つい最近まで納棺師をしていました。

ファッショングッズショップ販売員(33歳) 表参道のファッション施設内の店舗で働き始めたばかりという彼女。声をかけると、まもなく新人研修が始まるという。それまでのわずかな時間にあせって質問を浴びせる私に、「終わったあとにまた、時間つくりましょうか?」。街頭での不思議なご縁で出会う女性たち。ほんと、誰もが魅力的なんだ。

 この間まで、納棺師の仕事をしていました。そうです、映画「おくりびと」の。今の仕事に就く前の半年だけですけど、葬儀の派遣会社に登録したら「やってみないか」って言われて。

 抵抗はなかったです。ご遺体を見ても、そこからどう綺麗になるのかなとか、祖母が亡くなった時もこうやって丁寧にやって下さったのかなって思いました。発見が遅れて皮膚が変色してしまっているような方も、「人生いろいろあったんだな。キレイにしてあげたいな」なんて思いながら、シャワーをしたり、お化粧をしたりして。お化粧品も私たちが普段使ってるものとは違うんですよ。亡くなった方は脂も出ないから。

職場の環境が合わなくなると辞めたくなっちゃう

 仕事はけっこう転々としていて、新卒で入ったホテルマンから、空港のグランドスタッフ、輸入車ディーラーの受付、テレアポ……といろいろやりました。

 靴の販売をしていたときは、まずはお客さんと仲良くなってから買いにきてもらうスタンスで働いていました。自分が買う側だったときに好きだった店員さんがいて、その人みたいな接客をしたいと思って。

 未経験でもすぐに店長に抜擢されて、スタッフに支えられて楽しく働いていましたが、途中で上司が変わって売上、売上、となっちゃって。お店の場所が、新宿や大宮のようには買い物客がいないところで、話して話してやっと買ってくれるのに、そういう立地は考えてもらえないのかなと……。

 2階建ての中距離列車でグリーンアテンダントをしていた時は、おじいちゃんにセクハラされちゃって。毎朝何時に乗ってこの席で新聞を読んで、必ずコレとコレを買うっていう、スタッフ全員が知ってる80歳ぐらいのおじいちゃん。

 最初はお釣りを渡す時に手をギュッて握られるみたいなことから始まって、段々エスカレートして。今さら注意もできないから、その人がいる時間はシフトを入れないでと会社に言ったんです。けど、決まったシフトを私のためだけに崩すわけにはいかないと。うーん、じゃあもう辞めちゃえって。最初にキッパリ断っておけば良かったんですけどね。ちょっと良くない結果になっちゃって恥ずかしい……。

続かないなら、楽しいことを次々に見つければいい

 環境が悪くなると、一気に楽しくなくなっちゃうんですよね。それが転職のきっかけになることが多いです。結構すぐに辞めちゃって、これでいいのかなって自分でも思っていたら、楽しくないとダメなんですって、私。大学や企業でも使われている「利き脳のテスト」というのを受けたら、「楽しいことをやって、色々経験した方がいいタイプ」だったんです。

 仕事を辞めようか迷っていた時期にテストを受けて、診断士の方に相談したら「大丈夫よ、続かないタイプだから気にしなくて」って言われました。「そうなんだ、無理に続けるより楽しいことを次々見つけた方がいいんだ」って何だかホッとして、それからはどんどん楽しいことをやるように意識しています。

 主人は俳優の仕事をしています。仕事の話もふたりで、よくします。
まわりは「不安定じゃない?」って心配もしますけど、向こうもスーツを着たくないっていう人ですし、私もお金を稼ぐためにサラリーマンでいるのは、自分はちょっと違うかなという気がしていて。

 やっぱり、稼ぐんだったら自分で試行錯誤しながらやってみたい。いつかはお店を出したいと思ってます。これまでの仕事も、販売や接客っていう部分は何となく外していないんですよね。お客様と話していると自分も楽しいですし、役に立ちたいなって思います。今の会社の社長が「経営も教えてあげる」って言ってくださっているので、楽しみですね。今はまだ入りたてなので、まずは販売員として成長しないと。

表参道にて

建材メーカーで6年間、企画・広報・宣伝を担当したのち、企業取材や家づくり・家具などの住にまつわる分野を中心に、各種WEB媒体で活動中。プライベートでは夫と2人暮らし。
フォトグラファー。岡山県出身。東京工芸大学工学部写真工学科卒業後スタジオエビス入社、稲越功一氏に師事。2003年フリーランスに。 ライフワークとして毎日写真を撮り続ける。
街頭インタビュー