篠原涼子×大泉洋『ハケンの品格』、「とっくり!」「くるくるパーマ!」が聞きたい!

新型コロナウイルス感染症の拡大で延期が決まった「ハケンの品格」。高視聴率を記録した、シーズン1では、大前春子(篠原涼子)と東海林武(大泉洋)のかけ合い恋の行方が話題になりました。あれから13年。2人はあれからどうなったのか。気になる2人の恋愛サイドをもう一度振り返ってみましょう。
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全話平均20.2%、最終回は26.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録した「ハケンの品格」(日本テレビ 水曜夜10時)の新シリーズが今春よりスタートする。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で初回放送は延期となり、先週今週の2回は「スーパーハケン・春子(篠原涼子)の歴史を振り返る春子の歴史に迫る特別編」(公式サイトより)が放送される。そこで、本稿では2007年(13年前!)放映のシーズン1の特に恋愛サイドについて振り返ってみる。

恋愛ベタ同士の歯がゆいラブストーリー

新シリーズ放送が決まり、篠原涼子、小泉孝太郎、勝地涼、上地雄輔らの出演が発表された。そして、最後の最後で明らかになったのが大泉洋の続投である。
「続編のお話をいただいた時には既に舞台の出演が決まっていまして…。しかし『ハケンの品格』は私にとって非常に思い出深い作品ですので何としても出たい、とスケジュールなどいろいろ調整し、何とか出演できることになりました」(大泉)

このドラマが人気を博した要因の大きなひとつに、大前春子と東海林武(大泉洋)による歯がゆいラブストーリーがある。自他ともに認める“アンチ派遣”の東海林。しかし、彼は自身のミスで辞表をポケットに忍ばせるほどの窮地に陥り、そのピンチを春子に救われた。そして、東海林は春子に惹かれていく。恋に不器用な東海林は春子と憎まれ口を叩き合い、2人の距離は近付いていった。前シリーズの第4話に、こんなやり取りがあった。

東海林 「俺は派遣が嫌いだ。でも、俺はあんたのことは認めてる。すごい派遣だって思ってる。俺はあんたと一緒にいい仕事がしたいんだよ。一緒に働くってさ、一緒に生きるってことと同じだろ?」
春子 「何を言ってるんですか。私はあと2カ月でいなくなる派遣です」
東海林「それが何だって言うんだ。2カ月後に俺はもっとあんたのことを好きになってるかもしれない」

「働くことは生きること」、それは東海林だけでなく春子にとってもポリシーだった。あと、恋に不器用なところも2人は似ている。本人の前ではつれない態度だが、東海林に手渡された電話番号入りの紙を見つめて笑ったり、「仕事はできる」と東海林を陰で認めていたり、でもおくびにも出さない春子。彼女も彼女で意地っ張りなのだ。

正社員と派遣社員の恋愛に多いトラブル

恋の障壁は両者の恋愛ベタだけではない。

東海林「俺のこと好き? 嫌い?」
春子 「好きとか嫌いとかじゃないんです。すぐ辞める派遣だから誘いやすい。軽く誘ってこじれたら切り捨てる。そういう正社員を私は死ぬほど見てきました」

派遣会社社員で春子のマネージャーの一ツ木慎也(安田顕)も言っている。
「派遣のトラブルで1番多いのは時給の問題で、2番目に多いのが正社員との色恋沙汰です」

恋愛がこじれると正社員は派遣社員と顔を合わせづらくなる。派遣社員は会社に行きたくなくなる。こうなると、会社から去るのは派遣社員の側になるケースがほとんどだ。「ハケンの品格」で描かれる恋愛は、男女(東海林と春子、里中と美雪)が均等な立場に立っていない。そんな問題提起もこの作品には含まれている。「ハケンの品格」ならではのラブストーリーだった。

前シリーズのエンディングはほとんどプロポーズだった

前シリーズのエンディングは感動的だった。S&F名古屋支社に飛ばされ、社内で肩身の狭い思いをする東海林。そこに、S&Fとの契約を終えたはずの春子が現れた。東海林が「なんでこんなところ来たんだよ!?」と驚くと、春子は思わず目線をそらし、そして答えた。
「面談です。契約は3カ月ということで。私を雇って後悔はさせません。今度はあなたに社長賞を取っていただきます! そのためにこんなところまで来ましたが何か? 私を雇っていただけますか?」

かつて、東海林は春子に「俺はあんたと一緒にいい仕事がしたいんだよ」と言った。その答えを春子は2カ月越しの最終話でようやく返したのだ。
春子と東海林に共通するポリシーは「働くことは生きること」である。「雇っていただけますか?」と自ら面談に来たということは「一緒に働いてほしい」、即ち「一緒に生きてくれますか?」という意味とも受け取れる。ツンデレの春子が東海林にプロポーズしたかのような場面に思えたのだ。だから、このドラマほど続編が望まれる作品はなかった。

今シリーズ、大泉は特別出演という扱いになっている。やはり、彼は出番が少ないのだろうか? 春子と東海林の夫婦漫才のような掛け合いがこのドラマの醍醐味だっただけに、2人のバトルをたっぷり楽しみたいのだが。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、新シリーズの初回放送は延期になった。そして、大泉が出演予定だった舞台も残念ながら公演中止になってしまった。幸か不幸か大泉のスケジュールには余裕が生まれ、脚本を書き直す猶予もある。脚本を務める中園ミホは大泉のファンである。

「ハケンの品格」が続きを期待された理由は数多い。東海林は社長賞を取ることができたのか? 春子と東海林の仲は進展したのか? 「とっくり!」「くるくるパーマ!」とけなし合う2人だったが、今の大泉はさほどくるくるではないし、春子もこの季節にさすがにとっくり(タートルネック)は着ていないと思う。今、2人はお互いをどう呼び合うのだろうか? 確かめたいことは山ほどある。
ホームページによると、現在の春子はシングルマザーで、東海林はバツイチという設定のようだ。春子の前夫と東海林の前妻は誰なのだろうか。いちいち意味深だ。

「ハケンの品格」
日本テレビ 水曜夜10時
脚本:中園ミホ 他
演出:佐藤東弥、丸谷俊平
チーフプロデューサー:西憲彦
主題歌:鈴木雅之「Motivation」(EPICレコードジャパン)
出演:篠原涼子ほか
https://www.ntv.co.jp/haken2020/

ライター。「エキレビ!」「Real Sound」などでドラマ評を執筆。得意分野は、芸能、音楽、(昔の)プロレスと格闘技、ドラマ、イベント取材。
フリーイラストレーター。ドラマ・バラエティなどテレビ番組のイラストレビューの他、和文化に関する記事制作・編集も行う。趣味はお笑いライブに行くこと(年間100本ほど)。金沢市出身、東京在住。
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