妊活と不妊治療のリアル 02

不妊治療で初期流産。「なんで私だけ」の気持ちがぬぐい去れない

流産した妻に無神経発言を連発してしまった「イノセント夫」A男さんと、結婚後、不妊治療を経験したM子さん。ともに結婚4年目、初期流産の経験があるという共通点もあって、セキララトークは大盛り上がり。今回は、M子さんが経験した不妊治療のリアルに迫りました。 A男さん 30歳、結婚4年目。結婚と同時に同居。妊活中だが妻とギャップあり。 M子さん 35歳、結婚4年目。結婚前に同棲2年。不妊治療を経て現在は子どもなし、夫婦2人で暮らす。

「イノセント夫」の反省

telling,編集部(以下編集部):流産した妻を励まそうとして「ラーメン食べに行こう」「イヤホン買いに行かない?」――イノセントに墓穴を掘り進むA男さんの発言に、軽く言葉を失ってます(笑)。

A男さん(以下A男):本当にすいません、自分がいかに何も考えてなかったかわかって、心が痛すぎます。この間も、流産してずっと泣いてる妻に「もう泣くのやめなよ」とか言っちゃった……。やばいですよね。

M子さん(以下M子):奥さまから何か言われませんでした?

A男:「正直、あなたとやっていけるかわからない」って言われました。初めて、僕たち夫婦の頭に「離婚」の文字がちらついた瞬間でした。それですっごく考えて、女友達にも相談して、このゴールデンウィークにしっかり話し合いました。僕は、自分本位で、妻がどう感じるかを考えてなかった。反省して、なにかいう時は一回考えてから発言しようと思います。本当に改心します。

編集部:すごい進歩! その気持ちを忘れないでいて、って思います。

「この人と自分のDNAを残したい」と「子どもがほしい」は似て非なるもの

M子:私、けっこう境遇は似てるけど、A男さんの奥さまとは全然考え方が違うかも。私は結婚するまで2年間同棲してたんですけど、その時は避妊してたんです。なんとなく、結婚式を挙げるまではまだかなと。32歳で結婚したあと、避妊をやめました。それまではずっとピルを飲んでたんですけど、やめたらすぐ妊娠すると思ってたんです。

編集部:なるほど。妊娠したくなったらすぐできると思っている人、多いかもしれませんね。

M子:1年経ってもできないんで、あれ? と思って。ダメだったらダメと早めに知りたかったので、不妊治療外来に行ってみました。でも、2人とも異常なし、むしろ卵巣年齢は若いって診断でした。

編集部:前回、「子どもはいてもいなくても、と思ってた」とのことでしたけど、この時は子どもがほしかったんですか?

M子:うーん、私、夫のこと好きなので、「この人との子どもならほしいな」と。もっと言えば、「私と夫のDNAを継いだ子どもを見てみたい」という欲求が一番強いかもしれないですね。ぶっちゃけ、そんなに子どもは好きじゃないんです。でもそういう友達も「自分の子どもは愛せる」と言ってたので、きっと大丈夫でしょう、とか思って。

A男:あ、それうちの妻も言ってました。「あなたとの子どもだからほしいんだよ。2人でも楽しいけど、3人ならもっと楽しいと思うから」って。

編集部:お二人ともラブラブですね。でも、すれ違うときもある。

治療してるって、誰にも言えなかった

M子:夫も治療には協力的で、初回から一緒に病院に行ってくれました。でも不妊治療って、とにかく女性の負担が大きいんですよ。まずは「タイミング法」っていうのから始まるんですが、基礎体温をつけて排卵日を把握して、排卵日前ぐらいに病院に行く。内診でエコーで排卵しているか見るんです。それで、「まだだね」ってなったら「もう一回明日来て」とか言われる。排卵してたら、「今日してね」って言われます。

A男:え、そのときってお仕事されてましたよね?

M子:フルタイムでバリバリ働いてました。しかもフレックスとかまったくなかったので、半休を取りまくらないといけないんだろうかと思って上司に相談しました。そうしたら、「どうせいつも残業してるから、有給とかじゃなくて適宜やってくれればいいよ」って。助かったというか(笑)。

A男:「どうせいつも残業してるから」って(笑)。まあわからないでもないですけど。

M子:それでも、不妊治療をしてることを上司以外のメンバーには知られたくなくて、対外的には「胃腸の調子が悪くて病院に行ってる」っていうことにしてました。月に数回は休んでたので、冷静に考えるとめちゃくちゃ体調不良の人ですよね(笑)。
なんか、若い人が多い会社だったので、「不妊治療してる」っていうと過剰に「大変ですね」て言われそうな気がして。まあ、大変は大変なんですけど、別にそこ共有したくないというか。変な同情をされたくないというか。

つらいけれど、変に同情してほしくなかった

A男:それ! 妻も言ってました。「つらいけど同情してほしくないし、他人と共有しようとも思わない」って。

M子:なんでしょうね、この気持ちは。その時いた会社は、結婚して子どもがいない女性って私だけだったんです。男性社員は結婚してすぐ子どもができてる人ばっかりで、「子どもができないんだ、大変そう、かわいそう……」とか絶対思われたくなかった。

 でもやっぱりつらいんですよ。今までの人生、頑張ったら何かしら結果を出せた。勉強でも、人生でも。それが、不妊治療っていつ結果が出るかもわからないし、成果が見えない。その間にほかの人は「子どもできた」って言ってる。毎月何日も病院に行って、何時間も待って、「なんなんだろうこれは」って。

A男:そんな気持ちで頑張らないといけないのか……。女性への負担がめちゃめちゃでかいですね。

パートナーとの関係、子どものこと、不妊治療……。これってタブーなのかな? 言っちゃいけないのかな? そんな気持ちで悩んでいる方、telling,までご意見をお寄せください。
https://telling.asahi.com/request

20~30代の女性の多様な生き方、価値観を伝え、これからの生き方をともに考えるメディアを目指しています。
妊活の教科書