リメイクドラマ配信開始。伝説の「東京ラブストーリー」とはどんな作品だったのか?

90年代の恋愛ドラマの金字塔「東京ラブストーリー」が29年ぶりにリメイクされ、令和時代に帰ってきます。赤名リカのセリフ「ねえ、セックスしよ!」は当時としてはセンセーショナル!平成時代の女性たちを熱狂させた「東京ラブストーリー」、令和にどう生まれ変わる?元祖「東京ラブストーリー」とその原作から考察します。
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1991年に放送され、最高視聴率32.3%を記録したドラマ「東京ラブストーリー」が29年ぶりに再ドラマ化。4月29日より「FOD」「Amazonプライム・ビデオ」で配信開始される。

さすがに29年前のドラマなのでちゃんと見たことがある人は少ないかもしれないが、鈴木保奈美演じる赤名リカの「ねえ、セックスしよ!」というセンセーショナルなセリフと、「チュクチューン!」のイントロでおなじみ・小田和正による主題歌「ラブストーリーは突然に」くらいは耳にしたことがあるんじゃないだろうか。

80年代後半~90年代にかけて一時代を築いたトレンディドラマの金字塔にして、もっとも勢いのあった時代のフジテレビの象徴的なドラマ。フジにとっても気合いの入ったリメイクなのは間違いと思うが……。「なんで今になって29年も前のドラマをリメイク!?」という気持ちはぬぐえない。

「月曜の夜は街から女性が消えた」という平成レトロな逸話の残る伝説のドラマ「東京ラブストーリー」とはどんなドラマだったのだろうか。

 

「新時代の女 VS 古風な女」ドラマだった

バブル最末期に“東京”をテーマに作られたドラマだけに、バブリーでギラギラな恋愛ドラマだと思われがちな「東京ラブストーリー」だが、実際は、愛媛の田舎から上京してきたカンチこと永尾完治(織田裕二)と、三上健一(江口洋介)、このふたりから思いを寄せられる優等生キャラの関口さとみ(有森也美)。田舎から東京にやって来た同級生3人の恋愛模様という地味なストーリー。

今では大御所になっている織田裕二や江口洋介もまだまだ無名だった時期で、「映画『湘南爆走族』で、変な髪型の暴走族役をやっていたあのふたりがトレンディ?」くらいの認識だった。
そんなドラマが、なぜ強烈に支持されたのかといえば、やはり帰国子女でカンチの同僚である赤名リカ(鈴木保奈美)の存在がデカイ。

「ねえ、セックスしよ!」に象徴されるように、本作の恋愛は基本的にリカ主導。優柔不断なカンチは、高校時代から思いを寄せていたさとみのことが気になりつつも、グイグイ来るリカに翻弄され、恋に落ちて行く。
まだ「恋愛は男が引っ張っていくもの」という建前のあった時代において、自由奔放に恋愛を楽しむリカの姿は新鮮に受け止められた。
対する優等生キャラ・さとみは、平成どころか昭和感のあふれる、思いっきり古風な女として描かれている。

カンチの気持ちを知りつつ三上と付き合い、かと思えば三上の浮気癖に耐えられず、既に彼女持ちになっていたカンチに何かと頼って、ここぞというタイミングで電話をかけてきたり、おでんを持って現れたりしてカンチがリカに会うのを邪魔するのだ。

カンチに対して煮え切らない態度をとり続けているくせに、おでん片手に「(リカとの待ち合わせに)行かないで!」なんて言い出すさとみは当時、「おでん女」なんて呼ばれ、演じていた有森也実の元へカミソリが送られてくるほど嫌われたという(この逸話も平成レトロ!)。

結局、カンチの心がさとみに向いていると悟ったリカは自ら身を引いて姿を消す。このラブストーリーは最初から最後までリカ主導だったのだ。

最終回は、カンチとリカが別れた3年後が描かれている。
カンチは結局、さとみと田舎の同級生同士で結婚。さとみは、靴ひものほどけたカンチの足下にひざまずいてひもを結んであげるような古風な妻となっていた。
そんな時、リカと街で遭遇するのだが、颯爽と街を歩くメチャクチャ仕事のできそうな女性に成長したリカは、まだ色々引きずっていそうなカンチに対して、「カンチ」ではなく「永尾くん」と呼びかける。
地味ぃ〜な夫婦になったカンチ&さとみに対して、東京と一体になったリカの格好良さよ!

