパーソンになりそうな不穏な長髪のイケメン、加藤を演じているのは中村織央(「おずの」と読む)。大河ドラマ「おんな城主 直虎」では処刑寸前の瀬名(菜々緒)を助けるために突然現れた武将・石川数正役を演じて話題となった。Creepy NutsのMV「助演男優賞」ではニセR-指定を演じていた人といえば、わかる人も多いかも。ぜひチェックしてみてほしい。

ライター。「エキレビ!」などでドラマ評を執筆。名古屋出身の中日ドラゴンズファン。「文春野球ペナントレース」の中日ドラゴンズ監督を務める。
フリーイラストレーター。ドラマ・バラエティなどテレビ番組のイラストレビューの他、和文化に関する記事制作・編集も行う。趣味はお笑いライブに行くこと(年間100本ほど)。金沢市出身、東京在住。
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