「おもしれー女」枠の清原翔登場。少女漫画人気シチュ押さえて「恋はつづくよどこまでも」【病院だらけの2020年冬ドラマ考察04】
●病院だらけの2020年冬ドラマ考察04
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- 前回はこちら:佐藤健のLINEもアツい「恋はつづくよどこまでも」キーワードは「敬意」
毎熊克哉「泣くなよ、俺がいるから」察した顔にキュン
毎週火曜放送のドラマ「恋はつづくよどこまでも」(TBS系)。素直で一生懸命な看護師・佐倉七瀬(上白石萌音)と、厳しくも患者思いの医師・天堂浬(かいり)(佐藤健)の病院を舞台にしたラブコメディ。視聴率は、第6話が10.9%、第7話が11.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と上り調子だ。
七瀬は5年間の片思いを実らせ、ついに浬の彼女になった。しかし、第6~7話では浬の元恋人に瓜二つの妹で医師の若林みおり(蓮佛美沙子)が七瀬に宣戦布告。さらには、浬の同期・来生晃一(毎熊克哉)が七瀬に告白。そして、七瀬を気に入り自分専属の看護師にしてほしいという御曹司・上条周志(ちかし)(清原翔)が入院してきた。七瀬と浬の恋路に爆弾がボンボンと放り込まれていき、しかも「キャー!」と言いたくなるキスシーンも増え、見ているほうも心が休まる暇がない。
みおり「私、あなたを好きになりました」
優秀な医師のみおり。仕事上で浬の良きパートナーになれそうだと周囲に認められている。みおりが浬に告白するのを聞いてしまった七瀬は、自分は浬に釣り合わないと落ち込んでしまう。
来生「泣くなよ、俺がいるから。好きだよ」
いつも誰にでも優しい柔和な来生の腕が、抱きしめた七瀬のコートにグッと食い込む。その余裕のなさにこちらもグッときてしまう。七瀬はお礼を言ったあとに「尊敬していて、心から信頼できる……でも、その、私は、天堂先生が……」と言い淀む。それを見て七瀬の言いたい思いを察し、目を潤ませながら微笑む来生の顔の切ないことといったら。
前クールのドラマ「少年寅次郎」(NHK総合)で、毎熊はこどもの頃の寅さんに冷たく当たる父親を演じていた。頬がこけて浅黒く、いつキレるかわからない緊張感ある“クズ親父”役とのギャップに、毎話、新鮮におどろく。
七瀬にフラれ、浬が日に日に七瀬を大切に思うようになっていく姿を間近で見て落ち込む来生。その来生に恋をしている七瀬の同期看護師・酒井結華(吉川愛)は、来生が気を落としていることを察するが、核心には触れられない。
結華「好きです!」
来生「え?」
結華「……おにぎりとカレーパン、どっちも」
来生「捨てがたいよね」
仕事でははっきりと物を言いテキパキとして優秀な結華が、来生を思うあまりに本心を言えないのが可愛らしくまたもどかしい。
魔王vs.王子? 「おもしれー女」枠・清原翔登場
来生から七瀬への告白を、浬は知らない。浬の心を乱すのは、病院のスポンサーである大手通販会社の御曹司・周志だ。
周志は女性と別れる口実に、たまたま居合わせた七瀬を「新しい彼女」として紹介。七瀬は混乱したまま「趣味悪い」とまで言われ、出会って10秒でアイスティーをぶっかけられてしまう。濡れた七瀬に周志は服や流行りの可愛いりんご飴を買ってあげようとするが、七瀬はりんご飴一口だけをもらってその場を去る。周志は、自分のお金になびかない七瀬を気に入ってしまう。
周志は、少女漫画あるあるの「おもしれー女」枠のキャラクターだ。「おもしれー女」とは、美しい顔かつ富豪、王子であるなど先天的属性があり言い寄ってくる女性に不自由しない人生を歩んできた男性が、その属性を魅力だと感じない女性に対して言う「僕はあなたに興味や好意を抱きました」を意味するセリフだ。
といっても、実際にそのセリフを言ったかどうかよりも「言いそう」「言われたい」感のほうが重視される。例えば、漫画「花より男子」(集英社)の道明寺司や、「テニスの王子様」(集英社)の跡部景吾、芸能人では山下智久らがそのイメージで語られる場合が多い。
