【病院だらけの2020年冬ドラマ考察01】脳外科医「トップナイフ」VS.精神科医「心の傷を癒やすということ」が対立する。内科・循環器内科・腫瘍内科・消化器外科・救命救急・脳神経外科・精神科……総合病院的冬ドラマガイド
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- 前回はこちら:【2020年冬ドラマ「第1話」考察】女帝・天海祐希「トップナイフ」超胸キュン・佐藤健「恋つづ」が凄い!「絶対零度」「コタキ兄弟」「シロクロ」……観るべきドラマはどれなんだ、全部観て考えた
2020年冬ドラマ(地上波)に、医療ドラマが6本もある。
こんなに出揃う機会もなかなかないだろう。
6本の医療ドラマすべての第1話(1部2話/1月22日現在)放映が放送されたところで、舞台となる病院、専門科を放送曜日順にまとめてみる。
「二代目のお坊ちゃん」がハマりすぎる小泉孝太郎
内科医「病院の治しかた~ドクター有原の挑戦~」(テレビ東京系・毎週月曜)
まずは、毎週月曜日放送の「病院の治しかた~ドクター有原の挑戦~」(テレビ東京系)。経営難で潰れてしまいそうな実家の有原総合病院を、小泉孝太郎演じる副院長・有原修平が立て直そうと奮闘する。ビジネス系医療ドラマだ。
修平は、叔父で理事長の健次郎(光石研)らの反発を押し切って、というかあまり意に介していない様子で経営改革を進めていく。品があってどこかおっとりした小泉孝太郎の空気感が、「二代目のお坊ちゃん」という役柄に合う。周囲に怒られているときの、それを気にも留めない微笑み! もしかして他人の気持ちがわからないのではと心配してしまうくらい。
修平は内科医で、大学病院でカテーテル治療の研究に熱心に取り組んでいた。経営に関しては素人だ。何も知らない有原がどうやって経営を学び、医療の質やモチベーションを保ったまま病院を立て直していくのか。週の初めに、仕事のモチベーションをあげてくれそうなドラマだ。
循環器内科医「恋はつづくよどこまでも」(TBS系・毎週火曜)
毎週火曜日放送「恋はつづくよどこまでも」(TBS系)の舞台は、循環器内科。心臓や血管、血液の病気を扱っている。主人公の佐倉七瀬(上白石萌音)は、五年前、偶然出会った循環器内科医師の天堂浬(佐藤健)に恋をする。七瀬は看護師となり天堂と同じ日浦総合病院で働き始める。
「天堂先生が好き!」という強い気持ちだけで看護師になった七瀬。失敗ばかりで、天堂には邪険にされてしまう。子どもの患者に教えられたり(1話)、さまざまな出会いを通して、恋心が仕事のモチベーションにシフトしていく。猪突猛進な女の子が、一人の看護師として成長する。
失敗続きの七瀬を、仕事の流れを止めるだけの「岩石」と冷たく呼ぶ天堂だが、認めてくれたときにはふいに名前で呼んでくれる。胸キュンの効き目が凄い。脇を支える平岩紙、山本耕史、昂生(ミキ)、渡邊圭祐らもそれぞれ魅力的。
腫瘍内科医×消化器外科医「アライブ がん専門医のカルテ」(フジテレビ系・毎週木曜)
腫瘍内科医・恩田心(松下奈緒)と消化器外科医・梶山薫(木村佳乃)が、バディとしてがん治療に挑む「アライブ がん専門医のカルテ」(フジテレビ系)。信頼関係にある心と薫。それなのに、薫は心に言えない重大な秘密を持っていて……というサスペンス要素もある。
腫瘍内科医は、がん治療における薬物治療に関するスペシャリストだ。
第2話で扱われたのは「乳がん」。男性の乳がん患者・日ノ原徹(寺脇康文)は、まだ現実を受け入れられずに戸惑っていた。男性の乳がんは、患者全体の1%に満たないのだ。また、若い佐倉莉子(小川紗良)は、「乳房全摘出」の切断を迫られる現実を受け入れられないでいる。
