国立大学医学部技術補佐員・神主(33歳)

「私が幸せにするから結婚して」と言える女性になりたい。【婚活02】

国立大学医学部技術補佐員・神主(33歳) リケジョ、神主、キャスター、最近ではダンス競技で活躍しているという。多才な彼女は、いろんな場で必要とされ、仕事・趣味に打ち込んでいる。だからこそ、聞いてみたかった。「恋愛や結婚について、どう考えていますか」。彼女は揺れ動く心の内を語り始めた――。

 「技術補佐員」というと、教授や研究者のお手伝いがおもな仕事なんですが、大学院生時代からのつながりがあるので、自分のやりたい研究テーマに取り組むことができています。白衣を着ていないのは、意外ですか。でも、実験室ではあまり着ないんですよ。「リケジョ」ってやはり、白衣のイメージなんですね。

 県内の高校を卒業し、近県の大学に進みました。そこでは生物の研究にどっぷり。実験対象の昆虫に合わせて真夜中に飼育室で生活をしたり、クリスマスの夜をコオロギと一緒に過ごしたり、なんてこともありましたね。

アカデミックな世界にこんなに長くいるなんて、想像もしませんでした

 家は神社で、私は神主でもあります。二人姉妹の次女なので、本当は姉が家を継ぐはずでしたが、神主になるために進学した先で結婚してしまったんです。だから私が県外の大学に進学したいと言ったときは、猛反対されました。何とか親を説得して隣県の大学へ進んだのは、お互いに譲歩した結果でした。

 学部を卒業したあと、「もう少し研究をしたい。でも、いつまでも神社を放っておけない」と悩みました。そのとき助言をくれたのは、幼い頃に家へ遊びに来ていた、博士号を持つ父の古い知人でした。「生物の研究がしたいなら薬学がいいよ」と勧められ、地元の国立大学の大学院に進学しました。

 修士課程を修了後、技術補佐員を5年間務める間に博士課程も修了。技術補佐員としては現在、6年目です。理科の授業は好きだったけれど、アカデミックな世界にこんなに長くいるなんて、想像もしませんでした。

 今取り組んでいる研究テーマは、肥満について。スタイルを気にする女性は多いですよね。「肥満」「脂肪」という言葉にはマイナスイメージがあります。でも、肥満の素になるエネルギーを蓄積する脂肪は、低温の刺激を与えることで、エネルギーを燃焼しやすい脂肪になるんですよ。いつか肥満や生活習慣病の対策につながる成果を上げることができればと思っています。

神社は伝統・文化を守るだけでなく、発信する場であるべき

 20歳前後のときは「何で私が家の犠牲にならなきゃいけないの」と考えたこともあります。でも、不思議と「神主にならない」という選択肢はなかったんです。両親がやってきたことを見てきたし、神社に関わってくださる方にも可愛がってもらった。本心ではずっと継ぎたかったんだと思います。

 神主になってから、大寒の日に海で禊(みそ)ぎをしていたら、取材を受けました。それを見た地元のテレビ局から声が掛かり、番組のキャスターやお天気お姉さんをしたことも。とても勉強になりました。人に伝えることは難しくて、想像以上のパワーが必要でした。でも、ちゃんと伝わって反応があると嬉しいんですよね。それまで、神社は伝統・文化を守る場所だと思っていたんですけど、良いことはどんどん発信していきたいと思うようになりました。

結婚相手は「自分発信」で決めたい

 結婚ですか……。目の前に気になる人が現れたら、その人が長男か、次男・三男かは、私にとって重大な問題です。「長男以外」という条件をクリアしても「相手に負担をかけちゃうなあ」とか。こういうことを気にせず恋愛できればいいのだけれど……。

 お見合いをしたことはあります。「婿養子が前提」というお見合いで、やっぱりどこか引け目を感じてしまします。両親や周囲の人に喜んでもらえる結婚をしたい。そう思うけれど、実際に会ってみると目の前の相手と過ごすイメージがわかなくて……。会ったその日にお断りをしてしまったんです。返事は持ち帰るものなんですよね。母に叱られました。

 大学での仕事は充実していますから、あっという間に時間が過ぎていきます。だから、期限を決めようと思って、昨年秋に神社を支えてくださる皆さんの前で宣言したのです。「次の誕生日までに結婚の見通しをつける」と。私は6月生まれ。もうちょっとですね。「だらだらしていては、いけない」と思っています。

 「結婚しなきゃ」と思うと正直しんどい。自分に自信が持てたらもっと積極的でいられるのかなって考えたりもします……。でも、自分の意志で決めた人とでないと乗り越えられないこともあると思うので、できれば結婚相手は「自分発信」で決めたいです。「私が幸せにするから、結婚して」そんなことをカッコよく言えるような女性になれたらいいんですけどね。

富山市にて

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北陸に拠点を置く新聞社でスポーツ、教育・研究・医療などの分野を担当し2012年に退社。現在はフリーランスの記者として雑誌・書籍などに執筆。
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