病院だらけの2020年冬ドラマ考察06

まだまだ「恋はつづくよどこまでも」#追いつづが止まらない。今夜は「#恋つづ12話」?【病院だらけの2020年冬ドラマ考察06】

人気ライターが放送されたばかりのドラマを徹底解説。ドラマが支持される理由や人気の裏側を考察し、紹介します。今シーズンは医療ドラマの当たり年! 各局さまざまな医療ドラマを放送しています。第6目に取り上げるのは、先週最終回を迎え、SNSを中心に「恋つづロス」現象まで引き起こした「恋はつづくよどこまでも(恋つづ)」。いまだに盛り上がり続ける、恋つづの魅力を考察します。

●病院だらけの2020年冬ドラマ考察06

留学、結婚、お祭りのような盛りだくさん最終話

毎週火曜放送のドラマ「恋はつづくよどこまでも」(TBS系)が、3月17日に最終回を迎えた。

最終話放送前から、ファンの間では「恋つづロス」の声が上がり、それを慰めるかのように天堂浬(かいり)役の佐藤健がLINEやライブ配信アプリ「SUGAR」、YouTubeなどでファンとの交流を続けた。最終話の平均視聴率は番組最高の15.4%を記録した(ビデオリサーチ調べ・関東地区)とのこと。佐藤健ら制作陣とファンとが一緒になって作り上げた記録だと体感している人も多いのではないだろうか。

最終話では、浬の恋人で看護師の佐倉七瀬(上白石萌音)が、1年間の海外看護留学に行くことになる。浬と離れ離れになりたくないと、留学したい自分の気持ちを押し殺す七瀬。浬はそんな七瀬の気持ちに気づき、看護師として成長できるように背中を押す。

七瀬「あの日、ここで私は先生に2つのものをもらいました。『好き』って気持ちと、『先生みたいに誰かを助けたい』っていう夢です。私、看護師としてもっと成長したいです」
「だったら、迷わず行け。いまの俺じゃ、お前に厳しくできないからな」
七瀬「なんでですか」
「俺はもう、お前を可愛がることしかできないんだよ」

自分のそばに置いておきたくて「行くな」と引き留める展開でも、それはそれでキュンとしたかもしれない。けれど、いま夢を持って働いている女性たちに刺さるのは、自分を信じて応援してくれる愛情だ。男性が相手を好き過ぎるあまり余裕がなくなる表情に惹かれる女性も、「行くな」という束縛よりも「お前を可愛がることしかできない」という余裕のなさの方にグッとくる。

1年後、少し大人っぽくなって帰ってきた七瀬は、約束どおり浬と結婚。病院内のチャペルで結婚式を挙げる。式の途中で、参列していた沼津優人(亜生[ミキ])が倒れてしまうトラブルを、七瀬は頼もしく乗り越える。

七瀬「先生、私のことが好きでたまらないって顔してます」
「身の程を知れ、岩石」

浬の実家訪問、七瀬の留学、流子(香里奈)のための仁志琉星(渡邊圭祐)の転職、酒井結華(吉川愛)と来生晃一(毎熊克也)の関係の変化、飛行機の搭乗時間のミス、プロポーズ、帰国、結婚式と、盛りだくさんすぎるお祭りのような最終話だった。

 

幻の「#恋つづ11話」がSNSで盛り上がっていた

「恋つづ」は、ドジで一途なヒロインがツンツンとしたイケメンヒーローに一目惚れをするところから始まる「王道ラブストーリー」だった。見ていて恥ずかしくなるくらいキュンとするシーンも詰め込まれている。

でも、それだけだったらこれほど視聴率もファンの熱も高くならなかっただろう。プロデューサーの宮崎真佐子さんがインタビュー(リアルサウンド「『恋はつづくよどこまでも』宮崎真佐子Pが目指す、まっすぐなラブコメ 「王道を逃げずにやろう」)で話しているように、王道のベタな展開であっても逃げずに描いたこと、そして、演者がそれを楽しんでいたことが、ここまでファンを惹きつけたのだと思う。