新時代の女 VS 古風な女対決は「結局、男って、おでん持ってきて、靴のひもを結んでくれるような女がいいのよね〜」という決着だったが、「優柔不断な男に選ばれるのが恋愛においての勝利ではない」という強烈なインパクトを残した最終回だった。

 

原作版のクレイジーなリカを実写化するのでは!?

ただ、平成初期においては確かにセンセーショナルな女性像だったリカだが、女性主導の恋愛も別段めずらしくない2020年にこのストーリーが成立するのだろうか?
ここで注目したいのが原作漫画の存在。

当時、ドラマの大ヒットを受けて柴門ふみの原作漫画も売れまくっていたが、ポップでトレンディなドラマ版と比べるとかなり泥くさい話で、「こんなの『東京ラブストーリー』じゃない!(こっちが本家だけど)」と面食らった人も少なくない。

田舎出身三人組の印象は大きく変わらないが。リカの設定が大幅に違うのだ。
帰国子女は帰国子女でも、アフリカ・ジンバブエで育ったという設定。幼少期、日本にやって来たリカは、裸足の足に無理矢理、靴をはめこまれ、「『アフリカ人』なんて呼ばれるのは序の口」と言うほどのいじめを受けてきたという。

そんな経験をしているだけに、自分の愛をぶつけることには積極的だが、愛されることには慣れておらず、不倫していた上司が妻と別れたと聞けばドン引きして別れ、カンチから「愛してる」と言われただけでパニック障害を発症。カンチとの交際中に平気で他の男と関係を持ってしまい、他の男の子どもを身ごもったことでカンチと破局することになる。

さすがに1991年当時、ここまで突き抜けた女性像は受け入れられないという判断でドラマ版のリカが生み出されたのだろうが、原作版のクレイジー過ぎるリカは、描き方によっては現在においても衝撃的な女性像を作り出せるかも知れない。

2020年版の予告編を見ると、さっそく「セックスしよ!」のセリフが登場しているが、石橋静河の演じるリカは、「ぴょんぴょん跳ねるような感じで歩いて、声が高くて、ハキハキしゃべる子」と称されていた鈴木保奈美のリカとはだいぶ印象が違う。声が低く中性的で、原作版のイメージに近いのだ
誰もが1991年のドラマ版「東京ラブストーリー」のリメイクをやると思い込んでいるが、もしかしたら原作漫画「東京ラブストーリー」を改めてドラマ化するつもりなのかも!?

そもそも、さとみがおでんを持ってきたせいでカンチが待ち合わせに行けず、リカが何時間も寒空の下で待ち続ける……みたいな、スマホがあれば一発で解決してしまうエピソードが多発するドラマ。現代版としてリメイクするならば、かなり大幅なストーリー改変があるはずだ。

ちなみに原作での三上は、さとみから捨てられた後、カンチとの同居を経て隣の部屋に引っ越すなど、「本当に好きなのはカンチなんじゃないか!?」と思わせるBL感も漂わせている。
カンチ役の伊藤健太郎と三上役の清原翔がそんな展開になったら……こちらもちょっと期待してしまう。

「平成初期の名作をもう一度!」ではなく、令和時代の新しい恋愛ドラマを提示してくれそうな2020版「東京ラブストーリー」。当時を知る人も、知らない人も、ひとまず見てみよう!

 

「東京ラブストーリー」
2020年4月29日(水)0時より配信開始
FODはこちら
出演/伊藤健太郎・石橋静河・清原翔・石井杏奈、他

「東京ラブストーリー」(1991)
FODはこちら
Amazonプライム・ビデオはこちら
出演/織田裕二・鈴木保奈美・江口洋介・有森也実、他

1975年群馬生まれ。各種面白記事でインターネットのみなさんのご機嫌をうかがうライター&イラストレーター。藤子・F・不二雄先生に憧れすぎています。
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