矢沢心「理解のないパートナーを不妊治療に巻き込むには…」

ミレニアル世代には身近なテーマである不妊治療。悩みを抱えながら戦っている人もいれば、まだ具体的イメージがわかない、という人もいるのでは。telling,編集部で働く私(男・38歳)もその一人。30代の妻との子どもを望む自分にとっては知っておくべきテーマなのに、まだまだ知識も心構えも不十分。不妊治療を体験した女優・タレントの矢沢心さんに、どうやって治療と向き合い、乗り越えてきたのかを尋ねてみました。

前編を読む

――矢沢さんは、夫である魔裟斗さんの存在が不妊治療の大きな心の支えになっていたんですね。魔裟斗さんとは、不妊治療について普段からかなり突っ込んでお話しされていたんですか。

治療がうまくいかなくても、あまり主人には報告しなかった

「何でも話していたかというと決してそうではなくて、私は、治療がうまくいかなかったことや不満に思ったことは、あまり主人に報告しませんでした。ダメだったことばかり話しても『そうか』としか言いようがないだろうし、なぐさめの言葉をかけてもらいたいわけではなかった。それに、自分が傷つくことって、相手も傷つくじゃないですか。私は治療が良い方向に向かっているときに、積極的に話すようにしていましたね。」

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――話せばいい、というわけではないんですね。魔裟斗さんが一緒に不妊治療に取り組んでくれていると感じるのは、どんな時でしたか。

「私の変化によく気づいてくれるところですかね。気が重くなって病院に行くのをつらく感じている日には率先して車で送ってくれたり、私が落ち込んでいるときには、『何か気分転換をしよう』と映画や買い物に誘ってくれたり。私の心の持ちように対して、彼なりに考えて、ケアをしてくれていると感じていました」

――女性から見た場合、夫をうまく不妊治療に巻き込んでいくには、どうしたらいいんでしょうか。

「不安だから一緒についてきて」と言ってみる

「これから不妊治療を始めるという方なら、最初に病院に行くときから2人のお休みの日を見計らって、『不安だから一緒についてきて』と言って、パートナーを連れていったらいいと思います。一緒にドキドキしながら病院に行って同じスタート地点に立てば、男性の当事者意識もぐっと高まる。そのときに、女性と一緒に男性の精子の検査もしてもらうこともお勧めです。精子の検査というのはあとで持っていくこともできるんですが、病院で採取すればフレッシュな状態で検査ができて、正確さも増します。何より、2人で一緒に不妊治療の道を歩むんだ、という自覚が持てると思います」

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不妊治療中に芸能界の仕事を休んだ理由

――矢沢さんは、治療の途中でそれまで続けていた芸能界のお仕事をお休みされていますね。

「そうですね。最初は仕事をしながら治療をしていましたが、4回目の体外受精のあと、仕事に一区切りをつけて休むことにしました。『一つのことに集中したほうがいい』というのが主人の考えでもあったし、ちょうど、出演したドラマで納得のいく仕事ができた直後で、気持ちにも区切りがつけられたこともありました」

――不妊治療と仕事との両立に悩んでいる女性も多いようです。あるキャリア志向の女性は、「不妊治療に必死な『かわいそうな人』と思われたくない」と、職場に打ち明けられず、治療と仕事の板挟みになっていました。どうやって、仕事との折り合いをつけていけばいいんでしょう。

「難しい問題ですね。打ち明けたら部署を変えられるなど、不妊治療への理解がない職場というのは実際まだまだあるでしょうし、その方が打ち明けられないのは、そういう職場のムードを感じているからかもしれませんよね。それなら仕事を辞めればいいかというと、逆に辞めることをストレスに感じる方もいるでしょうし、経済的な理由でやめられない、という方もいるでしょう。どんな状況であれ、大事なのはモチベーションを保ち続けることだと思います。職場から通いやすい病院や土日も受診できる病院を選んで転院するなど、少しでも自分にとってストレスが少ない環境を整えることに集中するべきではないでしょうか」

――矢沢さんは、治療をしても子どもができなかったら、と考えたことはなかったんですか。

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もし子どもが授からなかったら・・・を考えたこともあった

「あります。でも、そのときに私が思ったのは、仮に子どもが授からなかったとしても、そのぶん、夫婦2人で過ごす時間が増えるわけですし、子育てにかけるはずだったお金も自由になって、旅行にいけたり、おいしいものを食べたりできる。それならそれでいいと思っていました。大好きな人と一緒に過ごしていけるわけですからね」

――最初から「産まない」「子どもを持たない」という人生を選ばれる方もたくさんいらっしゃいますが、こうした考え方についてはどう思いますか。

「そうした選択をされるのは、自分の未来設計ができているということで、素晴らしいなと思います。むしろ思うのは、どんな選択をされるにしても、あまり時間を長くかけて悩み続けているよりも、スパっと決断してしまったほうが良いということです。仮に1年間考え続けていても何も前に進まないわけですし、その分、気持ちを切り替えて有意義な時間を過ごしたほうがいい。自分の人生は自分のものなんですから、最終的に自分を大事にしてあげることが一番だと思います」

 矢沢さんは2014年には自然妊娠で授かった次女を出産。現在は子育てのかたわら、不妊治療をしている人を対象とした「お茶会」を開き、治療の悩みを聞いたり、自身の体験を伝えたりする活動をおこなっている。どんな時でも前向きに考え、行動していこうとする姿勢がストレスを和らげ、結果的に治療にもプラスとなるのかもしれない。矢沢さんの言葉を聞きながら、そんなことを考えた。

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矢沢心さんと夫・魔裟斗さんの共著『夫婦で歩んだ不妊治療 あきらめなかった4年間』(日経BP)
未婚、既婚、子どもの有無、転職や独立の経験者。恋好き、旅好き、おいしいもの好き(缶チューハイ含む)。さまざまなstoryを持つ「telling,」編集部メンバー。

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