少女漫画原作の映画やドラマの番宣やインタビューで、ヒーロー役の俳優が「このシーンは、女性がキュンとするんじゃないかと思う」という旨の発言をすることがある。自分自身がキュンとしたかではなく、見る人がキュンとするかどうか。その視点を持つことも、仕事への向き合い方の一つではある。

「恋つづ」は、佐藤健、上白石萌音はじめ俳優たちが「自分のキュンとしたシーン」を持っている。佐藤健は、9話で七瀬が浬に対して色気を出そうと「今日は、お待ちかねのクリーム祭りですよ」とクネクネして見せたシーンが可愛いと、SUGARなどで何度も発言している。七瀬の恋のライバルとして登場した若林みおり役の蓮佛美沙子は、インスタグラムのストーリーなどで上白石がどんなに可愛かったか語り、ファンからの「天堂担ですか? 来生担ですか?」という質問には「天堂担と言わせて!」と返事をしている。

俳優ら制作陣たちも視聴者と近い目線に立ってドラマを楽しみ、その姿をずっと見せてくれていた。主人公が等身大のヒロインであり、多くの人が身近に感じる「恋愛」がテーマだからこそ、「みんなで楽しむ、みんなで盛り上がる」という見せ方が、ドラマへの信頼感や没入感を醸成していた。

TwitterをはじめとしたSNSでは、ファンが作ったハッシュタグ「#恋つづ11話」「#恋つづ12話」がまだまだ盛り上がっている。

・佐藤健と仲が良い千鳥・ノブが患者役で登場する
・七瀬と浬のクリーム祭りのように、結華と来生がカレー祭りをする
・七瀬と浬の赤ちゃんが生まれ、浬がこどもを溺愛する
・優人(亜生)とこずえ(瀧内公美)がカップルに?

わたしが見ていて一番「見たい!」と思ったのは、こちらのツイート。

ずっと楽しみにしてたカレー祭りが風邪が悪化したせいで延期になって毛布にくるまってスネる酒井さんが可愛すぎたし、そんな酒井さんに当たり前のように卵酒を作って飲ませる来生先生が素敵すぎましたね…(さすがおばあちゃんっ子…)
#恋つづ11話

本編になかった「卵酒」という小道具まで持ち出して、ファンの想像力は留まるところを知らない。佐藤健も、SUGARで「狂ってるなあ」と笑ってくれるほどだ。

 

SNSをファンコミュニティにした「恋つづ」

最終話を迎えてもなおファンを惹きつけてる「恋つづ」。公式は、何度でも視聴する「#追いつづ」を推奨している。家で過ごす時間の多い時期だけに、1日に何度も見ているという視聴者もいる。

Paraviでは、4月1日(水)0時からディレクターズカット版が配信される。予告編では、テレビ放送版では放送されなかった「留学前と思われる、七瀬の片付いた部屋のシーン」がチラッと映っている。切ないシーンとなりそうだが、でもどんなやり取りがあったのか早く見たい!

「恋つづ」はまだまだ盛り上がりを見せそうだが、俳優たちはSNSなどを通して次回作の準備や現場に入っている様子を見せてくれてもいる。ファンがさみしい気持ちをゆっくりと癒していけるように、共感したり配慮したりしてくれるのが優しくて嬉しい。

ドラマ視聴におけるSNSは、「あなたの番です」(日本テレビ系)や「テセウスの船」(TBS系)のような謎解き、考察の場としてだけではなく、一つのファンコミュニティのような優しく楽しい世界としても存在することができる。「恋つづ」は、それを示してくれたドラマでもあった。

※宮崎真佐子の「崎」は「たつさき」が正式表記。

・「恋はつづくよどこまでも」(TBS系・毎週火曜)
https://www.tbs.co.jp/koitsudu_tbs

・Paravi「恋はつづくよどこまでも」ディレクターズカット版
https://www.paravi.jp/title/53864

ライター・編集者。エキレビ!などでドラマ・写真集レビュー、インタビュー記事、エッセイなどを執筆。性とおじさんと手ごねパンに興味があります。宮城県生まれ。
フリーイラストレーター。ドラマ・バラエティなどテレビ番組のイラストレビューの他、和文化に関する記事制作・編集も行う。趣味はお笑いライブに行くこと(年間100本ほど)。金沢市出身、東京在住。
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