だいじょうぶか「ハケンの品格」10年遅い価値観。未来が見えない会社と潰れた蕎麦屋がだぶる2話
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- 前回はこちら:「ハケンの品格」13年ぶりなのにアップデートされていない設定。コロナ以降をどう描く?
10年遅い「社員は家族」という価値観
6月24日に、篠原涼子主演「ハケンの品格」(日本テレビ、水曜夜10時)の第2話が放送された。
老舗の人気蕎麦店「京橋庵」とのコラボ商品を開発することになったS&F社。派遣社員の千葉小夏(山本舞香)は周囲が止めるのも聞かず、浅野務(勝地涼)の提出企画に自分の企画を紛れ込ませてもらうことに成功する。彼女の企画は先方に気に入られたが、後にその案は小夏によるものと社内で発覚。「派遣に責任なんか取れないから!」と、小夏の企画案は捨てられてしまう。しかしその後、小夏の企画書が急遽必要となり、速攻でまとめ上げた大前春子(篠原涼子)が自転車で会議場まで届けて……というのが第2話のストーリー。つまり、今回描かれたのは正社員と派遣社員の立場の違いだった。
小夏と、同じく派遣社員の福岡亜紀(吉谷彩子)は里中賢介(小泉孝太郎)に誘われて社食でランチを取ることに。すると、部下をぞろぞろと引き連れた社長の宮部蓮三(伊東四朗)が登場した。即座に立ち上がって、「お疲れ様です!」と頭を下げる社員たち。宮部は亜紀と小夏に声を掛けたが、2人が派遣社員とわかるや冷たい態度に。そして、正社員の井手裕太郎(杉野遥亮)を見つけると「我々は家族、君たちは私の息子だ。私は社員ファーストの会社を目指す!」と宣言した。「派遣に頼り過ぎると社員の能力は低下する」「派遣は稼いだら船を降りる、船を守るのは社員」が、宮部の考え方である。
この激動の時代に、S&Fは10年遅れている。お茶汲みやコピーを派遣に押し付け、名前で呼ばず「派遣さん」と声をかける正社員。能力よりも立場で人を判断する社風。古い価値観の人間しかおらず、この会社には未来がないと感じてしまう。
時代に飲み込まれた立ち食い蕎麦屋とS&Fがだぶる
老舗・京橋庵は伝統にあぐらをかかず、常に変化を求めていた。つゆに改良を加えるのはもちろん、食品会社とのコラボにも貪欲だ。
一方、春子と里中が立ち寄った立ち食い蕎麦屋は、安くておいしいお蕎麦を出す良心的なお店だったが、時代の波に飲み込まれて潰れてしまった。良いサービス、良い商品を提供していても、生き残るのは難しい。時代に応じて変化しなければ沈没してしまうのが現代だ。
お殿様のようにエレベーターに乗り込み、里中だけを同乗させて派遣社員は乗せなかった宮部。正社員は家族と考える彼らしい。しかし、大事なプレゼンを前にやる気がなかったり、先方に企画書を求められても不満を言って作業しない社員ばかりが目に付く。ここに有能な人材はあまりいなそうだ。仕事ができない者を見過ごし、黙って置いておく企業も今ではもう少ない。
S&Fが、潰れてしまった立ち食い蕎麦屋とだぶって見える。変わらないと沈没する時代なのに、変わらないままでいる両者。社長と里中を乗せたエレベーターを見送った後、春子は言う。
「沈むね、あっという間に」
会社の責任は取れない派遣社員が取るべき責任
企画作りに小夏が関わったと知り、部長の宇野一平(塚地武雅)は「派遣の分際で!」と声を荒げた。「派遣は仕事にやりがいを持っちゃいけないんですか!?」と涙を流す小夏。でも、責任の取れない派遣社員に責任を伴う仕事を任せてはならないという宇野の考え方は正論である。
春子は小夏に言葉を掛けた。
「派遣には会社の責任は取れませんが、派遣にだって取るべき責任はあります。それは自分に対する責任です。『派遣なんか……』などと自分の仕事を軽く低く考えるのは、あまりにも自分に対して無責任。明日からやめなさい。すぐにやめなさい」
自分が落ちたS&Fにコネ入社した井手を目の敵にするなど、変えられない環境を憎んで口実にしてきた小夏。でも、そこでどう生きるかは自分の意思次第だ。春子の言う「取るべき責任」とは、仕事に対してだけじゃない。自分の人生の責任を取れるのは自分だけ。「私は派遣なので、とりあえず派遣の仕事をしっかりやってみます」と、最後に心境の変化を見せた小夏。人生の責任を取ると彼女が決心したからだ。
「ハケンの品格」新シリーズは春子が主役というよりも、亜紀と小夏という派遣社員2人の成長物語を見ている感がある。
「ハケンの品格」
日本テレビ 水曜夜10時
脚本:中園ミホ 他
演出:佐藤東弥、丸谷俊平
チーフプロデューサー:西憲彦
主題歌:鈴木雅之「Motivation」(EPICレコードジャパン)
出演:篠原涼子ほか
https://www.ntv.co.jp/haken2020/
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