「さびしい夜」にオススメの映画&ドラマ
●「寂しい」は「恥ずかしい」じゃない 03
- 記事末尾でコメント欄オープン中です!
たとえば、同年代の女性タレントが独身ネタで笑われているのを見た時。たとえば、同世代の平均年収や平均貯蓄額が自分よりも高いと知った時、たとえば、SNSで同級生たちの順調で堅実そうな生活を目にした時……。
世の中で共有されている「いくつまでにこうなっているのが普通」という姿と、今の自分とを比較して、焦りや不安や惨めさが複雑に絡み合った「さびしさ」に襲われた経験はありませんか?
そんなさびしさを抱える夜に「そもそも普通って何よ?」と、自分の心を縛っていた「常識」から解き放たれ、今の自分を受け入れるパワーが湧いてくる作品をご紹介したいと思います。
自分の好きな服を選んで着よう!
最初にご紹介するのは、映画『アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生』です。
これは「ニューヨークの街を歩くお洒落な60歳以上の女性を紹介する」コンセプトのブログを元にしたドキュメンタリー。ここに登場する女性たちは「世間の目」なんてなんのその、自分が好きなファッションを思いっきり楽しんでいます。
初めてこの映画を見たとき、「いい歳してあんなファッションしてるのってイタいよね」と言われることを恐れて、年齢に相応しい無難な洋服を選んでしまっている自分に気づきました。映画を見終わる頃には「よし、これからは若い頃のように自分の好きな服を選んで着よう!」というパワーがマグマのようにフツフツと湧いてきたことを覚えています。
とはいえ、この映画に出てくる女性たちは皆、ファッションの上級者。いきなり彼女たちの真似するのは無理だとしても、「実は私はこれが好き」を思い出しながら、自分の基準で選んだものを一つでも身につけてみてはどうでしょう。それだけで自分の心を縛っていた鎖をゆるめるきっかけになるかもしれません。
ほんの小さな一歩を踏み出す勇気
次にご紹介するのはスイスの映画『マルタの優しい刺繍』です。
夫の死のショックから立ち直れずにいる80歳のマルタ。そんなマルタのもとに「村の合唱団の旗を縫って欲しい」という依頼がやって来ます。久しぶりに針と糸を持ったマルタはずっと心の奥にしまいこんできた「オリジナルのランジェリー・ショップを開く」という若き日の夢を思い出します。
紆余曲折を経てランジェリーショップの開店にこぎつけたマルタでしたが、閉鎖的な村でマルタのランジェリーショップは「恥を知れ」「いい歳をして」などと猛反発を受け閉店の危機を迎えます。でもマルタの行動力と信念が保守的な村の人たちの価値観を少しずつ変えていくのです。(おばあちゃんたちの底力と幅広い世代の女性たちの連帯がとても痛快!)
「もう若くないから」とをあきらめそうになった時、「何かを始めるのに遅いなんてことはないのよ」と、マルタのお茶目な笑顔がそっと背中を押してくれる――そんな作品です。
放送終了から16年。根強い人気作。
最後にご紹介するのは2004年に日本テレビで放送されたドラマ『すいか』です。
主人公は信用金庫で働く34歳のOL早川基子。最年長OLの基子は上司からも後輩からもなんとなく疎まれて居心地の悪さを感じてはいるものの、結婚の予定もなければ他にやりたい仕事もないという煮詰まった毎日を送っています。
そんなある日、唯一の同期の馬場真理子が信用金庫のお金を3億使い込み逃亡してしまいます。その事件がきっかけで基子は実家を飛び出し、「ハピネス三茶」という古い下宿屋に住むことになります。
ずっと「世間の常識」から外れないよう、母親の敷いたレールに沿って生きてきた基子ですが、下宿の個性的な住人たちと出会うことで自分の殻を破っていくのです。
放送されてから16年経った今もファンイベントには100人以上の熱烈なファンが集まる伝説的な作品です。
ちなみに私は「私みたいな者も居ていいんですかね?」と問う基子に対して浅丘ルリ子さん演じる“教授”がきっぱりと言う「居てよしッ!」というセリフが大好きで、その言葉に幾度となく救われてきました。今でも動画配信サイトやDVDで見ることができます。
3作品に共通しているのは「世間の常識に縛られない人は、他人のことも世間の常識で縛らない」ということ。私自身、「他人からイタい人だと思われたら嫌だな」という気持ちの裏には、他人に対して「いい歳してイタいな」と思う気持ちがありました。
まずは自分が誰かに対する「世間の目」になることをやめる。それだけで世界はずいぶんと変わるのではないかなと思います。