衝撃の“ブッチ事件”から逆転、結婚!37歳C男の場合 その2
●婚活をナナメから見る 05
衝撃の“ヨガ女子ブッチ事件”からの逆転劇―C男の場合その2
婚活パーティでは3分程度で次々と会話する相手が変わっていくという、まるでスポーツ試合のような時間との戦いに息切れし、婚活サイトへと“戦場”を移ったC男。画面越しのやりとりの末、食事にこぎ着けた女性もいた。しかし、30代半ばの事務職のその女性とは、趣味の海外旅行の話で盛り上がったものの、2度目の食事に行くことはなかった。なぜ、先に進む気が起きないのだろう……?
その後2回、別の女性と食事に行った。メッセージをやりとりしている時は「好感触」だったのだが、会って話してみると、なんだか相手が自分の話ばかりをしているように感じる。メディア企業勤務という仕事柄、日頃から人の話を聞くのには慣れているC男。質問ばかりしてしまうクセがそうさせたのかもしれないが、何となく、その場を盛り上げるために全エネルギーを使ってしまったような感じで、相手とお互いにわかり合えた感覚がまったくない。いずれも、1度の食事で自ら「ゲームセット」と判断した。
相手にとっても人生の貴重な時間、浪費させたくない
婚活サイトには無限の選択肢がある一方で、会っても会ってもピンと来ない。友人には、「あなたは望みが高すぎるから」とよく言われるが、だからって、好きでもない、好きになる予感すら感じない相手と無理やり交際することが正しいのか……。まして相手も妙齢の女性。ヘタに数カ月も引っ張った上で「さようなら」では、相手の貴重な時間をも浪費してしまうことになる。どうすればいいんだ……。
そんな思考の迷路に入り込む中、「事件」が起きた。32歳、ヨガインストラクター、家も自分と同じ区内。C男も当時、ヨガ教室に通っていたことからこの「ヨガ女子」とメッセージでの会話が弾み、食事の約束をとりつけた。
ちょっと高級感のある渋谷のイタリア料理屋でコースを予約し、準備万端整えたはず……が、店に入って約束の時間を過ぎても、相手が現れない。ん? と思ってスマホで「婚活サイト」の彼女のページを開くと、「退会しました」の文字が目に飛び込んできた。写真、プロフィール、これまでやりとりを重ねてきたメッセージの一切が、削除。やられた……。
衝撃の「ヨガ女子ブッチ事件」が、思わぬ好機に?
何かやむを得ない事情があったのか、そもそも気が変わったのか。電話番号もメアドも、本名すら知らず、婚活サイト上のメッセージでしかつながっていなかった彼女に確かめるすべもないし、詮索するのもヤボというものだろう。やむなく店員に「1人来られなくなった」と告げ、周囲の客の視線を感じつつ、1人でコース料理を平らげるしかなかった。
この「ヨガ女子ブッチ事件」にはさすがに動揺したが、しかし、考えてみればこれは会話のネタとしては秀逸かもしれない。そう思って、パスタを1人かき込みつつ、15年来の女友だちに、早速LINEでメッセージを送った。
「婚活サイトで知り合った女にブッチされ、おしゃれレストランで1人イタ飯なう」
「えー、大変だね。それなら、女の子紹介するよ」
……へ? 予想外のリアクションに混乱しながらも、これはまさに棚から牡丹餅。数週間後、女友だちの紹介で、3人で食事をすることにした。
「友だちの紹介」。婚活サイトや婚活パーティなどが登場するはるか以前から存在する、古典的な手法。C男は無限の選択肢が広がるネットの世界に夢中になって、「友だちの友だち」という発想は忘れていた。渋谷のこじゃれたダイニングバーで開かれた食事会は、自分と女友だちばかりが昔の話で盛り上がってしまったが、彼女もニコニコ笑っていたし、感じは悪くなかった。でも、相変わらず、ピンと来ないよな……。
そんなモヤモヤを抱えたまま数週間が無為に過ぎた。女友だちから、「その後、進展あった?」と連絡が来た。「うーん、良いとも悪いとも、よくわからない。いまいちピンと来ないんだよ」。すると、女友だちにこう一喝された。
「何言ってんの。あなたたち、ピッタリだよ! あなたに絶対合いそうだと思って、あの子を選んだんだよ」。
自分自身ではなく、「自分をよく知る人」のひと押しが決め手に
C男にとって、これは目からウロコだった。女友だちの説明は具体的だった。「あなたは仕事でもプライベートでも周りに気を遣いすぎる性格で、いつも余計に傷ついている。しかも、これまで付き合った女はあなたを振り回すタイプばかり。その点、彼女もあなたと同じで、まわりに気を遣いすぎて損をしているタイプ。同じタイプだから、きっとうまくいくと思ったんだよ」。
これは説得力があった。言われてみれば、自分は今まで勝ち気な女性とばかり付き合ったあげく、精神的に消耗して失敗していた。ならば、女友達の忠告に従ってみるのもアリか……。
結局、紹介された彼女とは食事を重ね、数カ月後に交際に発展。付き合ううちに「彼女と結婚したい」という気持ちも高まり、約1年後、入籍に至った。
無限の選択肢が与えられるインターネット婚活ではまった「ピンと来ない」の無限ループ。C男にとってそこから抜け出す鍵は、古くから自分を知る友人によるプッシュという、まことにローテクな一手、だったのである。
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