看護師(34)

「キャリア志向なし」です。ご飯を食べていければ、いいんです。

産休中で、子どもを連れて散歩がてらスポーツ店を営む両親に会いに来たとのこと。『お話聞かせていただけませんか?』と聞くと、快諾してくれた。34歳。三児のママで看護師。子どもに目配りしながら、はきはきと質問に答えてくれた。

 看護師になって12年目。現在は次女を出産したばかりなので、産休中です。長女(7歳)、長男(5歳)を産み、次女は3人目。産前に6週、産後は1年半、産休をいただいていますから、かなり子育てに専念できています。

「人の役に立つ仕事がしたい」。中学生の時から、そう思っています

 高校を卒業し、看護師の専門学校へ3年間通って、現在は公的病院に勤務しています。ナースになりたいと思った理由ですか。テレビドラマの影響ですよ。題名は何だったっけな……。一つではなく、いくつかの番組を見て、そうなりたいって。「人の役に立つ仕事がしたい」。中学生の時から、そう思っています。

 父は個人事業主で、母も父の仕事を手伝っています。そういう環境に育ったからこそ、安定を求めたのだと思います。国家資格を取って、公的病院に勤務すれば、生活は安定しますから。女性が長く勤められる仕事だと思います。

 うちは夫も看護師なんです。職場の子育て支援策はしっかりしていて、夫が夜勤をすれば子どもが6歳になるまで夜勤を免除してもらえるのです。育児を優先できる環境が整っているので、ありがたいです。

キャリアアップへのこだわりは、全くありません

 ナースとしてのキャリアですか。キャリアアップへのこだわりは、全くありません。後輩を指導することはありますが、肩書はついていません。同期や後輩の中には昇進試験を受け、師長になっている人もいます。私もこの年齢なら試験を受けなければならないのですけれど、それはいい。「キャリア志向なし」です。ご飯を食べていければ、いいんです。責任のある立場になったら、帰宅時間が遅くなります。それは困るなあ。 

 「育休が終わったら、どうしよう」と思っています。 

 小学生の子どもの勉強を丁寧に見てあげられるのは育休の間だけ。産休が明けると、夫の両親と同居しているので、子の面倒は夫の両親に任せることになります。

 仕事のやりがいって、何でしょう。私は、主に長期療養が必要な慢性期の患者さんを担当しています。だから「元気になって笑顔で退院していく姿が何よりうれしい」というような実感を得ることは、ほとんどありません。ですが、障害のある患者さんの話をじっくり聞いたり、長期入院を支える家族をねぎらったりすることに充実感を抱いています。

 いつだったでしょうかね。ある時期から「私は慢性期の患者さんとゆっくり過ごしたい」と思うようになりました。「頑張りましたね」などと言うと、うなずいてもらえる……こんなやり取りがうれしいのです。障害者の方や小児科の患者さんとの触れ合いは「いいなあ」と感じます。

 今のところ家族は皆、健康で、これといって困ったことはないかな……。そう、4歳上の姉も結婚して家を出ています。だから、両親を置いてお嫁に行ったこと、ちょっと申し訳なく思っています。だから、両親が経営する店に、子連れでよく顔を出すようにしています。今日もそうなんです。

 季節感を意識しながら、子どもを遊ばせるのが、大切な時間です 

 3人の子どもたちは毎日、何をするでもないけれど一緒に仲良く遊んでいます。それが何ともいえず、うれしいですね。春や夏はいろんな植物が身の回りにあります。秋ならドングリを拾って、冬は雪……。季節感を意識しながら、子どもを遊ばせているのが、大切な時間です。  

 ななちゃん、じいちゃんとばあちゃんにバイバイって言ってね。さあ、長男を迎えに行かなくちゃ。

 富山市内にて

北陸に拠点を置く新聞社でスポーツ、教育・研究・医療などの分野を担当し2012年に退社。現在はフリーランスの記者として雑誌・書籍などに執筆。
街頭インタビュー