七瀬を「おもしれー女」と感じた(と思われる)周志。こどもの頃に大動脈炎症候群を発症し、15年以上入退院を繰り返していて手術の経験もある。おもしれー女である七瀬をそばに置き、浬がどう出るかを見て楽しんでいるようだった。
「自分には何のとりえもない」と言う七瀬が、本当に浬に愛されているのか試す周志。それは、周志もまた「自分には何もない」と思い、孤独を感じているからだった。すべてを持っているように見えて心に埋まらない穴がある男性が、欠けたところはあるが純粋でまっすぐな女性に癒されていく。少女漫画「フルーツバスケット」(白泉社)が思い出される。これもまた少女漫画の王道だ。
周志は七瀬の恋人が浬であると察し、七瀬が自慢する「すべてを持っている」ように見える浬を困らせる。周志を演じている清原翔は、ドラマ「PRINCE OF LEGEND(プリンスオブレジェンド)」(日本テレビ系/2018年)では、ひょうひょうとした美容師王子・嵯峨沢ハルを演じて女性ファンを清原翔の沼に落とした。現在放送中の医療ドラマ「アライブ がん専門医のカルテ」(フジテレビ系)では、冷静に見えるがコミュニケーションは不器用な研修医・結城涼を演じている。
ヘラヘラしていて何でもできそうだけど困ったちゃんな、清原翔の清原翔っぽい役柄を凝縮したキャラクターの周志。次回、第8話では浬を患者に対する暴力、及び精神的苦痛で訴えるという。いま見るべき闇落ち清原翔だ。
「恋つづ」で描かれる「察する理由」と優しい世界
巷では、自分の様子から感情や要求を理解してほしいと思う人を「察してちゃん」と揶揄する向きがある。それが先鋭化して、自分の気持ちを理解してほしい、思いやってほしいという気持ちを少しでもこぼすと、インターネット上で批判の対象にすらなってしまう。「察する」に悪いイメージがついてしまっている。
「恋つづ」の登場人物は、恋心などに鈍感な面がありつつも、察し合う場面もかなり多い。
来生は、自分の告白に戸惑う七瀬の気持ちを察する。結華は、七瀬にフラれて落ち込んでいる来生の気持ちを察する。周志は、七瀬と浬の親しさを察する。浬は、七瀬の口についたソフトクリームを取ってほしい気持ちや、周志との間柄を誤解しないでほしい気持ちを察する。七瀬は、周志の心細い気持ちや浬の嫉妬心を察する。
何事でも相手に自分の思いをはっきりと伝えるべきという風潮に押されて、悪者のようになってしまった「察する」という行為。「恋つづ」を見ていると、本来「察する」とは相手への思いやりや配慮、相手へ興味関心を持つことで生まれる優しさや親しみの行動なのだと思い出す。
「察する」が行き過ぎて「思い込み」になってしまったときには、来生のような周りを良く見ている人が助言をしてくれる。また、察し合って優しさを交し、仲良くなった先に、浬が「お前こそ、変なガキに好かれやがって。なんだ専属って。とても気にくわない。以上」とデレたような、本当の気持ちを素直に話せる間柄になれる可能性だってある。これは優しい世界である。
ラブコメディである「恋つづ」を安心して楽しめるのは、七瀬が突っ走り浬がカッコいいというだけでなく、七瀬を含めた登場人物の一人ひとりに思いやりがあるから。そして、ダメなときにはダメとストップをかけたり、軌道修正をしてくれたりする細やかな優しさがある世界が作られているからだ。
浬を訴えると息巻く周志にも、七瀬をはじめとした医師、看護師たちの優しさが届いてほしいと願いながら、8話放送を待つ。
・「恋はつづくよどこまでも」(TBS系・毎週火曜)
https://www.tbs.co.jp/koitsudu_tbs
・ドラマ「少年寅次郎」(NHK総合)2019年10月クール
https://www.nhk.or.jp/drama/dodra/torajiro/
・ドラマ「PRINCE OF LEGEND(プリンスオブレジェンド)」(日本テレビ系)2018年10月クール
http://prince-of-legend.jp/
・ドラマ「アライブ がん専門医のカルテ」(フジテレビ系・毎週木曜)
https://www.fujitv.co.jp/alive/
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