学生(20)

自由に羽ばたく鳥になりたい。だから、私は鳥の絵を描くんです。

学生(20) 柔らかい日差しのあふれる東京駅・丸の内口の広場で、友達との待ち合わせまで時間をつぶしていた若い女性。声をかけると、「私なんてお話すること何もないです」と一度はお断りされた。それでも、と趣味について聞いてみたら、大好きな絵への情熱的な思いを聞かせてくれた。

 絵を描くのが大好きです。デッサンから水彩、油絵までなんでも描きます。特に、鳥の絵を描くのが好きなんです。

 高校のときの美術部顧問の先生に、人生で一番感謝しています。先生は当時まだ赴任したばかりで、24歳。いつも笑っている、明るく前向きな感じの女性でした。私に「鳥の絵を描くのが好きなんだ」って気づかせてくれた人です。先生は熱心で、私たち一人一人とよく話をしてくれ、何をどう描くかを掘り下げて丁寧に教えてくれました。

生命力にあふれていて、自由にどこかに羽ばたいていく鳥に憧れていました

 小さい頃から鳥が好きでした。特に翼の羽の重なり方とかがきれいだなあって、いつも空を見上げて、見とれていました。一番好きなのはワシですが、大きい鳥ばかりでなく小さい鳥もみんな生命力にあふれている。自由にどこかに羽ばたいていくのに憧れていたのかな。私自身は、どちらかというと口べたで社交的な方ではないかもしれません。その分、空想や絵で思いを表現していました。

 小学校のときから、授業で何かを模写するときは必ずと言っていいほど、鳥を選んでいたんです。その話を美術部の先生にしたら、「じゃあ、鳥の絵をもっと描いてみよう」って背中を押してくれました。

 鳥の羽って茶色、黒、白といったはっきりした色が多いのですが、先生が描くときは茶色の羽を表現するのに、中に青や緑を混ぜ込んでいくんです。そうやって、リアルな感じや立体感を描き込むのを、最初はただ驚きながら見ていました。先生からそういったテクニックを色々と教わり、さらに鳥の絵を描くのが好きになりました。

鳥を描くときは、絵を描き出すときの気持ちが軽やかだし、筆がスラスラと進む

 木や自然の風景を描くのも好きなのですが、鳥は特別です。絵を描き出すときの気持ちが軽やかだし、筆がスラスラと進みます。写真を見ながら描くのですが、何度も見なくても、すっと頭の中にイメージが入ってきます。

 今、手元には、先生に指導されながら書いた“思い出のワシの絵”しかありません。それ以外の絵は、展示会があったときに欲しいという方がいたので、お譲りしてしまいました。鳥の絵ばかり書いてあったスケッチブックも、高校の部室に置き忘れてきたまま紛失してしまったようです。このワシの絵は私の原点。これからも絶対に手元に置いておこうと思っています。

東京駅にて

東京都生まれ。桐朋女子高校、成蹊大学出身。三児の母。趣味は音楽、旅、お酒、ヨガ。当面の目標は家族でフジロックに行くこと。
フォトグラファー。岡山県出身。東京工芸大学工学部写真工学科卒業後スタジオエビス入社、稲越功一氏に師事。2003年フリーランスに。 ライフワークとして毎日写真を撮り続ける。