スプツニ子!(32歳)

スプツニ子!、今のモットーは、”ひとの期待に応えない”こと。

スプツニ子!(32歳) 生理や妊娠、そして年齢に応じて大きく変わる、女性の体。 毎月の生理に、出産のタイミング。女性の多くが体に関する不安や悩みを抱えているけれど、職場で理解を得るのはまだまだ難しいのが現状です。 そんな社会にどう立ち向かえばいいのか――? ヒントを求めて、これまでに生理や体験できる「生理マシーン」など、男女の体の違いを考察する作品を発表してきたスプツニ子!さんにお話を伺いました。

 女性は生理や妊娠、出産で体調や働き方が変わります。管理アプリで、いつ自分の生理がくるのか把握し、それに合わせて仕事のスケジュールを立てることもありますよね。

 体調に変化があることが常である女の人に対して、男の人はロボットみたいに一定に働ける。だから男性が多い会議で、自分が生理中で体調が悪いとき、それを女性が言いづらいこともあると思うんですよね。

SNS感覚で、バイオリズムをシェアする

 でも、タブーとされていることは変わっていかなければいけないと思う。人口の半分が女の人で、生理でこんなに体調が変わるのに、それについて職場で話もできないことは良くないと思います。パフォーマンスが落ちたりコミュニケーションの齟齬が生じたり、それってビジネスにとっても問題じゃないですか。

 私はバイオリズムをシェアする文化が社会に浸透すればいいなと思います。お互いにソーシャルメディア感覚で、カジュアルにバイオリズムを共有する。生理や排卵日のような直接的なことではなく、好調なのか、それとも不調なのか。そのくらいのコミュニケーションはあってもいいんじゃないかな。

 例えば、「Apple Watch」のように身につけられて、バイオリズムによって光の色が変わる。そうしたら、「今日は調子良いんだな」「今はベストじゃないんだな」っていうことが、お互いに口に出さずとも色で分かったり。インスタグラムの「ストーリー」みたいに、バイオリズムがリアルタイムにカジュアルに共有できるサービスがあってもいいと思います

出産のリミットがあるからこそ、”悟り”のタイミングは早い

 もう一つ、女の人の体に関する大きなハードルは、出産できる年齢にリミットがあること。仕事をやりたいけど、一方では出産の年齢も考えなければいけない。医療も進歩しているけれど、女性だからこその迷いってまだあると思います。

 こうした悩みのない男の人は良いなぁ~と思っていましたが、そういう悩みがあるからこそ女性の人生も豊かになるんだろうな、と考えるようになりました。

社会の期待に応えることと、自分が気持ちいいこと。この2つの軸のバランス感を持つことって大事だなと思うんです。

 女の人は20~30代で「いつ産む? それとも産まない?」などの難題に立ち向かいます。不安になることもあるかもしれないけど、それゆえに実は男の人よりも、この2つの軸のバランスの取り方が上手くなる人が多いように感じます。

 悩むからこそ「人生を豊かに生きるってどういうことだろう?」ということへの理解を深めるチャンスが訪れる時期が、女の人は少し早く訪れる傾向にあると思う。男の人の中には「社会的に成功しなくては!」と、「社会の期待に応える」ベクトルに寄りかかったまま引退しておじいちゃんになっちゃう人もいるけど、豊かに生きるための理解を深めないまま人生の終盤に入っちゃうなんて、もったいない!って思います。

 もちろん女性の出産のリミットが難題なのは変わらないですけど、人生のいろいろな生き方を悟らせてくれる経験でもあると思います。

 社会から求められることに対して、女の人って結構敏感になっちゃうことが多いと思うんです。社会の期待に応えようっていう気持ちは、子どもの頃から染み付いているものだと思んだけど、いつも何かの期待に応えようとしてると、応えられていない時点で嫌な気持ちが生まれちゃう。

 だから「女性はこうあるべき」という社会的プレッシャーをいい感じにスルーする“サーフィン力”をもつと良いと思います。頑張れって言われがちで、実際に頑張っちゃう女の人ほどこれを意識した方がいいんじゃないかな。

 私は今、“ひとの期待に応えないこと”をモットーにしてます。世間からの期待をプレッシャーに感じたこともあるけど、そのうちだんだんあまり気にしなくなってきました(笑)変な話、その方が仕事もうまくいったりするし、結果的に期待に応えられたりもする。やりたいことも明確になってくるし。

「ヒョウ柄のおばちゃん」もかっこいい

 何かをやろうと思ったときに、自分のためにやりたいのか、それとも社会の期待に応えたいからやりたいのか、この2つの軸のバランス感を持って自分を観察する癖をつけたら、自分が好きに生きるための感覚をつかみやすくなるんじゃないかなと思います。

 これけっこう古い言葉ですけど笑「オバタリアン」って、かっこいいと思うんですよ。ヒョウ柄着て、大声で話しながらどら焼き食べてるようなおばちゃん達。パンクだなって思うし、自分が好きなように生きて芯があるなと思います!「自分が気持ちよく今、生きている」ことを大事にしたら、女性はもっと幸せになれるんじゃないかな。

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2009年に株式会社キャリアデザインセンターに入社。求人広告営業、派遣コーディネーターを経て、働く女性向けウェブマガジンの編集として勤務。約7年同社に勤めたのち、会社を辞めてセブ島、オーストラリアへ。帰国後はフリーランスの編集・ライターとして活動中。主なテーマは、「働く」と「女性」。
neru lab(ネル・ラボ)として、広告映像・音楽制作を手がける。2017年に新江ノ島水族館で開催された「ナイトワンダーアクアリウム2017~満天の星降る水族館~」では、総合演出としてイベント全体のクリエイティブを担当。休止していた音楽ユニットkrackpotの活動を再開。表現研究ゼミTRANSWEETS(トランスウィーツ)を主宰するなど幅広く活動している。