銀行員(33)

でもね、「やっぱり銀行を辞めなくてよかった」と思ってるんです

銀行員(33) 親しみやすい笑顔にひかれました。インタビューは即OK。「育休中なんです。楽しいから終わってほしくないなあ」。彼女は、子どもをあやしながら話してくれました。職場に復帰したとの連絡も。「毎日、一瞬で終わってしまいます。お風呂で子どもとゆっくり話したり、寝る前に遊んだりしていると、仕事のことを忘れて幸せを感じます」。充実しているようです。

 今、2人目の子の育休中です。最初の子を産んだ後、職場に復帰して、休憩時間が楽しいと思いました。出産した後は、独身の若い子より、パートの40代の女性と話すようになったかな。子育ての時期に必要な情報を、いただけるから。いろんなことを教えてくれます。

 50代の母親もいろいろアドバイスをくれますから、パートさんからすると、娘を励ますみたいな感覚なんですかね。最初の子を保育所に連れて行った時、すごく泣いたんです。止まらなくて、困ってしまって……。でも「うちもそうだったよ」って。そう言ってもらえると、「みんな、こういうこと経験してきたんだな」って。ありがたいですよね。

 私にとって40代のパートさんは大事な存在です。銀行にとっても、パートさんがいないと回りませんよ。もともと行員だった方が多いですね。頼りにしています。

「銀行がいいかな」って思って。転職しました

 長女は3歳、次女は1歳です。28歳で結婚し、29歳で第1子、32歳で第2子を産みました。今の職場は、働き方をいろいろ考えてくれていると思いますよ。

 20歳で高等専門学校を卒業し、工場で事務職に就いていました。最初の仕事は「何となく」という気持ちで決めましたが、「銀行がいいかな」って思って転職しました。23歳の時、新卒として入りました。転職する時、どうしたらいいか迷ったんですが、担当者の方から「中途採用で入るより、新卒で入った方がいいよ」と言われて、そうしたんです。

 第1子を出産し、復帰後しばらくは時短で勤務していました。勤務時間には6つのパターンがあってその中から選べるんです。私は午前9時10分から午後4時10分の時間帯を選びました。こういう働き方は、育児だけでなく、家族の介護に携わっている行員も選択することができます。時短を選んでいる方は女性が多いですけどね。

第2子を妊娠した時は銀行を辞めるつもりでした

 第2子を妊娠した時は銀行を辞めるつもりでした。つわりがひどくて、食事を作ることができず、とても働けないと思っていましたから。でもそうはいきませんでした。

 「辞めたい」と言おうとしていた時期、1歳上の先輩が妊娠したのに「続けます」と言ったそうなんです。1週間後に辞めたいと切り出そうとした私は、言いにくくなり、辞められなくなってしまいました。「妊娠しても、働けばいいんじゃない」と言われれば、「はい」と言わざるを得ず……というのが本音です。それに、銀行も以前ほど「はい、どうぞ」と簡単に行員を辞めさせなくなった。2000年代は採用が少ない時期があったし、辞める人を引き留めなかったんですけれどね。

 でもね、「やっぱり銀行を辞めなくてよかった」と思ってるんです。さっきは「パートさんから聞く子育ての話は、ためになる」って言いましたけれど、子どもの話抜きでしゃべるのも楽しいですから。愚痴も言っちゃいます。職場の関係は貴重だと思います。たまには、子育てを忘れて話をすることが大切だなって。もし専業主婦になって、家にこもってずっと子どもと向き合っていたら、どうなっていたかなあ、と思ったりもします。

ママ会では「まだ、働きたくないよねー」って話してます

 こうやって公園に来てみると、子育て中のお母さん、結構いますね。平日にのんびりと散歩していると、本当に幸せだなぁと思います。「もう、働きたくない」って思いますよ。最近、楽しいことはベビースイミングかなあ。子どものために始めたけれど、私も楽しいんです。

 銀行内で育児休業中の女性が集う「ママ会」があり、45歳で出産した方と話しました。何を話ししてるかって、「まだ、働きたくないよねー」なんてことです。

 富山市にて

北陸に拠点を置く新聞社でスポーツ、教育・研究・医療などの分野を担当し2012年に退社。現在はフリーランスの記者として雑誌・書籍などに執筆。
街頭インタビュー