佐藤健のLINEもアツい「恋はつづくよどこまでも」キーワードは「敬意」【病院だらけの2020年冬ドラマ考察03】
●病院だらけの2020年冬ドラマ考察03
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佐藤健のLINEがたまらん火曜夜「恋つづ」がアツい
今期の病院ドラマの中でも、変わった盛り上がりを見せているのが火曜ドラマ「恋はつづくよどこまでも」(TBS系)。主人公・佐倉七瀬(上白石萌音)の恋の相手、天堂浬(かいり)を演じる佐藤健の公式LINEアカウントがアツい。
「あとでラインする。」
「なにしとる」
「撮影もうすぐおわるー」
まるで知り合い、友人、あるいは恋人からのLINEのようなメッセージだ。佐藤健本人が送信し、返信もチェックしているという。時々、親しいという千鳥・ノブの写真が送られてきたり、「みた? まっけん」と映画「るろうに剣心」シリーズで共演する新田真剣佑のヴィジュアルカットが送られてきたりと、交友関係や仕事の様子も垣間見える。面白い。ファンじゃなくても、健LINEをチェックせずにはいられない。
「明日夜あけといてね」
「明日21時半過ぎに電話する」
「恋はつづくよどこまでも」の放送前日、月曜日になると、こんな予告LINEが届く。いやいや電話って何だよ、と笑ってたところ、本当に電話がかかって来てしまい慌てた。ライブ配信アプリ「SUGAR」をダウンロードし佐藤健のアカウントをフォローすると、予告された時間にテレビ通話のような画面でもってライブ配信(電話)に参加できる。
さらに、視聴者の中から毎週数人が選ばれ、佐藤健と一対一で話ができる。ドラマ放送日である火曜日の夜に、佐藤健に直接感想を伝えられるのだ。こりゃリアルタイムでドラマ見ちゃいますわ。
七瀬と浬が初めてキスをした第4話が放送された2月4日の“電話”では、佐藤健の「キスシーン演技論」を聞くことができた。「恋つづ」に限らずキスシーンではキスを「する」ではなく「奪う」という意気込みで臨むと良いシーンになると考えているとのこと。ほんとに!? 録画や配信で「恋つづ」のキスシーンを見返してしまった。佐藤健に転がされている。
暴力にならない「突然のキス」、キーワードは「敬意」
佐藤健は「奪う」という気持ちで臨むというキスシーン。しかし、ドラマの中で浬は七瀬からキスを無理矢理「奪った」わけではない。佐藤健の演技論はあくまで意気込みの話だ。
第4話で患者からストーカーされ、その結果、七瀬は頭に怪我をしてしまった。出血し、救急車の中で朦朧とする七瀬に浬は言う。
浬「乗り切ったらキスでもデートでもしてやるから!」
頭の怪我は大事には至らなかった。救急車の中で言ったことを守ってほしいと七瀬は言い、浬はそれに答える。キスしたあとに「これは治療だ」と言うのは、つれなさなのか照れ隠しなのか。
「恋つづ」の原作は、同名の少女漫画(作者:円城寺マキ)だ。少女漫画の「強引なヒーロー」については、批判的な女性も少なくない。わたしがこどもの頃に読んでドキドキした少女漫画でも、いま見るとヒーローの行為が「怖いな」と感じることがある。
「相手の了承を得ずにキスを奪う」「壁ドンや連れ去りなど、強引で威圧的な態度で自分に従わせる」「他の男性との中を引き裂く」「大勢の前で馬鹿にする」などは、ストーリーとしてはキュンとするポイントなのかもしれない。しかし、抜き出して見たら性暴力やモラルハラスメントとも言える。さらに本作には「優秀な医師と新人看護師」という設定があり、同様のことが起こればパワーハラスメントと見なされかねない。
しかし、そこをきっちりフォローするのが脚本の金子ありさだ。金子は名作「ナースのお仕事」シリーズ(フジテレビ系)を手掛けている。そして最近では「中学聖日記」(2018年/TBS系)で「女性教師と男子生徒」の恋愛の困難と乗り越え方を新しく示し、「東京独身男子」(2019年/テレビ朝日系)では親の介護や結婚観など男性の生き方に訪れている変化をコミカルに描き出した。
「恋つづ」で大切にされているのが「相手への敬意」だ。
七瀬は、高校生の頃に助けてもらった思い出のみで浬に好意を抱き、その一心で看護師にまでなった。なので、一生懸命ではあるが少し浮ついていて「医療」とはどんなものかと深い考えや視点を持っていなかった。
第5話で、七瀬は不整脈のアブレーション治療で浬の介助についた。近い距離で浬の治療を見て、感動して言う。
七瀬「さっき、すごかった。心臓の奥の奥を次々治していって、先生だけ別の世界にいるみたいで。いままでずっとこういうことを何年も続けてきて、いま先生はここにいるんだって思いました。いつか、支えられるようになりたいです」
浬も「佐倉はああ見えてよく気づくところがあります。助けになることもあるかと」と、七瀬の仕事ぶりや資質に敬意をはらっている。浬と七瀬以外にも、第5話では看護主任の茉莉子(平岩紙)が七瀬の働きを認める。最初は七瀬を少しだけお荷物に感じていた同期の結華(吉川愛)も、患者のささいな変化を見ている七瀬の長所に気づいている。
敬意とは、相手への理解でもある。敬意があれば、失敗を謝ることができる。それに、チョココロネを渡した浬のように、人に優しくすることもできる。「敬意」を大切にし、ドラマづくりに心を砕いているから、浬から七瀬への威圧的態度やキスは、暴力・ハラスメントになっていない。
原作の円城寺マキは、清野菜名とディーン・フジオカでドラマ化(2016年/Amazonプライム・ビデオ)された「はぴまり〜Happy Marriage!?〜」の作者でもある。「はぴまり」で描かれたのもまたお金を介して上下関係のある男女の恋愛。男女の格差恋愛をすくい上げハッピーに昇華させていた。
仕事や経済の格差、「惚れた方が負け」という恋愛格差。そんな格差がある現実をハッピーに生きていく鍵は「敬意」である。そんな風に考えてみると、プロデューサーの磯山晶らが金子ありさ、円城寺マキとチームを組んだことにとても納得できる。
浬の姉で副院長・小石川(山本耕史)の元カノという強いカードを持つ流子(香里奈)と優しい新人小児科看護師の仁志(渡邊圭祐)は格差恋愛をどう乗り越えて行くのだろうか、楽しみだ。
恋愛だけじゃない「恋つづ」
「恋つづ」に関しては、「いやー、女性が好きなやつでしょ?『キャー! 佐藤健ー!』ってだけでしょ?」と、見る前にシャットアウトしてしまう声も聞いた。しかし、「敬意」というキーワードは、女性に限らず誰と働くにしても交際するにしても今後避けては通れない。「女性と働く」という視点を持って見れば、セクハラ扱いに怯える男性にも気づくことがあるのではないか。恋愛もの、少女漫画原作への先入観だけで観ないのはもったいない。
まあそんなに難しく考えなくても、佐藤健LINEに登録し、ドラマを見て「キャー! 佐藤健かっこいい~!」となればいいじゃないとも思うけれども。実際、「恋つづ」を見たり健LINEを登録したりしている男性たちは、かなり楽しそうである。
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