一方で、全身がんと共生していく道を選んだ民代(高畑淳子)や、患者でありながら院内のがん患者に寄り添おうとする人(ふせえり)もいる。今晩眠りについたら、明日の朝に起きることはないかもしれない。病気や死とともに生きていくことを選んだ彼女たちの穏やかな表情をドラマは捉える。
現在、二人に一人ががんを患うと言われている。「もし私ががんになったら」と自分を重ねてしまう。
救命救急医「病院で念仏を唱えないでください」(TBS系・毎週金曜)
「病院で念仏を唱えないでください」(TBS系)の主人公は、救命救急医で僧侶の松本照円(伊藤英明)。今季一の異色医療ドラマと言われている。
第1回は、次々と爆弾が投げ込まれるような緊張感ある展開だった。
妊婦らを巻き込んだ交通事故! 病院に袈裟を着て現れる照円! 子どもが母親の脳死に直面! 救命救急の現場は「死」との距離が近く、突然なのだ。
自分の脚を失う、家族を喪う。喪失を抱えることになった患者たちを、照円は仏教の教えで救おうとする。いまのところ、照円がなぜ仏教を患者に伝えていこうと思ったのか、照円自身はどんな人なのかはわからない(女好きではあるようだけど)。
照円の人柄や思いが描かれることに期待する。「医療×仏教」が病院に僧侶姿の異形感を超えて、身近で心に響くものになるのではないか。
精神科と脳神経外科が「見えない痛み」を癒していく
土曜日は、医療ドラマが続けて2本放送される。精神科医が主人公の「心の傷を癒すということ」(NHK総合)と脳神経外科医が活躍する「トップナイフ-天才脳外科医の条件-」(日本テレビ系)だ。
精神科医「心の傷を癒すということ」(NHK総合・毎週土曜)
「心の傷を癒すということ」は、1995年に起こった阪神・淡路大震災で、被災者たちの心のケアにあたった実在の精神科医・安克昌をモデルにしたオリジナルフィクション作品だ。主人公の安和隆を柄本佑が演じている。
1月18日放送の第1話では、安の幼少期から精神科医になるまでの前日譚が描かれた。在日韓国人で、厳格な父がいる家庭に馴染めない安が、友人・湯浅(濱田岳)や尊敬する精神科医の永野(近藤正臣)、そして妻・終子(尾野真千子)と自分が心を許せる人たちに出会っていく過程。
脳神経外科医「トップナイフ-天才脳外科医の条件-」(日本テレビ系・毎週土曜)
「トップナイフ-天才脳外科医の条件-」は、「手術の天才」が集まる東都病院・脳神経外科を舞台に、天海祐希が演じる医師・深山瑤子たちのドクターストーリーが描かれる。
深山、黒岩(椎名桔平)、西郡(永山絢斗)は、「手術は成功して当たり前」という頂点の世界で生きる脳神経外科医。その技術を手に入れるために、それぞれ過去に犠牲にしてきたものがあるらしい。「天才」として医療に専念する彼らが、患者の痛みや苦しみに向き合い、自分の痛みの深さ、厄介さに気づいていく。
2作に共通しているのが「見えない痛み」だ。安はそれをカウンセリングなど精神的な面からケアしていく。深山たちは外科手術で病巣を取り除くことで結果的に心の傷をも取り除いている。
「心の傷を癒すということ」で、安の父親は「精神科医は何をしているか人に説明できない仕事」というようなことを言っていた。痛みの原因そのものを取り除く外科手術に対して、精神科は効果を説明しづらい印象はある。安はどのように被災者たちに接していくのか。
「トップナイフ」と「心の傷を癒すということ」は、医師たちもまた「見えない痛み」を抱えていることも共通している。患者と接することで自分自身の傷にも気づく展開になりそうだ。安、深山、黒岩、西郡がそれぞれのドラマがとても気になる。
カウンセリングや薬物療法などの精神科的アプローチと、外科手術という物理的アプローチ、偶然にも対照的な題材が火花を散らす土曜の夜。「見えない痛み」と格闘する医師たち、医療の現場を見届けることになりそうだ。
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