がんばっても結果が出なくて。いつ妊娠できるんだろう……。

主婦(36歳) 昼下がりの新宿駅。行き交う電車が見えるテラスで、仲良く電車を眺めていた親子に、おそるおそる声をかけたところ、突撃インタビューに応じてくれた彼女。途中からぐずりだして泣きやまない息子さんを優しく、優しくなだめながら話してくれた彼女は、普段からとてもあたたかいお母さんなのだろう、と思った。

 仕事ですか? 子どもを産んでから辞めちゃいました。前は、食品会社の工場で設備関係の仕事をしてたんです。大学を卒業してからなので、13年目で産休を取らせてもらって……。本当は復帰しようと思っていたんですけど、保育園の待機児童が多い区なので預け先がなくて。13年間ずっとがんばり続けてきたし、これからは子ども中心の生活になるので、ゆっくり子どもの世話をしようかなと思って、会社を辞めました。

自分にとっての休暇、みたいな感じ

 会社は「いつ戻ってきてもいいからね。子どもが少し大きくなって時間ができたら、また手伝ってくれたら嬉しいな」といってくれました。自分にとっての休暇、みたいな感じ。子どもとの時間をゆっくり過ごせるので、仕事を辞めてよかったなって。

 仕事をしていたときは、忙しかったです。毎朝6時には家を出て、夜8時くらいに家に帰れていたかな。家には寝るために帰っていた感じなので、主人と顔を合わせても会話する余裕すらないくらい疲れてて。休みは平日1日と日曜日。長期休暇も取れなくて、主人との時間もあまり取れなかったんです。

これまで十分がんばったからもういいかと、諦めはつきました

 保育園に入れなくて仕事を辞めることになったとき、これまで十分がんばったからもういいかと……諦めはつきました。仕事を辞めたことで家族との時間が取れるようになったのは、本当によかったです。

 自分が休んでいる間に後輩が自分の上の立場になったという話を聞くこともありますが、それはそれで別に。仕事を続けていたらもっと立場的には上にいけたかなとも思いますけど。今は家族の時間が大切なので、いいかなと思います。

「やっぱり子どもがほしいね」って

 結婚したのは2009年。ずっと仕事をやっていて。犬を飼っていたんですけど、2013年か2014年頃、飼っていた犬が病気で亡くなったんです。それをきっかけに主人と「やっぱり子どもがほしいね」という話になったんです。
それまでも「子ども、どうする?」という話はあったんですけど、お互い仕事も忙しいし、子どもができるとプライベートな時間がなくなっちゃうので、まだいいかなという感じ。

“当時、33歳。年齢的な焦りもあり不妊治療に通ったものの……”

 当時、33歳だったんですけど、やっぱりすぐには子どもができなくて。年齢的な焦りもあったので、仕事をしながら不妊治療に通うことにしたんです。

 仕事はシフト制だったので、なんとか時間のやりくりはできたものの、正直大変でしたね。せっかく仕事が早く終わっても、すぐにその足ですぐに病院に行かなきゃいけないし。大きな病院に通おうかと思ったのですが、待ち時間が長くなるでしょ。だったら、有名じゃなくても自分にあったところを探そうと思って、近くの産婦人科に通うことにしました。

 治療はうまくいって、結果的には半年くらいで妊娠できたので、本当に嬉しかったです。ただ、治療をした半年間はまるで出口のないトンネルを歩いているような感じでつらかった。生理がくるたびに「また今回もだめだったんだ」って。毎回落ち込んでましたね。

主人のさりげない励ましで気持ちをリフレッシュ

 不妊治療はつらいことばかり。治療は痛いし、注射も何回も打たなければいけない。お金もかかる。がんばっても結果が出なくて。仕事だったらがんばれば成果が出るのに、こればっかりは自分ではどうしようもできなくて。いつになったら妊娠できるんだろうと思って落ち込んで、一人自宅で泣くことも……。

 そんなとき、主人が「おいしいものを食べに行こうか」とさりげなく誘ってくれていたんですよね。主人の気遣いがとても嬉しくて。だから、つらくてもまたがんばろうって、気持ちを前向きに持てたんだと思います。

 それから半年後にやっと妊娠できたんです。ほかの人から見たら「たった半年」かもしれないけど、主人と私にとってはすごく長い時間でした。

 子どもが生まれてからは、子ども中心の生活にはなりましたね。そのぶん家族で過ごす時間が増えてよかったです。働きづめだったころと比べて体調もよくなりました(笑)。

 趣味ですか? 昔は走ったり、ジムに行ったり、音楽が好きなのでフェスに行っていました。今は子どもがいるのでできていません。そのかわり家族で温泉に行ったりして過ごせる時間が持てるようになったから、それはそれでいいかなと思っています。

新宿にて

明治大学サービス創新研究所客員研究員。ミリオネアとの偶然の出会いをキッカケに、お金と時間、行動について真剣に考え直すことに。オンライン学習講座Schooにて『文章アレルギーのあなたに贈るライティングテクニック』講座を開講中。
フォトグラファー。岡山県出身。東京工芸大学工学部写真工学科卒業後スタジオエビス入社、稲越功一氏に師事。2003年フリーランスに。 ライフワークとして毎日写真を撮り続ける。
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