中村倫也が一切ブレない「美食探偵」2話は、グルメとミステリーの傑作回

新型コロナウイルス拡大による緊急事態宣言下、軒並み注目の春ドラマの放送が延期されています。その中でも予定通りスタートした東村アキコ原作の「美食探偵 明智五郎」。御曹司であり、美食家探偵が殺人鬼の真相とハートに迫ります!やはり前回考察した通り第1話はエピソードゼロ。第2話は現場に残された料理から犯人を辿るしっかりとした推理ドラに!高クオリティだった第2話を考察します。

1話とまるで別物の第2話

やっぱり第1話はエピソードゼロだった。小池栄子演じる殺人鬼"マグダラのマリア"が生まれる瞬間を描いた前回だったが、第2話は現場に残された料理から犯人を辿るしっかりとした推理ドラマだった。「美食探偵 明智五郎」がどんな感じで話が進められていくのかを説明するという意味では、第2話の方がよっぽど第1話に相応しい。改めて、第1話の攻めの姿勢がすごい。あと単純に第2話のクオリティがすごかった。

殺人を通してコミュニケーション

高級ホテルの一室で若い男女が毒殺される事件が発生。ルームサービスの朝食に毒物が混じっていた可能性は高いが、被害者の胃からは使用されていなかったはずのリンゴが検出された。このリンゴから明智五郎(中村倫也)と移動弁当屋の料理人で助手的存在の小林苺(小芝風花)が事件を追う。

「殺したい相手がいない」と嘆くマグダラのマリアは、他人の殺しを請け負う。その他人の思いに自らの殺しの美学のようなものを漂わせることで、五郎にたいしてヒントを残す。理由は「明智に会いたいから」だそうだが、よくわからない。唯一殺人鬼の気持ちを理解しているのが、他でもない五郎なのだ。

使用されたシアン化合物は、刺激が強く朝食に混入させ辛い。ここにマリアの殺しの美学があり、五郎は違和感を抱く。犯行がバレやすい毒殺を選んだことについても五郎は思うことがあったようだ。五郎とマリアは、事件を通して他人には理解できないコミュニケーションを取っていた。

「わざわざ毒殺を選ぶ奴は、推理小説好きのバカか、もしくは殺人者である自分の存在をアピールしたい人間」

上記のセリフのように、推理ドラマそのものへのメタのような演出も目立つ。横溝正史映画化作品のようなオドロオドロシイBGMを入れてみたり、ちょっと画質を昭和風にしたり、1話のクライマックスで2時間ドラマでおなじみの崖を使ったりしたのもそういうことだろう。推理ドラマでありながら、推理ドラマのパロディなのだ。

美食と推理がビタっとハマった傑作回

パロディだからといって、推理シーンがおざなりなわけではない。その名の通り"美食"から犯行を辿るのだが、そこにはグルメドラマさながらの説得力があった。

死因がリンゴのジャムだったと推測した五郎に対して、小林苺は、「煮る時間が違うんです。おんなじリンゴでも、品種によって火の通り方が違う」と犯行にかかる時間が変わることを指摘した。助手的存在の苺が、ちゃんと料理人としての特性を生かし、推理ドラマとしてのヒントをこぼす。役割がビタっとハマっている。

青森のリンゴ農園で働く女・茜(志田未来)が、被害者の男に二股をかけられていたことが発覚すると、五郎と苺は急いで青森へと向かう。市場では、「リンゴジャムには、台風で落ちた傷物のリンゴを使う」と新たなグルメ豆知識も登場する。

この豆知識が、犯行の動機や茜の過去、さらにはおじいちゃん(渡辺哲)の茜への思い全てにリンクするのだからすごい。他の要素は一切省き、リンゴジャムという狭い範囲の中で、殺人トリックからヒューマンドラマまでのすべてを描き切っていた。第3話以降どんな話が登場するのかはわからないけど、このドラマを代表する傑作回だったのではないだろうか。

小芝風花、北村有起哉、佐藤寛太らが思いっきり大げさなコメディを演じ、小池栄子が真逆の壊れてしまった人間をシリアスに演じ切る。その真ん中で、一切キャラをブレさせずに、シリアスもコメディも中村倫也がこなす。役によって別人に見えるとか、カメレオン俳優とか言われているけど、1つの役のまま全部こなしちゃう中村倫也のバランス感覚は、やっぱり面白い。

企画、動画制作、ブサヘア、ライターなど活動はいろいろ。 趣味はいろいろあるけれど、子育てが一番面白い。
イラスト、イラストレビュー、ときどき粘土をつくる人。京都府出身。
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